ワンコ来ました ⑥
めいとさん、しまいに箱のふたを開け、ワンコを抱っこしてしまいました。
ワンコはというと……いっそうプルプルしています。
五月先生の顔は……いっそう恐い顔になっています。
「おいこらメイド、何をしている!」
「だってぇ〜」
「目を離している隙に……どうなっても私は知らんぞっ!」
「だってぇ〜」
「だってじゃない! その子の調子が悪くなったら、おまえのせいだぞっ!」
「ふぇ〜ん、戻します」
「やめろっ! 出されたり入れられたりじゃ、余計気分悪いだろ!」
「ふえっ!」
「そのまま抱いておけ」
ワンコを抱いて、空の箱を持つのは大変です。
ワンコも安心して抱っこされていられませんよね。
なんだかとっても心配です。
「落とすなよ」
「あい……」
「ゆっくり歩け」
「あい……」
「箱、捨ててくか?」
「いえ、しばらくの間この箱をハウスに使いますので……」
途中に小さな公演がありました。
「一休みして荷物を整理しよう」
「あい」
「まったく、どうなっても私は知らんぞ」
「ふぇ〜ん」
「知らんぞ」
五月先生、小言を言いながらも、箱をたたんでケージと一緒にくくりました。
荷物の重さを調節して、めいとさんにも軽いビニール袋を一つ持たせました。
「これで少しは抱きやすくなるだろう」
「あい。ありがとうございます」
「落とすなよ」
五月先生の顔はもう恐くなくなっています。
プルプルワンコは止まりませんが、そんなこんなで、やっとこ家に帰り着きました。
さてワンコ、我が家を気に入ってくれるでしょうか。