今夜も月は綺麗だった
あの日以来、満月の日が少し怖い。トラウマっていうのだろうか。だが、隣に瑠奈が座っている限り、安心して月を見上げていられる。
瑠奈のアパートの窓から二人で月を見上げて缶ビールを飲んでいた。月見酒だ。ここのアパート代を僕が支払い、寮を出て同棲生活を始めようと考えている。
「ちょっとだけ、お月様大きくなったね」
「……え? そうなのか?」
見た目にはよく分からない。ニュースでも話題になっていないから、ただの見間違いだと信じたい。
「この先、いつか月は地球に落ちてくるのだろうか……」
「そうね。西暦六千年ぐらいには落ちてくるんじゃないの? それか、もっと早くに」
西暦六千年ってのが……想像すらつかない。
「どんなに人類が進化した文明をこれから築き上げたとしても、月が地球に落ち、すべての地表がドロドロの溶岩状になってしまえば、虚しいだけなのかもしれない。
……でも……それでもいいのかもしれない――。
新しい地球には、また何億年もかけて新しい生命が生まれ、新しい文明が発展するんだったら、そこに人間がいる必要はないのかもしれないなあ……」
「……そうね」
クスっと瑠奈は笑って、またキスをしてくれた。ほんのりと瑠奈の飲んでいる柑橘系の甘い香りが漂う。二人とも少し酔っていて、とても気分がいい。
「私のこと、ずっと見守っていてね」
「ああ」
「嘘だったら、……月落とすわよ?」
「ああ。どこからでも落としてくれ」
「浮気してもだめよ」
「しないって」
僕が浮気しないだけで地球の危機が救われるのならお安い御用だ。そもそも瑠奈から離れるつもりはないさ――一生。
「……ホワニタマニタ~!」
「――ってえ! 酔っ払ってもその歌を口ずさんじゃ駄目だっ!」
思わず抱き着いてしまう――わりと真剣に。
「へへ、私にとって、この歌はお母さんの子守歌みたいなものなのよ。思い出の子守歌……」
……子守歌って……。
月が落ちてきたらどうするんだよ……。
これ以上、歌わせないようにするために、今度は僕の方から唇を重ねた。
今夜の月が少し大きく見えたのは……たぶん気のせいだろう……。
「現代編」はこれで完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
この物語は「未来編」へと続く予定です。今のうちにブックマークをよろしくお願いしま~す!
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