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甘えん坊ワンコ ①

 カチャカチャカチャ、カチャカチャ……。


 五月先生珍しく……あ、いや失礼。

 五月先生、今日は珍しく……ん、んん。

 五月先生め……あー、もういいか。

 五月先生、珍しく執筆に勤しんでいます。


 カチャカチャカチャ……。

 カチャカチャ、カチャッ。


「よし、でけた。プリントアウトっと」


 カチャッ。


「ふひー、今何時だ? ん、間に合った」


 五月先生、ある雑誌からコラムを依頼され、今日がその締め切り日なのです。


「お、チロ、そこに居たのか」


 チロさん、五月先生を見張っていたのでしょうか。

 背後でじっと、ねんこしていました。

 五月先生が振り向いたとたんに尻尾を振って、甘えています。

 ねんこというのは、お座りでなく、伏せでもなく、眠ってはいないけど寝そべっている状態を言います。

 ちなみに、本気で眠っているときはねんねんこです。

 五月家ではいつからともなく、こういった独自のワンコ言葉が使われています。


「今日はお客さんが来るんだぞ。おとなしくしててくれな」


 五月先生に抱かれたチロさん、五月先生の胸におでこを擦り付けます。


「そうか、おとなしくしててくれるか。いい子だな」


 下ろされたチロさん、今度はめいとさんの元へ向かいます。


「おいメイド、そろそろ時間だぞ」

「あい。用意はできておりますです」


 雑誌の編集さんが、さっき出来上がったばかりの原稿を受け取りに来てくださるのです。


「五月様こそ、原稿できたのでございますか?」

「抜かりなく」

「誤字脱字は大丈夫でございますか?」

「うん、大丈夫……大丈夫だけど……チェックして」

「頼りないでございますねぇ」

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