仕掛けられた罠
地下二階にある通信機器は、すべての回線がペンチかニッパで切断されていた。電話や光通信回線、衛星電話すら妨害電波で通じない。だが、それはこちらとしても都合がいい。
「これなら敵も直ぐに連絡を取ることはできない」
「作戦は必ず成功し、事後報告で構わないってわけだな。まさかガッポ一人に傭兵を全滅させられるとは考えてもいなかったのだろう」
……ずさんな作戦だ。しかし、この研究所の周りはだだっ広い砂漠と荒野。ここから逃げだせたとしても、国道66号線を東に真っ直ぐ走るか、実験用にNASAからレンタルしているジェット機で逃げるしか考えられない。
ジェット機のパイロットがいない今、俺達が車で逃げたって、「見つけて掴まえて下さい」と言っているようなものだ……。
『――ガッ。こちら地上。だいぶ時間が掛かっているみたいだが、なにかトラブルがあったのか? どーぞ』
急にガッポの胸ポケットに入っていたトランシーバーが鳴り響いた。ガッポは落ち着いた表情でトランシーバーをポケットから出すと、通話ボタンを押して応じる。
「なんでもないです。ただ、抗争で傭兵が数人やられました。どーぞ」
『お前は無事なのか』
「はい。ピンピンしてます。ピンピンです」
ジョナが吹出して笑っている。――聞こえたらどうするんだとヒヤヒヤしてしまう。
『なら構わない。どこをほっつき歩いているのか知らないが、早く上がってこないと、もう時限爆弾の爆発まで時間がないぞ』
「「――時限爆弾だって!」」
声を揃えて三人とも驚いてしまい、慌てて口を手の平で押さえる。
『ああん? ちゃんと作戦指示書に書いておいただろ? ひょっとすると――キサマ!』
やばい、バレてしまったか――!
『――俺が書いた作戦指示書をちゃんと読まなかったのか?』
「……はい。軽く目を通しただけでした。ごめんなさい」
――それで誤魔化せるのか~!
『ハッハッハ、別に謝る必要はないさ。任務ご苦労だった、アバヨ。ガッ』
トランシーバーの通信が完全に途絶えた。
「もしもし? 地上聞こえますか? もしもしもしも~し!」
うまく誤魔化せた……のか……? しかし、ガッポに妙な違和感を覚えてしまう……。ひょっとして、敵の仲間なのかもしれないと……。
今の会話の内容だと……。誰がどう聞いても仲間同士の会話にしか聞こえない~――。
……笑っている場合ではないのかもしれない――。
「ガッテム! ……FBIじゃないのがバレてしまったか?」
ガッポがトランシーバーを床に叩きつけて派手に壊した。単三電池やバネなど中の部品が飛び散る。
……やっぱりただの思い過ごしだな。ガッポはいつものバカガッポのままだ。
「FBIのお偉いさんは、安全な地上から命令だけを出して、高みの見物ってわけさ。ああいうやつが一番チキン野郎だ」
――俺よりもな。
「ああ、まったくだ――。ラリー以上にチキン野郎だ!」
言い直さなくてもいいと思う。
「部下を平気で敵地へと送り込み、自分は安全な地上で高みの見物とは」
「それも俺が言ったっつーの!」
「ちょっと、二人とも喧嘩はやめなさい。どうせ最初から全員をまとめて消すつもりだったのよ」
ジョナがため息混じりに言う。
「それと、時限爆弾の爆発まであと少ししか時間がないのよ……たぶん」
恐る恐る研究室のカーテンをめくってみると、茶色い筒が何本も巻き付けた誰が見てもソレと分かるような、コテコテの時限爆弾が置かれている~――!
赤いデジタル数字で、14分59秒からカウントダウンしている~――!
「「ダダダダ、ダーイナマイトッ!」」




