鳴かないワンコ ③
ドタドタドタ、バタバタバタ……。
テッテッテ……。
「五月様、足元チロさん、気を付けてくださいましね」
「ん」
おやおや、何事でしょう?
バタバタバタ、ドタドタドタ……。
テッテッテ……。
「チロさん危ない、踏まれちゃいますよ」
どうやら五月家、季節外れの大掃除のようです。
「あ……」
「どうされました?」
「今、チロ蹴飛ばした気がする」
「え?」
「か、軽くな、軽く。なんかぁ、柔らかいものが爪先に触ったと……思う」
「チロさん大丈夫ですか? どこか痛くないですか?」
テッテッテッテ……。
「……大丈夫なようです」
軽くではありますが、確かに五月先生、チロさんを蹴飛ばしました。
チロさん、ちょっとビックリしたようですが、それだけです。
「しかし、うんともすんとも言わなかったな」
「でございますね」
「普通、キャンとかギャンとか鳴かないか?」
「でございますね」
「お前、チロが鳴いたの聞いたことあるか?」
「ないでございます」
「まさか鳴けないわけではないよな?」
「ときどきいびきはしています」
「それとこれとは違うだろ」
「おもちゃで遊んでいるときは、フガフガ言っています」
「うーん……」
「ご近所迷惑にならなくて良いですが、ちょっと心配ではございます」
「ま、おとなしい子だってことで」
「あい。ってことで」
おふたりとも楽観的です。
というか、今は掃除と片付けのほうが大事なのですよね。
「五月様のお部屋、汚過ぎですぅ〜!」




