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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、変わる日常と変わらない姫華

姫華は、自分が離界に足を踏み入れてから2,3日経っている事を知った。

流石に学校など町では大騒ぎになっている……かと思われたが、この沖牟中市においてツガネ様とオロチ様の権力と顔の広さ、そして手の速さは凄まじい。

離界での出来事の後、学園や警察、市長などにはもちろん、姫華の家族にもツガネ様とオロチ様が説明をしていたらしい。

もちろんそれでも家族は姫華の心配をしていたし、学園の生徒たちにも心配されたが、それなりに対応が出来たお陰で姫華の家族が過剰に心配をしたり学園で他の生徒達から浮いたり、ということは無かった。

姫華は、これから里守の手伝いをする事を家族に伝えた。

両親……特に、父親は返事に困ったが……それでも、最終的には姫華の決意の固さ、そしてなにより、姫華にしか出来ない役目を背負う覚悟に押されて根負けし、姫華が里守の姫としての活動を認められた。

説得にはツガネ様とオロチ様が居た事も大きいのであろう。

この土地を守る守り神様である神様に頼まれた、という事がどれほど大きな役目を背負っているのか、というのはわかりやすいものであったと言えよう。

それに、ツガネ様もオロチ様も頭を下げたのだ。


「どうか、娘さんの貴重な力、我々に貸していただきたい。絶対に、守り抜いてみせるので。」、と。

「姫の力というのは、とてつもなく希少な物だ。その力をこの町、ひいてはこの町に住む皆の為に力を貸してもらいたい。」と。


ツガネ様が言うのはまだギリギリ分かった。

だが、どこか第一印象は軽薄そうなオロチ様まで真剣な顔で頭を下げた。

それが姫華にとっては驚きであった。

それだけ自分の力や存在が求められているという事もだが、そもそも人に頭を下げたりするという事が驚きであったのだ。

これを見て、姫華はいざという時はしっかりする神様だとオロチ様に対しての認識を改めた。

そして、そんなオロチ様の力を使って沖牟中の町を害そうとする穢れを、私達が祓うのだと決意を新たにした。


その後は姫華は大変であった。

ツガネ様とオロチ様がこの沖牟中の町の大事な存在であるという事は分かっていたつもりではあったが、学園の校長や理事長といった学園の教師陣、沖牟中市の警察や福岡県警の偉い人達、そして沖牟中市長や県庁の偉い人達などとのお話や食事があり、学園生活を送りながら夜はそういう会談という生活が続く事約一週間。

改めて姫になるという事の事の大きさと二柱の神様の偉大さを思い知るのであった。

そうしたのが落ち着いて、ようやく普通の学園生活に戻る頃には、何とか学園内のクラスメイト達に馴染みながら過ごしていた。

だが、やはりというか何というか、基本的には一番話すメンバーは光、御木千代、そしてよくクラスに遊びに来る玉姫であった。

姫華としては、嬉しい事には嬉しいが、気にしている事があった。

このグループ、とにかく目立つのだ。

光もスタイルの良い色素の薄めで恥ずかしがりやの可愛らしい美少女であり、男子からはモテるし女子からも小動物のように可愛がられている。

玉姫は二年生という事もあって、ある程度学園の人間にも知れ渡っているという事もあってか、この学園のアイドル的な存在として扱われている存在だ。

おっとり系のお姉さんとして、男性はもちろん女性でも甘えたいという人は少なくなく、学園や男女問わずに弟や妹になりたいという人が沢山居る。

そして、やはりというか一番目を惹くのは御木千代だ。

男性でありながら、服装が自由とはいえこの学園でも目立つ和装、しかも女装をしているその姿。

しかもただの女装ではなく、下手に普通の女性よりも明らかに分かる、まさに絶世の美少女としか言い様の無い程女装が似合っている美しさと可愛らしさだ。

筋肉はうっすらとついている筈なのに細身で色白な肌とそれに対照的な美しく長い黒髪。

そして性格も、少々……いや結構、ナルシスト過ぎるきらいはあるが、ノリが良く、元気も良く、性別や学年の違いも気にせず好意的に接してくれる。

それこそ自分を褒めてくれる人にはわかりやすく喜んでもっと褒めてくれというようなタイプなのだ。

友達も沢山出来ているし、友達じゃない人もいざという時は引っ張っていくようなタイプなのだ。

学園のアイドルである玉姫と同じくらい、もしかしたらそれ以上に学園の人気者になり、話題になっているのが御木千代なのだ。


それに対して、姫華も流石に思う所はあった。

劣等感、という物は無かった。

三人が見た目も中身も素晴らしい人であるという事に対する妬みなどといった感情は無かったからだ。

しかし、姫華にとって自分はどこまでも普通のどこにでも居るような女の子なのだ。

少なくとも普通の女性より容姿は整っている筈だが、それを姫華は自覚していなかった。

特別モテたり、容姿で目立った事も無いし、たまに友達に褒められるくらいで姫華はそれをお世辞くらいにしか思っていなかったし、特別自分が優れているという感覚も無かった。

性格もあまり変わっている、とか言われたりもしなかったし、勉強や運動が特別出来る、というわけでもないし、何か特別な特技を持っているわけでもない。

そして、そんな中で学園に入って、里守という存在を知り、そして自分が特別な姫という存在になり。

頭では特別な存在になれたのだ、という理屈的理解は出来ても、感覚が追いついてこない。

そんな、特殊な力以外はどこまでも普通な存在である自分が、こんなに凄い人達に囲まれていていいのであろうか、という葛藤はあったのだ。

悩み……というには小さく、でも違和感……というには大きすぎる感覚が。

そんな事を考えながら日々を過ごして約二週間が経過した。

学園生活にも少しずつ慣れてきて、少しずつ里守としての説明も受けて理解しようとしている時期だ。

玉姫曰く、そろそろ姫華にも姫としての実戦を経験してもらおうという時期であった。


「さて、今日も終わった終わった。さて、部室に行こうか。」

「はい……玉姉様も待っているでしょうし。」

「そうだね……そろそろ、私も本番だから、しっかり聞かなきゃ。」


学園の授業も終わり、放課後になると三人は部室へ向かう。

部室……『沖牟中市研究同好会』へ。

そもそもこの同好会は、実は普通の同好会ではない。

表向きはその名前通りに、沖牟中市の歴史資料などを研究したりして広報に発表して沖牟中市の事を皆に知ってもらおうという活動をしている。

だが、その真の姿は、沖牟中学園の里守の集まる作戦会議室の一つなのだ。

もちろん、姫華も最初は驚いた、といっても、周りからはあまり驚いていないように見られていたが。

この沖牟中市内の中学、高校、大学、企業のほとんどにこういう部室や部門があるらしく、そこで情報伝達をしてネットワークを形成し、情報共有をして里守を繋げているらしい。

そして、玉姫は姫として丁度いいとして同好会の部長になっているのであった。

姫華は普段からぼーとしているように見られたり、リアクションが薄いと言われるのであまり驚いていないように光や御木千代からは思われていたが、姫華的には結構驚いていたものだ。

そんなこんなで、部室でこの日は部室で作戦会議をする事となったのだった。

というわけで当初の予定通りに春編を続けることにしました。上手くまとめていきたいです。

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