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月落とし  作者: 矮鶏ぽろ
現代編
34/51

今夜も月は綺麗だった


 あの日以来、満月の日が少し怖い。トラウマっていうのだろうか。だが、隣に瑠奈が座っている限り、安心して月を見上げていられる。

 瑠奈のアパートの窓から二人で月を見上げて缶ビールを飲んでいた。月見酒だ。ここのアパート代を僕が支払い、寮を出て同棲生活を始めようと考えている。


「ちょっとだけ、お月様大きくなったね」

「……え? そうなのか?」

 見た目にはよく分からない。ニュースでも話題になっていないから、ただの見間違いだと信じたい。

「この先、いつか月は地球に落ちてくるのだろうか……」

「そうね。西暦六千年ぐらいには落ちてくるんじゃないの? それか、もっと早くに」

 西暦六千年ってのが……想像すらつかない。

「どんなに人類が進化した文明をこれから築き上げたとしても、月が地球に落ち、すべての地表がドロドロの溶岩状になってしまえば、虚しいだけなのかもしれない。


 ……でも……それでもいいのかもしれない――。


 新しい地球には、また何億年もかけて新しい生命が生まれ、新しい文明が発展するんだったら、そこに人間がいる必要はないのかもしれないなあ……」

「……そうね」

 クスっと瑠奈は笑って、またキスをしてくれた。ほんのりと瑠奈の飲んでいる柑橘系の甘い香りが漂う。二人とも少し酔っていて、とても気分がいい。

「私のこと、ずっと見守っていてね」

「ああ」

「嘘だったら、……月落とすわよ?」

「ああ。どこからでも落としてくれ」

「浮気してもだめよ」

「しないって」

 僕が浮気しないだけで地球の危機が救われるのならお安い御用だ。そもそも瑠奈から離れるつもりはないさ――一生。


「……ホワニタマニタ~!」

「――ってえ! 酔っ払ってもその歌を口ずさんじゃ駄目だっ!」

 思わず抱き着いてしまう――わりと真剣に。

「へへ、私にとって、この歌はお母さんの子守歌みたいなものなのよ。思い出の子守歌……」


 ……子守歌って……。

 月が落ちてきたらどうするんだよ……。


 これ以上、歌わせないようにするために、今度は僕の方から唇を重ねた。

 今夜の月が少し大きく見えたのは……たぶん気のせいだろう……。


「現代編」はこれで完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


この物語は「未来編」へと続く予定です。今のうちにブックマークをよろしくお願いしま~す!

感想、ポイント評価、レビューなどもお待ちしております!

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