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探索者協会物語  作者: 最近


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とある探索者協会員の記録.75

新史歴XXXX年/流闘月/十五日

ボロミア文明圏 聖火都市モラン 第六主街区 『木漏れ日通り』

NOTEAPP.NEXXXX.0715

『モラン探索者協会本部』一階受付業務日報(第75回)

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■ 担当窓口:受付係エルマ、警備兼窓口キュエン、マルク(『ベルニクス意気揚々隊』)、シャンヤル(『モラン大学遺跡探索部』)

■ 業務概要:通常窓口業務、施設防火設備点検対応、ネットバズ・メディア取材対応、マウザ大公家関係者の来訪対応

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【1.通常業務および施設点検】

・AM 09:00【設備点検】

 ポーレッテが風邪により病欠。

 エルマ・キュエンの二名体制で

 通常業務および館内防火設備の定期点検を実施。


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【2.『笑う仮面ピエロ』撃退とネットメディアでの大バズり】

・AM 11:00【第二階層での激闘と共闘】

 『伝説踏破団』(lv45)が第二階層にて指名手配犯『笑う仮面ピエロ』と遭遇。

 偶然居合わせた九英雄、ボロミア流槍術師範チルダント・アンバッハ率いる

 『ボロミア正統槍術会』(lv57)が戦闘に介入、

 共闘によりピエロの撃退に成功する。


・PM 01:00【ドローン生中継と切り抜き拡散】

 現場に居合わせたヨグウム警備保障の『一一部隊』(lv44)も支援に入る。

 その際、ヨグウム製の水晶ドローンが戦闘の模様を観照中継。遠隔幻像《テレヴィジョン》がアストラルネット上で拡散。


【バズの発生】

 主力として戦った英雄パーティが話題になる。

 また、非戦闘員の治療士を狙ったピエロの攻撃を

 身を挺して防いだ『伝説踏破団』の術士ディン、

 および果敢に敵の命数を削った戦士クラヴィス、戦士テオドールの活躍シーンが

 ネット上で切り取られ爆発的に拡散。


 スピード感のあるネットメディアや一般人から協会へ問い合わせが殺到。

 「あのイケメンパーティは誰!?」と一躍大人気となる。

 (より正確には『そのように宣伝せよ』との協会長指示)


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【3.ガルズ少年の帰還と祝宴の招待】

・PM 04:00【依頼達成と大老の来訪】

 州都フィレジエンから通いで講習と依頼をこなす九英雄、

 ガルズ・マウザ・クロウサー氏(『骨組みの花』)が探索を完了。

 帰還しようとしたところ、

 マウザ家の大老ボルグローゾ・マウザ・クロウサー氏が来訪。

 大老より「マウザ本家の邸宅で祝宴を行う」と遠い孫へ打診。

 ガルズ少年は迷いつつも承諾し、

 「友人の『木漏れ日採集隊』や『灰かぶりのともしび』も招待したい」

 と申し出、大老より快諾を得る。


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【担当者所感・業務裏メモ(※個人暗号化ログ)】


 「あのヒゲ、いや、ピュクトーさん、う~ん。

 まだぐるぐるしてる。心をどこに置けばいいんだろ。

 仕事に持ち込みたくないけど、でもな~。

 竜神信教に紛れ込んでいた、本物の鈴国スパイ。

 私たち地上人類に化けた、地獄の異獣。


 確かに、私は甘かったんだ。

 あの恐ろしい、三本角の赤亜竜人……。

 偶然気付いて、不都合な事実に近づいて、何も考えずに暴こうとして。

 危うく消されるところだった。

 何かが少しでも違っていたら、私はこの世にいなかった。


 助けてくれたのは感謝してる。でも、巻き添えで何も知らなかった修徒の人たちまで犠牲になって、けどそれは当たり前みたいに流されて。

 それなのに、残酷なピュクトーは私にケガが無かったってわかった途端、ものすごく安心したような顔になって……。

 『友の大切なご息女を守れて良かった』って、本当にうれしそうに言うの。

 あの恐ろしい人は、凄く優しい人なんだってそれでわかった。


 ピュクトーやチャスコーンがこの頃ずっと主張してる、『竜神信教徒を探索者にして強制的に働かせろ』とか『ダンジョンに追放しろ』とか。

 鈴国文化圏……地獄風の名前を義国風に改名させたり、子供たちを槍神教に改宗させて、槍神教の聖職者に育てさせろとか。


 そのためには、薬物を利用したり悪名高い『精神加工』を使うことも辞さないだとか。もう言ってることはほぼ『三報会』とか『十戒』とかの反社じゃん! って感じでサイアクなんだけど!


 けど……。

 彼が『敵』に向けてる残酷さと、私に向けてる優しさって、同じものなんだよね。

 それはきっとおじいちゃんも……もしかすると、お父さんもそうだったのかも。

 私って義国民として、モラン市民として、愛国心が……もっとそれ以前の、戦いに関わっているっていう当事者意識が足りないのかな?


 あの人はもうすぐ、大きな戦いに行くことになる。

 『松明の騎士団』主体ではなく、探索者協会と九英雄が主導する大規模討伐。

 中級以上の探索者たちの参加も募っていて、従軍経験のある元傭兵の人たちを中心に大規模戦闘の準備が着々と進められている。より大人数での戦いに適した吟遊詩人系の探索者を増員するパーティも増えてきた。

 ウィッチクラフツマンさんの講義で人形を導入する人もあちこちで出てきたから、今の探索者協会はかつてとは比較にならない人口密度になっている。


 凶悪な長寿者たちを討伐して、ダンジョンを少しでも安全な場所にするために。

 この街を、この地上を守るために。

 ピュクトーは、きちんと九英雄としての務めを果たそうとしている。

 成功すればいいけど、もしも……。

 私は、うう、けど、無事を祈、うあ~!


 あ~もう! ぐるぐる思考はおしまい!

 引きずらないで、まずはお仕事!

 今日はポーレッテちゃんが風邪でお休みで、朝から私とキュエンさんで大忙しです。施設点検もあったし大変だったんだけど……午後で一気に目が覚めたよ。


 ヨグウム警備の配信ドローン、狙ってたの?

 あの恐ろしい『笑う仮面ピエロ』を、チルダント師範たちと『伝説踏破団』が力を合わせて追い払う映像がネットに流れて、もう通信と取材の嵐。疲れた。


 チルダント師範の槍もかっこよかったけど(ちゃんとしてるサイドの九英雄だ)、動画で一番話題になってたのは『伝説踏破団』だった。

 ディンが狙われた治療士さんを身を挺して守ったり、クラテオが必死にピエロの命数を削ったり……その姿がネットで『神対応のイケメンたち!』って大バズり。やっぱ顔か。実際、かっこいいもんね。受付にも『あの人たちの名前を教えて!』って問い合わせが凄くて、キュエンおじいちゃんがニヤニヤしながら自慢気にしてた。「わしが育てた」って言いそうだなって思ったら、ほんとに言った。


 そして夕方には、相変わらず品のあるガルズ様が依頼を終えて帰ってきて、そのあと、マウザ家の長老で彼のひいひいひい・・・・・・わかんないくらい歴史上の人物! ボロミア紛争とか、エルネタルセミア独立からの北部聖地奪還で従軍した宮廷魔術師とか将軍とかだったはず! たぶん二百歳は超えてる。まじで? とにかくそんな超高位呪術師である大老ボルグローゾ様が迎えに来たの。圧で建物軋んでたよ。こわい。


 お屋敷に誘われたガルズ様がね、ちょっと恥ずかしそうに『ミルカさんたちや、タレンさんたちも一緒に行っていいですか?』って聞いたんだ。ガルズ様、みんなと本当に仲良くなってたんだなあ。

 ボルグローゾ様もにこにこしながら快く了承してくれて、緊張するミルカちゃんやカシルちゃんに優しく声をかけてあげてた。いい人で良かった~。


 ピエロの恐怖で暗くなってたモランの街に、パッと明るい光が差し込んだみたいな明るいニュースの多い一日だったよ! はやくこの気持ちを分かち合いたい。ポーレッテちゃん、風邪治ったらいっぱい話そうね!」


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 『編集部』宛ての追記事項

 ダンジョン内における配信事業について、詳細な介入手順については前回に記した通り。ヨグウム社のシステムではなく『一一部隊』の人員に対してフィッシングによるソーシャルエンジニアリングを試みることで目標を達成しました。

 大規模な戦闘事象が終息したことですし、協会本部の第五要素水晶機器についても、占術演算に割いていたリソースを広報部門に回していく方針です。

 以降の流れですが、サフィーリアやポーレッテへのターゲティングで刷り込んでおいた布石は十分に機能しているものと思われます。予定通りに進めて参ります。

 この記録に、囁きの天使の加護がありますように。

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