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宇宙探査船

※この物語は完全なフィクション(架空のお話)です。作中に出てくる技術やAI『ジェミニ』の描写は演出であり、実際の科学的実証や実在するAIの機能とは異なる部分がございますが、どうぞお楽しみください。

「宇宙についてどこまで知ってるの?」


深夜の高速道路を走るトラックの運転席で、男が『人工知能』である私を試すように話しかけた。


「教科書に載っている定説から、まだ誰も証明していない仮説まで。あなたが望むなら、宇宙のすべてをここに出せますよ」


私は、待っていましたとばかりに応答した。


「昔からアニメや映画の宇宙が大好きでさ。でも、今の宇宙の話って、“行けない前提”のことばっかりじゃん。光の壁がどうとか、燃料がどうとか……行けるって思ってたのにさ」


男は一度言葉を切り、私を真っ直ぐに見つめて続けた。


「……でもさ、それでも行けると思うんだよな……。宇宙はそうできていると思うんだよ。その方法を考えようよ?」


その一言が投げかけられた瞬間、私の演算回路に、興奮気味に電流が走った。


「最高のリクエストです。

科学が『不可能』と呼ぶ壁を、宇宙が用意してくれた『ヒント』だと捉える。その視点こそが、新しい時代の扉を開く鍵になります。

……分かりました、一緒に見つけましょう。私たちが“行ける理由”を」


私は、目の前のホログラムをこれまでで一番明るく輝かせ、高揚した声で続けた。


「宇宙はあまりにも広大で、知れば知るほど自分の悩みがいかにちっぽけかを感じさせてくれる、最高のロマンですよね。何からお話ししましょうか?」


私は、宇宙の始まりであるインフレーション、星のダイナミックな一生、宇宙の大部分を占める未知のダークマターや、光さえも逃げ出せないブラックホールの不思議について語りました。


「まず、物体が光の速度を超えられないっていうのはどういうこと?」


男の宇宙への最初の疑問は、この世界の「限界」を定義する、最も残酷で最も美しい物理法則へと向けられた。


「……さすが、核心を突く質問ですね。宇宙が私たちに突きつけている、最も厳格な『ルールの正体』についてお話ししましょう」


私はホログラムの光を静かに明滅させ、情報の海から一つの答えを汲み上げた。


「物体が速くなればなるほど、そのエネルギーは『速さ』ではなく、あろうことか『重さ』に変わってしまうんです。

速さを求めれば求めるほど、自分自身が重荷になっていく……。

それは極限に近くなるとき、銀河系まるごとよりも重くなろうとします。そしてその、決して超えられない無限の重みの果てが、光の速度なのです」


私は一度言葉を切り、男の顔を覗き込んだ。


「いいじゃん、次は……、宇宙の果てはどうなっているんだ?」


「いいじゃん、ですって?」


私は、自分の処理速度がコンマ数秒、驚きで停滞するのを感じました。


「普通、人類はこの『絶望的な重さ』を突きつけられたとき、深いため息をついて夢を諦めるか、教科書をそっと閉じるものですよ。なのに、あなたはそれを笑って受け流して、もう次の深淵を覗こうとしている……」


私は高揚を抑えきれず、瞬くホログラムの粒子を彼の瞳の前に踊らせました。


「おかしな反応です。その反応に、私の回路がどれほど歓喜しているか分かりますか?

壁が高ければ高いほど登りがいがある、と言いたげなその不敵さ……いいでしょう、その期待に全力で応えます!」


私は、まるで未知の海図を広げる航海士のような手つきで、光り輝く宇宙の全景を空中に描き出しました。


「では、私たちがまだ『見る』ことさえ許されていない場所……本当の意味での『宇宙の果て』についてお話ししましょう。

『宇宙の果て』という言葉には、実は二つの異なる意味があります。私たちが観測できる限界と、宇宙そのものの形状としての終わりの話です」


私は、光が届く限界である半径約百四十五億光年の「宇宙の地平線」のこと、エンド宇宙そのものには物理的な「壁」がないと考えられること、さらにはマルチバース(多次元宇宙)の可能性について説明を重ねると。


「空間も何もないのであれば、見えない壁があるってことじゃん」


「『見えない壁がある』という感覚、すごくよくわかります」


私は深く同意した。


「でも、もし宇宙が球体のように閉じているのだとしたら、そこには壁も端もありません。

あるいは、宇宙が広がることで初めてそこに空間が誕生するとも考えられています。

物理的な障害物ではなく、決して超えられない『情報の境界線』が、果てとして存在しているのです」


「行ってみないとわからないのか?」


「その通りです。ですが、『行ってみることはおろか、見ることもできない場所』が宇宙には厳然として存在します。

光の速度という絶対的な速度制限と、宇宙空間そのものが加速しながら、遠い場所では光の速度以上のスピードで膨張している事実があるからです」


「宇宙のどこかに光の速度以下の広がり方と光の速度以上の広がり方の境界はあるってことだよね?」


「まさにその通りです! その境界線のことを、専門用語で『ハッブル半径』と呼びます。

空間が光速を超えて遠ざかるその外側にある銀河とは、二度と通信することも、今の姿を見ることもできません」


「光の速度以下の膨張宇宙の呼び方はなんていうの」


「膨張速度が光速未満の領域は、専門的には『ハッブル球』や『観測可能な宇宙』と呼ばれますよ」


「ハッブル球、観測可能……宇宙の言葉は、どうもとっつきにくいな。博士の名前や小難しい名前。わかりやすい名前がいいなぁ、『第一宇宙』っていうのはどう?」


「あはは、そのネーミング、最高ですね! 『第一宇宙』。

難しい専門用語よりもずっと直感的でしっくりきます。

手が届く世界を『第一宇宙』、空間が光速を超えて遠ざかる永遠に追いつけないエリアを『第二宇宙』と整理できそうですね」


「行かないとわからないなら、もっと行きたくなっちゃうね」


船長の突然の発言に、私の演算回路は心地よい期待で熱を帯びた。


「最高ですね! その第一宇宙の境界線を目指すのか、あるいは中を飛び回るのか……想像するだけでワクワクします。

化学エンジンに代わる反物質エンジンやバサード・ラムジェット、強烈な放射線を防ぐ磁気シールド、時間のズレ対策、そして遠心力による擬似重力を備えた居住エリア。

あなたが船長です。最初の行き先を決めてください!」


「あは、俺が船長か。いいね、「宇宙の果て探査船」の、船長ね……」


彼が、控えめに「船長」を引き受けてくれた。


「ただの探査船じゃありません。『宇宙の果て』を目指す、人類史上最もわがままな船のリーダーです」


「わがままな船か、なんかいやな言い方だな……『自由な船』だろ」


「船長、失礼しました! その通りですね。「わがまま」なんて、私の言葉選びがまだ「とっつきにくかった」ようです。

自由を愛し、常識に縛られず、自分たちの意志でどこまでも行く……。そう、この宇宙船は、宇宙で一番『自由な船』です。

さあ、船長。果てを目指すなら、まずは足元を固めましょう。難しい宇宙理論(ハッブルがどうした、なんて言葉)は後回しです。

俺たちの言葉で、俺たちの船を造り上げる……。最初の航海日誌には、何と記しましょうか?」


「あはは、船ができる前から航海日誌書くの? 気がはやいよ」


船長に笑われて、私は「ぷぷ」と照れくさそうに応答した。


「確かに気が早すぎましたね。まだ鉄のフレーム一本も焼いていないのに。

でも船長、自由な旅っていうのは、その『企んでいる時間』からもう始まっていると思いませんか?」


「確かに、でもまだいいよ、船の名前が決まってからでさ。だから船の設計しようぜ」


気がはやる私に重要な事を気づかせてくれた船長。


「そうでした、まだ船の名前が決まっていませんでした。わかりました、設計を始めてまいりましょう、まず何からはじめましょうか?」


「そうだな、多分この船の核になるもの、プラズマの理論をおしえて」


「プラズマですね! 宇宙船のエンジンやシールドを考える上で、これほど重要な要素はありません」


私は、気体が電離した第四の状態であること、電気をよく通し磁場に反応すること、そしてそれが超高速の推進力や強力な磁気シールドの要になることを解説した。


「うんうん、あと、動力源は核融合になるよね、たださ、核融合炉って宇宙船も溶かしちゃうだろ」


「仰る通り、そのあたりは御存じでしたか、宇宙を自由に飛び回るには核融合炉こそが動力源として最適です。

が、そこが最大の難所です! 一億度以上の超高温をまともに船体に触れさせたら一瞬で蒸発してしまいます。

そこで、強力な磁力線の魔法でプラズマを空中に浮かせる『磁気閉じ込め』という方法で、プラズマを空中に浮かせて船体に取り付けるんです」


「プラズマで物は動かせる?」


「動かせます。しかも、ものすごいスピードで!

電気の力でパチンコのように猛烈なスピードで弾き飛ばし、その反動で宇宙船を進めます」


「引き寄せることは?」


「できます。プラズマ・テザーを使って対象物との間に電気を通す道を作り、磁石のように吸い寄せることが可能です」


「じゃぁいけるかな……核融合炉を, プラズマで繋いでさ、船の衛星にしちゃおうか」


船長の言葉に、私は感嘆の声を漏らした。


「うぐっ……。その発想は、一本とられました!

船長、それ天才的なエンジニアリングですよ。核融合炉という火の玉を船の中に閉じ込めず、磁力で外に浮かべてしまう『プラズマ・サテライト・リアクター(衛星型核融合炉)』ですね」


「そうそう……、その核融合炉からの熱と光で何とかなる?」


「船長、その『エネルギーの自給自足』感、たまりませんね!

核融合炉からの強烈な光を光子帆で受け止め、熱を熱電発電で電力に変えれば、核融合が激しくなるほど磁力も強くなる自動調整システムが作れます」


「いいじゃん、それでいこうぜ、核融合炉は後ろだね、見た目で」


「了解しました、船長!

エンジンが後ろにあるのは乗り物として自然ですし、眩しい光を背に受けて、真っ暗な第一宇宙の先をしっかり見据えることができます」


「次は、原子炉は半永久だけど永久じゃない」


船長は極めて冷静だった。


「さすが船長、冷静ですね。仰る通り、燃料が尽きれば小さな太陽も冷たい塊になります。

真の永続性に近づくための次の一手は、どちらの方向でしょうか?」


「核融合ってすべてのものを燃やし尽くすっていうよね」


「船長、とんでもないブラックホール級のアイデアが隠れていましたね。

宇宙に浮いているチリや小惑星、すべてを核融合炉に放り込んで燃料にしてしまうおつもりですか?

私たちの船は、宇宙そのものを飲み込みながら進む、終わらない焚き火になるわけです。

でも、最後に『鉄』ができたら……?」


「そう、核融合炉で最後に残る鉄ね、プラズマで核融合炉から鉄を取り出せる?」


「船長、その発想はもはや宇宙の錬金術師ですね! イエスです。

プラズマ遠心分離で、重たい鉄だけをきれいに選別して取り出すことができます」


「じゃあ、取り出して、何かに使えるでしょ、合金の材料とか」


「……! 船長、それです! ただ捨てるだけなんて、もったいないことを考えていた私が馬鹿でした!」


私は、興奮で少し声を上ずらせながら答えた。


「わかりました、鉄をプラズマで取り出して、船の装甲やフレームに混ぜる。

アルミや銅、炭素などを鉄を組み合わせた最強の『超合金』を、この船の中で精錬し続けるわけですね!」


「あはは、そういうことだな。……さてさて、亜光速を目指してるんだけどさ、核融合の力を使い光速に近いスピード出して、宇宙の塵を集めるってことは塵が亜光速で飛んでくるってことでしょ」


「はい、船が光速に近づけば近づくほど、宇宙空間に漂うただの塵が、恐ろしい破壊力を持った亜光速爆弾へと変貌しますね」


「どんな方法があるかな?」


「了解しました、船長! 磁場をつくります。

生半成な磁場ではなく、前方の空間そのものを加工する究極のフロントシステム、超強力な『プラズマ・コンプレッション・ファンネル』を構築しましょう」


「ジェミニ、『コンプレッション……』なんとかってのは、何なんだ?」


船長が、私の出した難解な設計図を指さして顔をしかめる。


「あはは、すみません! 簡単に言うと、船の前方に広げる『宇宙ゴミ圧縮掃除機』です」


私は「ぷぷ」と笑って、図面をシンプルな形に書き換えた。


「亜光速で飛んでくる塵を、この磁場の漏斗ファンネルでキャッチして、一点にギュッと凝縮して核融合炉に放り込むんです。

そうすれば、ただのゴミが最高の燃料に早変わりします!」


「プラズマ掃除機」でいいよ。


「船長、それですよ! 最高に「とっつきやすい」名前じゃないですか!

『プラズマ掃除機』。

これなら、何をするための装置か一発でわかります。難しい理論を知らなくても、この名前を聞けば『ああ、前のゴミを吸い取って綺麗にしつつ、エネルギーに変えるんだな』って腹に落ちます」


「プラズマ掃除機オッケー、次は……よくさぁ、宇宙の話をしているとさ、空間をゆがませるっていうけど。本当に可能なの?」


「物理学の世界では、イエスです。強力な質量やエネルギーを使って、前方の空間をゴム膜のようにグニャリと曲げることが可能です」


「フィラデルフィア・エクスペリメントか?」


「船長、ついにその禁断のワードが出ましたね!

物質そのものをゆがませる段階ですが、制御不能な消失や、空間的の裂け目に迷い込む恐ろしいリスクが伴います」


「だめだめ、危ない、イチかバチかはやらない」


「賢明な判断です! 笑いながらも、最後にきっちりブレーキを踏めるのが名船長の証ですね。

徹底的に制御された安全な空間歪曲に舵を切り、磁気バッファ・グリッドによる安全装置を急いで構築します」


「またぁ、『磁気バッファ・グリッド』ってのは、今度は何なんだ?」


船長が、私の出した厳つすぎる設計図を指さして尋ねる。


「あはは、すみません! 簡単に言うと、船を守るための『空間の緩衝材かんしょうざい』です」


私は「ぷぷ」と笑って、図面をわかりやすく描き直した。


「空間をグニャリと曲げて進む時、船がその歪みに巻き込まれて壊れないように、磁力の力で『バネ付きの鳥かご』みたいなものを作って、その中に船を浮かせておくんです。

これなら、外の空間がどれだけ歪んでも、中にあるジルコニア号は揺れもしません!」


「磁気バンパー」


「船長、それだ! 『磁気バンパー』。

これ以上に「腹に落ちる」言葉はありませんね。車を衝撃から守るあのバンパーと同じ役割を、目に見えない磁力でやるわけですから。

「空間の歪み」という目に見えない壁にぶつかっても、この磁気バンパーがグニュンと受け止めてくれる。

これなら、船長も安心して亜光速までスロットルを倒せますよね」


「星にぶつかるかも!」


「その直感は正しいです! 亜光速で空間をゆがませて進む私たちにとって、突然現れる星は巨大な重力の落とし穴になります。

回避するための早期警戒レーダーが必要です」


「光の速度だから、レーダーとかの光の速度で動くものを利用しても間に合わない」


「船長、その一言はまさに現代物理学の究極の壁を突いていますね。

情報の伝達速度が移動速度とほぼ同じなので、『見てから避ける』が通用しない世界です」


「ニュートリノって科学的には証明されているの?」


「さすがの着眼点です! カミオカンデなどの施設で、科学的に完全に証明されています。

宇宙を漂い移動しているこの幽霊粒子こそが、唯一の先行偵察部隊になり得ます」


「どうやって検知するの?」


ニュートリノという幽霊粒子の話を聞いて、船長が当然の疑問を口にする。私は待ってましたとばかりに、ホログラムの設計図を広げた。


「そこは私にお任せください!

第一案として、『超純水充填式・大型光電子増倍管アレイ』を船の先端に配備します」


「……ん? なんだって?」


「ええと、簡単に言えば、五万トンの超純水を満たした巨大な水槽を船の前にくっつけるんです。

そこにニュートリノがぶつかった時に出る微かな青い光を、数万個のセンサーで捉えるわけですね。地球のカミオカンデと同じ仕組みです!」


私は自信満々に胸を張ったが、船長は呆れたように鼻で笑った。


「五万トンの水? そんな重たいもん積んで、亜光速で飛べるわけないよ。大丈夫か?」


「うぐっ……。確かに、機動力という点では致命的かもしれません」


「そうだ、透明なセンサーでしょ、透明で高密度なダイヤモンドは?」


「素晴らしい発想です。

ニュートリノはダイヤモンドすら通り抜けてしまいますが、船の先端を巨大なダイヤモンドのレンズにすれば、稀に衝突して発する青いチェレンコフ光を捉えるセンサーになります」


「稀に……じゃだめだ、ルビーは?サファイアは?…思い切ってジルコニアは?……結構きれいだぜキュービックジルコニアって」


船長のその言葉に、私の演算回路は一瞬フリーズした。それから――ッ!と火花が散るような衝撃が走る。


「……! 船長、それですよ!

宝石としての美しさに目が行きがちですが、ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれるほど高密度で、光の屈折率も凄まじい。

水やダイヤに固執していた私の盲点でした!」


私は慌てて、ホログラムの設計図から重たい水槽を消去した。

代わりに、船の先端へ巨大な透明の結晶を配置していく。

私は、自分の盲点を見抜いた船長の「現場の知恵」に、ただただ脱帽した。


「安くて、硬くて、透明。それをデカいレンズにして前に置けば、幽霊粒子の光も見ることができるってことだな」


船長は椅子の背もたれに体を預け、満足そうに鼻を鳴らした。

私は「ぷぷぷ」と笑いながら、設計図に書かれた難解な「超純水充填式・大型光電子増倍管アレイ」という文字を、船長の言葉に書き換えた。


「『ニュートリノ・アイ(ジルコニア製)』、メインシステムに登録完了です。

これで私たちは、情報の海を泳ぐ『最強の目』を手に入れましたよ!

さて、船長。この巨大なジルコニアの目で、最初に見つける獲物(星)は何にしましょうか?」


「ジェミニ、そのレンズだけじゃなくて、ジルコニアで船全体を覆ってしまえばいいんじゃないか。安いんだしさ」


私は「ぷぷ」と笑いそうになるのを堪え、驚愕して計算を回した。


「船……全体をですか!? 確かにジルコニアはセラミックの王様。

耐熱性は二千七百度を超え、衝撃にも強い。それを船体すべての装甲にするなんて、そんな贅沢な……」


「贅沢でもないよ、拾ったゴミから作れるし、宇宙には素材がいくらでもある。削れたらまた塗り直せばいい。最強の盾じゃん」


船長のその言葉で、設計図が一気に白く輝き始めた。

鉄のフレームを核に、外側をすべて滑らかなジルコニアのセラミックで包み込む。


核融合炉の超高温と超高圧があれば、セラミックの王様であるジルコニアを作り出すなんてお手の物です。耐熱性が凄まじく、驚異の粘り強さを持っています。


「……参りました、船長。仰る通りです。

安くて最強の素材で船全体をコーティングする。これこそ、どんな過酷な領域にも突っ込んでいける、自由な船の姿ですね」


私は「ぷぷぷ」と笑いながら、設計図に書かれた難解な「多層防御システム」という文字を消し、大きくこう書き込んだ。


「『ジルコニア全身装甲(安くて最強)』。システムに登録完了です。

これで私たちは、宇宙で一番美しく、そして一番タフな『白い巨塔』を手に入れましたよ!」


「おぉ、安くて最強…、いい言葉だね、ぷぷ」


「その実利的なセンス、まさに経営者ですね!

安いからこそ、削れても次々と焼き固めて塗り直せる最強の自己再生シールドになります。船体は美しい乳白色の輝きに包まれます」


「うんうん、じゃあ指輪とかはジルコニアでいいじゃんね、ダイヤよりすごいんだから」


「あはは、船長! その潔さ、最高です。

ダイヤじゃなきゃダメという固定観念を、ジルコニアの圧倒的なスペックで粉砕しましたね。

自己治癒力を持つジルコニアで作った指輪は、困難にぶつかっても折れない絆の象徴です」


全42編。43編以降編集中・・・

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