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二話。

「おい、柚子。お前が脱走して困るのは俺なんだぜ?」


耳元で、はぁっと言う深い溜息が聞こえた。


「…だって。初めて来た場所って、探検したくなるんだもん。」


私は、自分の耳に当てているピンク色のケータイ電話(厳密には、その向こうのマネージャーさん)に、しょんぼりと言い訳をした。


「つか、柚子今どこに居るんだ?」


関係無い話だけど、熊井さんはマネージャーのクセに、タメ口で話す。…ま、気にしてないけどね。


「海。」


ははは。潮風が気持ちいいなぁ…。


「はぁ!?」


私ね簡潔な返答に、熊井さんは焦ったような声を出した。


「えへっ。」


「…えへじゃねーよ。…ったく。俺が倒れたガキ介抱してる間に逃げやがって…」


「ごめんなさい。」


電話越しに殺気を感じた私は、とりあえず謝っておいた。


「…まあ、さっさと戻って来いよ。」


…と、熊井さんのその一言で、電話が切れた。


「…しょうがないなぁ。」


このままだと熊井さんに殺されかねないし、戻るか。


ー私が振り返った時だった。


「…あ。」


「…なぁ、これって、ユズじゃね?」


「嘘!?あのモデルの!?」


…その先には、金髪・腰パン・アクセサリーじゃらじやらなお兄さんが、数人。


私と向き合う形になった。


「あの…」


できればそこをどいて頂けないでしょうか。


「ほー。本物じゃん。」


私の心の声を無視して、金髪のお兄さん達は、近付いてくる。


…あー、熊井さんに殺されるよっ!!


「あのっ!!」


熊井さんの恐怖に憑かれた私は、気付けば叫んでいた。


「あとでお兄さん達とは遊んであげるので、今は通してくれませんかっ!?」


「…遊…?」


恐る恐るお兄さんの顔を窺うと…


「…ありゃ?」


皆さん仲良くポカン顔だ。


…私、変なこと言ったかな?


「あの…

「可愛いからって、余裕こいてんじゃねぇよ。」


心配になって話し掛けようとすると、スイッチが入ったのか、ひとりのお兄さんが私に迫ってきた。


…いや〜、可愛いだなんて…照れるなぁ。


…なんて、照れてる場合じゃなかった。


唇奪われそうになってる!?なんで!?


「いやだーーーー!」


こんなファーストキス、まっぴらごめん。力の限り叫んでみた。


ーバッシャァアンッ


「…ぅえ?」


背後に聞こえた波の音。


それが気になって目を開けた。


…確か後ろって海だったよね。…なんか残酷な音が聞こえたような…。


「大丈夫?」


目の前には、金髪ではなく、黒髪の…爽やかな少年が、心配そうな顔で立っていた。


「え、あ、うん。」


あれ、ていうか…


「金髪の皆さんは…」


いずこへ。


「あぁ。海に還ったよ。」


少し冷めた目をして、少年は答えた。


…ふーん。


「帰ったんだ。」


海に。


……海に!?


「竜宮城の人だったのか…。」


私が呟くと、少年は驚いた顔でこっちを見た。…な、なによー。


「…というか、君。何か用事だったんじゃないの?」「…遊…?」


恐る恐るお兄さんの顔を窺うと…


「…ありゃ?」


皆さん仲良くポカン顔だ。


…私、変なこと言ったかな?


「あの…

「可愛いからって、余裕こいてんじゃねぇよ。」


心配になって話し掛けようとすると、スイッチが入ったのか、ひとりのお兄さんが私に迫ってきた。


…いや〜、可愛いだなんて…照れるなぁ。


…なんて、照れてる場合じゃなかった。


唇奪われそうになってる!?なんで!?


「いやだーーーー!」


こんなファーストキス、まっぴらごめん。力の限り叫んでみた。


ーバッシャァアンッ


「…ぅえ?」


背後に聞こえた波の音。


それが気になって目を開けた。


…確か後ろって海だったよね。…なんか残酷な音が聞こえたような…。


「大丈夫?」


目の前には、金髪ではなく、黒髪の…爽やかな少年が、心配そうな顔で立っていた。


「え、あ、うん。」


あれ、ていうか…


「金髪の皆さんは…」


いずこへ。


「あぁ。海に還ったよ。」


少し冷めた目をして、少年は答えた。


…ふーん。


「帰ったんだ。」


海に。


……海に!?


「竜宮城の人だったのか…。」


私が呟くと、少年は驚いた顔でこっちを見た。…な、なによー。


「…というか、君。何か用事だったんじゃないの?」


少年が、腕を指差しながら、聞いてきた。


…わ、す、れ、て、た。


サーッと血が引いた私の脳内では、熊井さんは本物の熊に変形していた。


「ぎゃぁあっ食べないでっっ!!」


叫ぶ私を見て、少年はクスリと笑った。


…あれ?なんだろう…。今、私の胸の奥に、キュンッと小さな痛みが走ったような気がした。

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