鳴かないワンコ ⑥
そんなこんなでめいとさん、練習もそこそこに、チロさんをお散歩デビューさせることにしました。
五月先生は、ちょっと心配のご様子です。
「ホントに外に出して大丈夫なのか?」
「あい。ヨシミ先生から許可は出てますし、お散歩日和のお天気です」
「ふむ。暑くもなく、寒くもなく」
そうなのです。
ワンコのお散歩には気を遣ってあげてください。
真夏の炎天下ではアスファルトが熱くなっていますから、肉球を火傷してしまいます。
冬は冬で、寒がりのワンコは嫌がります。
チロさんは暑いのも寒いのも苦手なチワワですし、毛並みはスムースですから、超寒がりだと思われます。
「さ、チロさん、おんもですよ」
「メイド、リードを引っ張ってはダメだぞ」
めいとさん、チロさんを抱いて玄関と門を出て、道に下ろしました。
五月先生も一緒に出てきました。
「歩きません……」
チロさん、お尻をペタンと地面に付け、目尻を下げて首を垂れ、いつもの不憫なお姿です。
「チーちゃん、ほら、お散歩行きましょ」
声をかけても、目を合わせようとしません。
五月先生が話しかけても同じです。
地面のにおいを嗅ごうとすらしません。
「チーちゃん、お尻上げて、さ、歩きましょ」
めいとさん、チロさんのお尻を軽く突ついてみました。
しかし、チロさんは固まったままです。
「やめてやれ。可哀想だ」
「でも、記念すべきお散歩デビュー日でございますよ」
「だったら……」
五月先生の提案で、抱いたまま家の外を一回りすることにしました。
チロさん、めいとさんの肩にガッツリしがみついています。
「商店街まで行きませんか?」
「ダメ」
はい、チロさんのお散歩デビューしゅーりょーでーす。




