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春、放課後。もう一人との出会いは部室で

「いやぁ、まさか光ちゃんと御木千代さんが知り合いだったなんてね。」

「僕からすれば、光の方が驚きだよ。よく人の後ろに隠れていた光が、まさか登校初日に友達を作っているなんてね。」

「……た、多分皆さん、御木千代先輩の恰好の方がずっと驚いてると思いますけれど……。」


放課後、姫華は光、御木千代と三人で校舎内を歩いていた

光は御木千代と元々知り合いだったからか、光の御木千代に向ける言葉は姫華に対しては少々遠慮が無いように聞こえる。

まあ、光が御木千代の事を嫌がっている、とまでは見えないが。

しれに御木千代もどうやらマイペースな所があるのか、普段からこういうやり取りしているからなのか、全く意に介した様子も無い。


「だって、僕に似合うだろう?この袴。」

「そうだね……確かに、クラスの他の女子よりも凄く綺麗だと思ったよ。」

「だろう?僕の優美さを引き立ててくれているだろう?」


褒められると気を良くしたのか、満足げに御木千代は笑い、二人の前に立てば袴の裾を軽く摘まみ上げてその場でくるり、と回る。

スカート、袖、そして長い切り揃えられた黒髪。

その三つが回転によって風に乗りひらりと宙を舞う。

「ふふんっ。」と笑って一回転し終わると、しゃなりとその細長い指で髪を払う。

肌が綺麗なのと姫華はあまり化粧の知識が無いので、化粧などまでしているのかはわからないが……その姿は、言い様もないくらいに美しい、と姫華の目には映った。


「あはは……似合うからって、普通は普段から女性の恰好はしないような……。」

「僕の美しさが映えればいいのさっ。」

「ははは……。」


やはりというか、御木千代はマイペースなのであった。


「そういえば、今から部活を見に行くんだったよね?」

「うん、今日でも活動してる部活もあるだろうし、参考程度に見学しようかなって。」

「なら、挨拶をしたい人が居るんだ。そこに最初に行きたいんだけれども、付き合ってもらって構わないかい?」

「……ああ、玉姉様たまねえさまの所ですね。」


御木千代の言葉を聞いてふむ、と頷く光。

その様子を聞いて興味深そうに姫華が聞く。


「光ちゃんも知ってる人なの?」

「お、恐らく……。」

「私は二人の知り合いなら、是非知りたいし、会って話もしてみたい所だけど……私が会いに行っても、大丈夫なのかな?」


姫華の疑問は当然である。

二人の知り合いなら、せっかく二人が入学してきたのだ。

積もる話もあるだろうし、自分は邪魔なのでは?と気にしてしまうのも無理はないだろう。

だが、御木千代は首を横に振って否定する。


「いや、そこは心配ないさ。玉姉さんはお世話好きな人だからね。光の早速友達が出来た、と聞けば喜ぶだろう。」

「……呼び方で分かると思いますけれど、私達にとっても、色んな人にとっても、玉姉様は本当に姉みたいな人ですから。」

「そっか……なら、私も挨拶に行ってみようかな。少し楽しみだし。」


姫華も挨拶しに行く事が決まれば、早速その玉姉さん、という人が居るらしい部室へと向かった。


【沖牟中市研究同好会】


そう部室の入口のプレートには書いてあった。


「ここが玉姉さんの言っていた所か、分かりやすいネーミングで助かるよ。」

「ここが……学校の校舎の中を歩き回ってたから、多分運動系の部活じゃないんだろうなとは思ってたけど……。」


まさか、こんな少し謎な同好会だったとは。

流石に少し姫華は面食らっていた。

そもそも少し……いや、結構ナルシスト気味(実際クラスでも自撮りしまくったりクラスメイトにポーズ求められて写真撮ってもらったりしていた)なくらいに自分の優美さを自信満々に見せつける御木千代は茶道部や華道部、運動系ならダンス部にでも居そうな雰囲気である。

逆に物静かでおとなしい光は、文芸部や美術部、吹奏楽部にでも居そうだ。

そんな二人が、この沖牟中市研究同好会なる同好会に居る先輩に会いに行く。

その玉姉さんなる先輩がどういう人なのか、尚更気になる姫華だった。

御木千代が部室の扉をコンコン、とノックする。


「はぁ~い。」


返ってきた返事の声色は優しくて柔らかい声。

すぐに返事が返ってきたかと思うと、ガチャ、と扉が開く。

中から出てきたのは、長い緑の髪を白いシュシュで結んだ、金色に見える瞳が特徴的な美人だった。

身長は姫華や光よりも大きく、男子の御木千代よりは少し小さいくらい。

非常にスタイルが良く、胸もお尻も姫華や光より明らかに大きかった。

なんというか、身体もだが雰囲気そのものが柔らかく優しい雰囲気を感じさせる。


「あら~、御木千代君に光ちゃん、待ってたわ~、二人とも、入学おめでとうね~。」

「久しぶりですね、玉姉様。」

「僕は少しぶりかな、玉姉さん。」

「そうね、この前は光ちゃんを呼んではいなかったから、光ちゃんはちょっと久しぶりになるわね~。」


嬉しそうに微笑む姿が様になる女性に深くお辞儀する御木千代と光。

姫華はそれを見ていると、女性も姫華の方に気づいたらしい。


「あらぁ……?こちらの子は~……?」

「ああ、紹介するよ。同じ新入生で、僕と光の友達になった姫華だよ。玉姉さんへの挨拶に着いていくって言ってたから連れてきたんだ。」

「あ……私は、櫻井姫華です。光ちゃんと御木千代くんのお友達として、これからよろしくお願いしますっ。」


流石に登校初日に先輩が相手だからか、少し姫華も緊張しながらもしっかり深々とお辞儀をする姫華。


「あらあら~、わざわざ挨拶に来てくれるなんて、しかも御木千代くんと光ちゃんのお友達になったなんて、お姉さん嬉しいわ~。」


嬉しそうに微笑みながら、女性は高い背を屈めて目線を姫華に近づける。


「私は二年生の三池玉姫みいけたまきです。先輩、でもいいけれど……お姉さん、お姉ちゃんって呼んでくれるともっと嬉しいわ~。」

「お、お姉さん……お姉ちゃん、ですか?」


顔を上げて姫華が女性……玉姫の言葉に困惑していると、光が姫華の耳元でひそひそと小さく耳打ちする。


「玉姉様は、昔から年下の人や後輩にはお姉さんとして振る舞おうとする所があるんです……。」

「そ、そうなんだね……。」


(お姉さん、かぁ……。)

頭の中で考える姫華。

姫華は一人っ子で、幼馴染と言えるような人もあまり居ない為、姉妹や兄弟という物には少し憧れがあった。

(こんな綺麗な、優しそうな人が自分のお姉ちゃんだったら確かに自慢だろうし、悪くないかもなぁ……)

そう内心考える姫華であった。


「はい、よろしくお願いします、玉姫お姉ちゃんっ。」

「あらあら……まあまあっ」


嬉しそうに微笑む玉姫であった。

去年お身体にはお気をつけて、と言いながら大晦日に風邪を引いてしまい、最近まで鼻水や咳や悪寒などに苦しめられていました……風邪やインフルエンザも流行っているので皆さんも本当にお気をつけくださいね。今回出てきた玉姫、実は御木千代と名前を入れ替えるかギリギリまで悩んでいました。その理由はまあ今後の展開なのですが……まあ、そこらへんは何となく整合性は取れるように頑張ります。

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