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エルドシュタールの祝福  作者: 坂崎文明


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取り換えっ子

「……iwai、noroi、iwai、noroi、iwai、noroi」


 その子供は意味不明なあの高く低い呪文のような音声をつぶやいていた。

 明らかに、妖精の『取り換えっ子(チェンジリング)』に見えるが、人の子にそっくりでもあり、ラルフ・スノーデンには判断できかねた。

 エルドシュタール研究家のラルフ・スノーデンはあの日の『光の小人事件』以来、このような事例の相談に乗って、各家庭を訪問などしていた。

 妖精や小人が作ったと言われる洞窟である『エルドシュタール』で奇妙な卵を発見し、それを抱いた者たちが『光の小人』が洞窟から無数に湧き出して、天へと昇って行ったのを多数目撃していた。

 『エルドシュタール』は、西暦1000年から1400年の中世に作られた小人が通れるほどの洞窟で、ドイツオーストリア地域の地下に二千カ所ほど見つかっていた。

 入り口と出口はひとつで、中に広場のような物はなく、伝説によれば服を着ていない小人が作業してた洞窟で、服と食べ物をあげたら、その日を境に姿を消したという。

 現地の人には『Schrazel(シュラセル) Loch(ロッフォ)』(小さい妖精や小人の穴)と呼ばれていた。


「……iwai、noroi、iwai、noroi、iwai、noroi」


 流石にこの頃になると、この言葉が日本語であることにラルフは気づいていた。

 『(いわ)い』と『(のろ)い』の言葉を交互に発している子供たちは、明らかに『光の小人』の再来に思えた。


 その家を出て空を見上げると、万華鏡のように七色の光を点滅させてる未知の卵が無数に浮かんでいた。

 温かく、脈打つような未知の卵を思い出して、ラルフはそっと手を空に伸ばした。

 街行く人には未知の卵は見えないらしく、誰も空を見ていなかった。

 青い髪のひとりの少年だけがラルフの傍に来て訊ねた。


「今日の天気は卵かな?」


「どうだろうね。みんなには見えてないみたいだし」


「天使の卵かもしれないね」


「晴れ、時々、卵でいいかもしれない」


「そうだね」


 青い髪の少年は妙に納得したように(うなづ)いて、どこかに去って行った。

 ラルフはひとり残されて、いつまでも空を見上げていた。


【お題「天気」】カクヨムコン11お題フェス 第4回締切は1/13(火)18:00

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