ワンコの新生活 ①
めいとさん、ワンコを抱っこしたまま家に入りました。
「ただいまです。さあ、今日からここがあなたのおうちですよ」
「用意出来るまで抱いてろよ」
「あい」
五月先生は荷物を解き、たたんだ箱をもう一度組み立てました。
狭いほうの側面にはアーチ型にミシン目が入っています。
それをくり抜くと、ワンコのハウスになります。
中に入れていたトイレシートをきれいに敷き直して、居間の隅に置きました。
「もうすぐ出来ますからね」
めいとさんは五月先生の様子を見守りながら、ワンコをあやしておりました。
「さ、できたぞ。ワンコ入れろ」
「あい。ここがあなたのおうちですよ。ゆっくりしてくださいね」
「ずっとプルプルさせておいて、今さらゆっくりもないもんだ」
「ぶー」
「トイレするかな?」
「では次はおトイレの用意を……」
「お前がやれ」
「……はい」
トイレは玄関に置くことにしました。
五月家の部屋はほとんどが畳です。
唯一フローリングの居間にも、一面カーペットを敷いてしまっています。
おしっこで汚れても掃除のしやすい場所は、玄関しかないのです。
お客様には申し訳ないですが、背に腹はかえられません。
出しっ放しの靴を片付けて、トイレシートを広げ、ケージで囲いました。
真ん中に、ペットショップでもらってきたにおい付きのシートを置いて、完成です。
「覚えてくれますかねぇ?」
「ま、気長に教えるんだな」
「あーっ!」
「どうした?」
「おしっこ、もうしちゃってます……」
「ま、気長に教えるんだな」
「あい……」
こうして、ワンコと一緒の生活がはじまりました。