ワンコ来ました ⑤
ワンコを連れて帰ることに決めたおふたり、店員さんに必要なものを揃えてもらいました。
お散歩はまだ先でも、赤い首輪とリードを選び、ご飯とお水用のお皿、カリカリご飯、骨型のガジガジを買いました。
猫じゃらしも買いました……犬ですけど?
ワンコはトイレシートを敷いた、手持ち付きの箱に入れられました。
箱には数カ所穴が空いています。
支払いを済ませ、いざ帰宅です。
めいとさん、左手にごはんとおもちゃが入ったビニール袋を提げています。
右手には、ワンコを入れた箱も持っています。
五月先生は、トイレシーツと折りたたみ式のケージを担当しました。
「結構な荷物になったな」
「あい」
「重くないか?」
「少し……」
「ビニール袋よこせ」
「ありがとうございます」
ワンコの入った箱だけになっためいとさん、左手に持ち替えました。
さらに、空いた右手の人差し指を穴に突っ込みました。
「ここはお尻ですかね」
「こらやめろ! 家に着くまではそっとしておくって本にも書いてあったろ」
「あい……」
しばらくするとめいとさん、箱を自分の顔まで掲げて、穴から中をのぞき込みました。
「こら、やめろ」
「中でどうしているのでしょう……揺られて、気持ち悪くなってないでしょうか」
「そんなことされたら、余計気持ち悪くなるだろう」
「あい……」
めいとさん、気になって気になってしかたがないようです。
ペットショップから五月家までは歩いて二十分ほど。
今日はワンコが一緒ですから、五月先生、いつもよりゆっくり歩いています。
めいとさんはというと……おや、なんだか足取りがおかしいですよ。
歩いては止まり、歩いては止まり……。
五月先生との距離がずいぶん離れてしまっています。
穴に指を突っ込んだり、のぞいてみたり……。
そして、とうとうやってしまいました。