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プロローグ
英語の授業中。
視界を白いものが横切った。
静電気にはじかれたビニールみたいにふわふわ飛んでいる、タンポポの綿毛。仲間からはぐれて、1人で。
そうか、もうそんな季節になったのか。
「高野、5段落訳して」
指名されて、高野真紀は感傷に浸るのをやめた。白い綿毛が風に吹かれて見えなくなる。
ええと、5段落ってどこだっけ。目で探すとノートの前の方に見つけた。まだ字が丁寧な頃の。
「あなたが信頼されるかどうかは、あなたの伝えることが真実かどうかだけに左右されるのではない。他人があなたにどのような印象を受けるのかも、それと同じぐらい重要だ。以前にも書いたと思うが、このことはフランスの研究チームの調査や、ドイツの心理学者たちによって、すでに実証されている。そして、他人に良い印象を与えるためには、準備が必要不可欠なのだ。」
「はい。では1文目の depends on の前後の関節疑問文に……」