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smile  作者: 平 松男
5/6

5話

晴海の視点です。


 私の誕生日は九月十五日。だから出席番号はちょうど真ん中の辺りです。

 四月に中学生になって、早いもので、今は五月も過ぎました。小学校の頃からずっと仲良しの佳奈ちゃんと愛ちゃんと一緒に、今日も元気に学校に通っています。


 ……嘘です、私は今嘘をつきました。

 佳奈ちゃんとは一緒に通っていますけど、愛ちゃんとは一緒に通っていません。

 今までずっと一緒にいたのにどうしてこうなってしまったのか、私には考えてもいまいちわかりません。でも、きっとわかってみせます。私なら考えたらわかると思うからです。


 一番わからないのは、なんで佳奈ちゃんがみんなに無視されるかです。佳奈ちゃんは何も悪いことなんかしてないからです。

 次にわからないのは、絶対にそんなことはないんですけど、もしも佳奈ちゃんが悪いことをしたのなら、無視なんかしないで謝ってって言えばいいのにっていうことです。でもみんな言わないから、やっぱり佳奈ちゃんは悪くないんです。

 最後にわからないのは、佳奈ちゃんのことを何とかしたいって思ったら、私まで無視されるようになったことです。もう訳がわかりません。


 でもはっきりわかるのは、そういうことをされると非常にムカつくってことです。


 佳奈ちゃんはとても優しい子なんです。蟻も殺せないような優しい子で、私は同じぐらい優しくても蟻は殺せます、殺さないだけです。


 佳奈ちゃんは少し臆病な子なんです。知らない子と一緒に遊ぶときに誘っても必ず、私はいいよって言う子です。私がその子のことを、こんな子なんだよ、とっても面白い子なんだよって教えてあげないと遊ばないような子です。私は誰とでも仲良くなりたいから、ここは私と違うところです。


 だから、愛ちゃんと佳奈ちゃんはそうやって仲良くなりました。私を通じて仲良くなったんです。


 でもそれから、愛ちゃんが私を通じて佳奈ちゃんを仲間外れにさせようとしました。


 私は、何でそんなことするのって聞きました。


「え、だってなんか面白くない?」


 返事は決まってこうでした。


 私はわからなかったので質問を変えました。じゃあどうして佳奈ちゃんなのって。


「は? だってもう決まったことだし」


 いつ誰がどこでどうやって決めたのか、聞いても教えてくれません。教えたくない理由があるからだと思います。それも教えてくれませんでした。


 私は、私を信じています。いつか私にはわかると信じています。


 でも、なかなか思うようにはわかりませんでした。

 佳奈ちゃんはだんだん塞ぎこんでしまって、笑うことが減って、家に帰ると泣いてるようでした。人前では泣かないのがすごいと思います、私が佳奈ちゃんの大好きなところです。


 そんな大好きな佳奈ちゃんを泣かせやがるのが、クラスのみんなです。というか女子のみんなです。


 私のクラスにはみんなに怖がられてる女子がいて、私は中学校までその子を知らなかったので、違う小学校から来た子です。


 自分の意見に従わない人がいると、大きな声をだして怖がらせるような子です。私はその子を見てるだけで内心ムカムカしてきますし、いつかとっちめてやろうと思っていました。


 ただ、その子の周りにはいつも仲間がいるので、大っぴらに喧嘩はできませんでした。その子はいつも通りに振る舞っているだけ、そのいつも通りが問題なんですけど、それが普通になっている以上、人目のあるところで喧嘩を仕掛けた時点で私の負けです。


 でも、私には戦う理由ができました。


 佳奈ちゃんを無視するようにみんなに指示を出していたのはその子だったんです。


 放課後、二人で帰る準備をしていると、誰にも内緒だからねと佳奈ちゃんが教えてくれました。


 私は、すぐにでも飛び掛からん勢いで教室を出ようとしました。取り巻きなんて関係ない、大好きな佳奈ちゃんを苦しめるお前を、放っておく理由なんてどこにもないと。


 でもそれは、佳奈ちゃんに止められました。


「いいの晴海ちゃん、いいの」

「どうして? だって、佳奈ちゃんは泣いてたよ。佳奈ちゃんは、苦しそうだよ」

「今度は晴海ちゃんがいじめられちゃうよ!」


 佳奈ちゃんはとても優しい子です。

 私は誰よりもそれを知ってるんです。


 でもそれが、私が動かない理由にはならなりません。


「私のことはいいよ。佳奈ちゃんは佳奈ちゃんの心配をするべきなのに」

「……じゃあ、本当のことを言うよ」

「本当のこと?」

「私は、怖いの。晴海ちゃんがあの子のこととっちめたら、私は、今まで以上にいじめられるかもしれない! それが怖いの!」

「佳奈、ちゃん……」


 迂闊でした。私は私のことしか考えてなかったのです。考えたらわかるって根拠のない自信だけこれ見よがしに掲げて、考えようともしてなかったのです。


 佳奈ちゃんは、ごめんね、ごめんねと謝るばかりでした。謝るのは私の方だったのに、私は泣いて謝る佳奈ちゃんを見てることしかできなくて、窓の外を見るとすっかり日が暮れていました。


 だから私は、先生に相談することにしました。


 先生と言っても学校の先生じゃありません。担任の先生は男の人だし、女の怖さは女にしかわからないと思ったからです。


 私が相談した女の先生は、私が通う塾の先生です。お母さんのお友達で、美人で、お話は面白くて、私から見てもいい女だなって思える先生なんです。


 私は佳奈ちゃんを助けてあげたい。

 でも、私のやり方じゃ佳奈ちゃんは助からない。

 でももしかしたら先生だったら、上手い方法を教えてくれるかもしれません。


 本当に藁にもすがる思いで、私は助けを請いました。


 結果、佳奈ちゃんはひとまず安心できたみたいです。


 私もそんな佳奈ちゃんを見て、すごく嬉しくなりました。誰か一人でも味方がいるんだって思わせてあげる、それだけのことが、何よりのことなんだと知りました。先生はやっぱり先生でした。


 ただ、それはそれとして、やっぱり私は腹が立つんです。このままあの子に負けてられないって思うんです。


 だから私は、もう一度相談することにしました。


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