ワンコ来ました ③
めいとさん、穴があくほどワンコを見つめています。
そんなに怖い顔していると、さらにワンコがおびえちゃいますよ。
「抱っこしてもいいですか?」
「どうぞ」
めいとさん、ワンコの体にそうっと触り、ゆっくりと抱き上げました。
ワンコは全身に力を入れ、体を預けません。
めいとさん、背中やお尻を、優しく撫でてあげました。
「チワワは一般的に警戒心が強いと言わていますが、一旦飼主さんに懐けば忠誠心は強いのですよ」
「そのようですね」
「この子はこれまで何軒か店舗を移っているので、今は余計に警戒しているのかもしれません」
「人が怖いのですかね?」
「犬種の特徴として臆病な面もありますが、今だけでしょう。好奇心旺盛ですから、活発でよく遊びますし、しつけの仕方で性格も変わります」
「なるほど」
「女の子ですし、愛情を注いであげればいい子になると思いますよ」
「とにかく小さくて、長時間の散歩は必要ないし、短毛なら手入れも楽というのでチワワに決めたんです」
「ええ。室内犬としてとても人気がありますね」
めいとさんの腕の中でも、ワンコはずっとプルプル震えています。
顔を近づけても、目線を合わせようとしません。
「あなた、うちに来ますか? 来たいですか?」
話しかけても、五月先生が頭を撫でても、小さくなってひたすらプルプルしているだけです。
それでも、嫌々して逃げようとしたり、噛んで攻撃してくる様子はありません。
「メイド、どうなんだ? ピンときたか?」
「連れて帰って、もしこの子の具合が悪くなったらどうしましょう?」
ん、それが一番心配ですね。
「お宅の近くにアズミ動物病院がありますね。親切な女性の獣医さんで、ご家族でペットホテルも経営されています。急な対応もしてくださいますよ」
なるほど、それは心強いですね。
さて、この子は五月家にもらわれるでしょうか。