ワンコの新生活 ④
一夜が明けました。
五月先生とめいとさん、結局、ふたりそろって居間でうとうとするだけでした。
ワンコは夜中に一度だけ、水を飲みに起きました。
今は……ハウスの中でぼーっとしています。
目は開けていますが、なんだかとっても疲れているようです。
めいとさん、缶詰を開けてお皿に移し、ハウスの側に置きました。
「お腹空いてませんか?」
声をかけても、ワンコは出てきません。
「ワンコはどうだ?」
「ご飯食べないし、おトイレもしないし、プルプルしているだけです」
「抱いてあげたらいいのかな?」
「どうなんでしょう?」
「せっかくのおもちゃも用なしだったな」
顔の前に猫じゃらしを近づけても、鈴が鳴るトマトのおもちゃにも、ワンコは全く反応しません。
「うちが気に入らないのでしょうか……」
「そんなことはないだろう。そんなに心配するな」
五月先生、ペットショップに聞いてみることにしました。
トゥルルル……。
「あ、昨日チワワを連れ帰った五月です」
「◯#×%+△$……」
「どうも。実は、かくかくしかじか……」
「◯#×%+△$……」
「はい、ありがとうございました」
カチャ……。
「なんて言ってました?」
「そんなにすぐには飼主にも家にもなれないから、もう少し様子をみてくださいってさ」
「そうでございますか……」
「もし抱くときは、座ったままひざの上で優しく撫でてあげろって」
「わかりました……そうします……」
カチコチ、カチコチ……。
今日も部屋には、時計の音だけが響いています。
カチコチ、カチコチ……。