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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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違世界

作者: ラム
掲載日:2026/06/28

 気がつくと、うつ伏せに伏していた。

 顔を上げると、木々が多い茂った森。

 空の淡い青色がかろうじて視認できる程度の密度。


(ここはどこだ……力が入らない……)


 混乱に陥る力もなく、意識を手放した。


 ──


「うわっ!!」


 次に目を開けると、いきなり驚かれた。

 金髪におさげの少女に。


「ここは?」

「私の家よ。倒れてたから村の人と協力して連れてきたの」

「ありがとう。ここはどこ、いやどの国だ?」

「ここはウルカナ」


 ウルカナ、という言葉に聞き覚えはなかった。

 ここは自分の知らない世界なのか?

 

「私はレベッカ。あなたは?」

「俺は……あれ?」


 名前が思い出せない。

 そう言えば自分が住んでいた世界がどんなだったかも分からない。

 今日は休ませてもらい、翌日広場に向かった。

 ウルカナの人々は想像より気のいい人たちであった。


「おっ、権兵衛、もう平気か?」

「権兵衛?」

「ああ、名無しの権兵衛ってな!」


 同年代は気さくだった。


「お兄ちゃん外国人? なんか技出して!」

「こらこら、お兄さんを困らせないの」

 子どもは純真無垢で、大人は配慮をしてくれる。


 村長らしき人が食事にしようと言い出し、みなで集まりパンを頬張る。

 少量だが、味わいがある。

「この村ではみんなの収穫物を分けあって生きているのよ」

「温かい村だな」

「みんな平等だからね」

「でも、収穫物を隠してる悪い奴もいるんじゃないか?」

「それはないわ、神様がいるから」

「神様?」

「えぇ、神様はずっと見てるもの。今も、ね」


 レベッカが上を見てそう言い、自分は空を見る。

 原始的な思考だが、太陽はこちらを見ているのかもしれない、と納得した。


 温かい村での、平穏な日常。

 だった。


「ウルカナの人々に告げる。こちらの規定に沿って貰いたい。さすれば安寧を約束する」


 白いゴワゴワした服を着だ男達が10人ほどやってきた。


「邪神教……!」

「なんなんだ、それは?」

「自分たちの信仰する神を崇拝しろと攻めてくるの」


「邪神教徒ども、帰れ!」

「……まあいい、君たちにはこれを渡したい」


 邪神教徒は何やら四角い本を取り出すも、村民の投げた石が手に当たり、落とす。


「出ていけ! さもなくば容赦しないぞ!」

「……」


 彼らは反撃……することはなく、そのまま去っていった。


「次来たらただじゃおかねえからな!」


 そう言い、村民は邪神教徒が落とした本に火をつけて焼き尽くした。


「どういうことだ? 何が目的だったんだ?」

「多分、経典を持ち込みたかったんだと思うけど」


 ここで自分が抱いたのは懸念であった。

 どこかを攻撃するには、何かしら言い分があった方が都合がいい。

 そこで今回は失敗すると分かっていて経典を持ち込み、布教に失敗したからと侵攻する算段なのでは……?


「経典にはどんなことが書かれてるんだ?」

「私たちには読めないわ」

「そうか……」


 仮に邪神教徒が布教を望んでいたとして、なぜ話し言葉は通じるのに書き言葉は通じないのか。

 それを手渡そうとした真意は……?


 次来たときは、対話するしかない。

 無論、都合良く対話などできる相手ではないと思うが……


 しかしその対話のチャンスはそれほど遠くないうちに来た。


 また白いゴワゴワの服を着た男達がやってきたのだ。

 自分は村長に頼み、話し合いに同伴させてもらうことになった。

 が……


「邪神教徒どもだ! ぶち殺せ!」


 村民は興奮して農具を武器に邪神教徒に襲い掛かる。


「や、やめろ!」


 邪神教徒が3人ほど倒されると、残りはそのまま逃げた。

 倒れた邪神教徒は、特に頭と顔面に損傷を加えられた上で放棄された。


(彼らも無抵抗だったし流石に気の毒だ)


 仕方なく、自分は一人で埋葬することに決めた。

 その時だった。


「ぅ……ぁ……」

「息があるのか!?」

「……俺はあいつらを……解放しようと……」

「あいつら?」

「……助けたかったんだ……」

「何を言ってるんだ……?」


 結局男は力尽きた。

 しかし、その手には経典が握られている。

 自分はそれを読み絶句した。


 我が国は貴国の独裁体制による徹底的な統制に胸を痛めており、我々義勇兵は支配からの独立のための援助をするべく派遣された。

 貴国の経済援助ならびに物資の支援も行う所存であり、手を取り合い国際社会の平和に協力してくれる事を願う。


 ここまで読んで悟った、村民が言っていた神様とは、邪神教徒とは──


「おーい! どうしたの?」


 レベッカの声が後ろから響いた。

 自分は経典を懐に仕舞うと、笑顔を浮かべて振り返る。

 この村を見捨てる算段を立てながら。

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