下心
消防隊に助けられた僕達は、想像を絶するくらいキツク怒られた。
宙ぶらりになって抱き合う二人。まさか「月落としを阻止してこうなりました」とは説明できないから……。「若者二人の悪ふざけ」と世間を騒がすニュースになった。
救助の一部始終を真横からヘリコブダーに撮影され、その報道を見ると、ことの重大さがジリジリ伝わってきて、足が震え出したのを鮮明に覚えている。
親父達にバレずに済んだのが幸いだった。日本で起こっていることや、自分の子供のことに無関心なのは、こういう時にだけ都合がいい。
瑠奈の秘密は……これからも話すつもりはない。親父が探し続けている太古からの血を引く者が……まさか息子の彼女だなんて思いもしないだろう――笑ってしまう。
……絶対に僕だけの秘密にしなくてはならない。知っている人間は一人でも少ない方がいいハズなのだから。
――絶対に――。
会社に出勤すると上司に怒られ、上司も役職に怒られ、役職は世間に謝罪した。
瑠奈はミクスカスを解雇処分になった。僕は……始末書を何枚も書かされ、減給処分になったが、クビにはならなかった。
首の皮一枚で助かったとは、こういうことなのかもしれない……。昇給は……ひょっとすると一生、期待できないかもしれない……。
「バーカ。だからお前には合わないからやめとけって言ったんだ。先輩の忠告は聞くもんだぜ」
「……以後気を付けます」
「お前なんて、もう知らねーよ。好きにしろ」
不機嫌極まりなく会社の休憩室を出ようとする野神先輩。あの日からずっと不機嫌だった。
「野神さん。この前のコンパにすみれさんを誘ったのって、僕を瑠奈から目移りさせるために、わざとセッティングしてくれたんですよね?」
野神先輩の思いやりだったはずだ。だったら悪いことをした。先輩にも、すみれさんにも……。
ところが、
「……違うぞ」
「え?」
違うはずはないだろう。僕のことを思って先輩なりに考えてくれたんだと信じていた。だから今だって怒っているのだろう。
「すみれさんのタイプだったらしいぞ……お前」
「――え?」
すみれさんのタイプ? ――え? 僕なんかが?
「――ええ~!」
野神先輩がやっと笑顔を見せてくれた。ちょっと意地の悪い笑みだ。
「ここだけの話だが、すみれさんって、ミクスカスグループ社長の一人娘らしいぜ。そのお誘いを断るだなんて……お前、大物になるぜ。それか……一生後悔するかのどっちかだ」
「ちょちょっと待って下さいよ! もっと詳しく聞かせてください」
「やなこった。自分で聞きやがれ」
本当のなのだろうか……。
まあ……もしそれが本当だったとしても、僕の瑠奈に対する気持ちは変わらない。
でも……、なんか……?
もの凄く後ろ髪を引かれることを聞いた気がする。真実なのか嘘なのか、今となっては知る由もない……。




