春、ホームルーム。その運命の出会いの名前は
「はいっ、一番、ーーですっ、出身は〇〇中で__」
始業式が終わって最初のホームルーム。
ここは定番に……という事で挨拶代わりの自己紹介が始まった。
今日はまだ本格的な授業は無く、自己紹介やホームルーム、レクリエーションや説明などで一日が終わる。
姫華はその後に部活の軽い見学などもする予定な為、既に家族に帰りは遅くなると既に伝えている。
今日の今後の予定を考えながら自己紹介を聞いていると、左隣の光の順番が回ってきた。
「次、お願いします。」
姫華と光はひそひそと小さな声で話す。
「ひ、姫華さん、順番回ってきました……!あうぅ、私不安というか、緊張が凄いというかっ。」
「光ちゃん、頑張って、光ちゃんなら出来るよっ。」
「ひ、姫華さん……!」
「大丈夫大丈夫、深呼吸深呼吸。」
「んん……すーっ、はーっ、すーっ、はー……。」
「そうそう、落ち着いてやれば大丈夫だよっ。」
「は、はいっ……!」
光は少し勢いよく席を立つ。
「二十一番、よ、米山光ですっ!その……凄く今緊張してますけど、皆さんと仲良く出来たら嬉しいですっ!よろしくお願いしますっ!」
(パチパチパチパチ)
「ふ、ふう……。」
「お疲れ様、頑張ったね、光ちゃん。」
「は、はいっ、姫華さんも頑張ってください!」
「うん、ありがとうねっ。」
次は隣の姫華が立つ。
「はい、櫻井姫華です。楽しい学園生活目指して行きますので、皆さん仲良くしてください、よろしくお願いしますっ。」
(パチパチパチパチッ)
とりあえず考えていた挨拶を済ませれば、拍手に歓迎されながら姫華は席に座る。
「姫華さん、堂々としていて凄いですっ……!」
ひそひそと小さな声で話しかけてきた。
「これくらい普通だよ、光ちゃんもちゃんと出来てて偉いよ。」
「そ、そんな……私は上手く出来たか今も不安で……でも、今日は本当にありがとうございます、今日は姫華さんに助けられてばかりですね。」
「ううん、そんな事無いよ、友達なんだから当然の事をしたまでだしっ。」
「とも、だち……?」
きょとんと不思議そうな顔をする光。
変わらず姫華は言葉を続ける。
「そ、もう私達、友達でしょ?……それとも、まだ早かった、かな?」
くすっ、と姫華はどこか悪戯っぽい笑みを見せて可愛らしく小首を傾げる。
そんな姫華につい光も釣られて笑顔で返す。
「そんなまさか……ありがたいですっ、頼もしいですっ、嬉しいです……!」
感激、とばかりに姫華に握手して笑う光。
光はどうやら引っ込み思案なわりに感動屋な所があるらしい。
「よしよし、そんなに嬉しいなら嬉しいよー。」
姫華はつい甘やかすように光の白髪を撫でていると、姫華の右の方からサッ、と音が聞こえた。
姫華が振り向くと、黒髪の麗人が立っていた。
(この子の自己紹介、しっかり聞いておかなくちゃ……何でか分からないけど、凄く気になるんだよね)
そう思って姫華は、そしてクラスのほとんどの人が注目する。
やがて、黒髪の麗人は口を開いた。
「二十三番、出雲御木千代。」
……その声は、姫華の予想よりも低めの声だった。
自分よりもずっと綺麗な女性に見える。
その声もやはり綺麗な声だった。
しかし、どこか男性的な雰囲気もある、中性的な……。
そんな風に思っていると黒髪の麗人……御木千代は言葉を続けた。
「あー、多分大体の人が勘違いしているだろうから先に言っておくけれど、僕はこの恰好は趣味なだけで、僕は普通に男だから、そこら辺含めてよろしく頼むね。」
「…………。」
しーん、っと教室内が静まり返る。
担任の先生もぽかん、と口を開けて黒髪の麗人……御木千代を見つめていて。
姫華も同じように開いた口が塞がらず。
やがて。
「…………えええーーーーーーっっ!!?」
と、教室内の全体、特に御木千代を狙っていたであろう男子から声が響いた。
それを知っていた唯一の人間……米山光を除いて。
ここら辺結構原案から書き換えています。御木千代は元々違う名前でしたし自己紹介の順番も違ってました。自己紹介の順番は変えないほうが良かったな……と後悔中です。御木千代の名前から没になった名前は後々出てくるのでお待ちを……。