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春、始業式の朝。そして運命の列車は走り出した。

「やば、このままじゃ遅刻しそう……行ってきまーす。」


家を飛び出す女子高生。

行先である高校は服装に関する校則は自由なのだが、彼女は今日自分が入学する高校の制服が気に入って高校を選んだ部分もあるので、お気に入りの制服を着る事にしている。

紺色のブレザーも、、内側のクリーム色のベストも黒と黄色のチェックのスカートも、赤い胸元のリボンも。

その一つ一つがお気に入りだ。

唯一制服のセットから違う物があるとすれば、頭にかかる白いベレー帽くらい。

このベレー帽も、彼女のお気に入りだ。

自分の好きを詰め込んだこの姿で、入学式へと向かう。

その制服を着ての、まさに彼女にとっての初めてにして晴れのお披露目の日である入学式の日に流石に遅刻は不味い。

まあそもそも登校初日にいきなり遅刻しうるという事自体がどう考えてもよろしくないのだが、何処か浮かれている気分と元よりマイペースな性格の前では消え失せてしまっているようだ。


そんな女の子……櫻井姫華さくらいひめかは、茶色いローファーをカツカツと鳴らして、最寄りの学校に向かう駅に向かうのだった。


この町、沖牟中市では路面電車が走っている。

炭鉱が未だに発達した独特のこの町は、炭鉱電車が走っているのだ。

石炭や物資を運ぶ為の「炭鉱電車」、炭鉱夫達などの人を運ぶ為の「炭鉱人車」。

そういった電車が今でも活躍しているのだ。

そして、その以前に炭鉱で使われていた蒸気機関車。

この蒸気機関車が、人を運ぶ為に改装され、路面電車の一部として活躍しているのだ。

もちろん路面電車として最初から新造されている物もあるが、これもこれで歴史的な貴重な物として、学術的にも、そして機関車のファンなどによって観光資源的な価値もある物としてこの沖牟中市の中で活躍している。


「はあ、はあ……間に合った……。」

息を切らして走って、何とか間に合った姫華は走って乱れた服装をパンパンっと手で払い、学校用のバッグからピンク色に銀色などのラメが入った手鏡を取り出すと、薄いピンクが一本混じったピンクブラウンの髪の跳ねが無いかを確認する。

肩にギリギリ届かないくらいの、軽くウェーブ気味の髪の、特に気にしている前髪をよくチェックする。

メッシュのように入った髪に近い桜色の瞳は垂れ目でも吊り目でもなく、穏やかなな目つき。

白い艶やかな肌、薄い桃色の唇をしっかりと確認すれば、「よしっ。」と鏡に向かって小さく頷く。

姫華は中学までは徒歩通学だったので、路面電車は遠出の時や友達の家に行く時に使うくらいで、通学に使うのは初めてだ。

(今日もいつも通り、しっかりばっちり。それじゃあ、最初の通学電車の第一歩……。)

大きく電車の前で一つ深呼吸。

少しの緊張と、それ以上の期待混じりの顔で車内に足を踏み入れた……その時だった。


「……うん?」


視界の端の、左の方に映った人物に目が行った。


今から行く、「私立沖牟中高等学校」は、服装の指定は無く、制服でなくてもいい自由な学校だ。


それ故に、自分の周りにも、私服だったり、制服だったり、逆にフォーマルなスーツで電車に入る同年代の男女が見受けられる。


その人も、自分と同年代であろう、恐らく同じ学校に通学する生徒だと思われる。

この辺りの路面電車から行ける服装が自由な高校は沖牟中高校しか無いからである。


だが。

その人が。


他の周りの人々から明らかに浮世離れしていて。

それでいて、とても美しいと感じたのはその絶世の美貌だろう。


まるで明治時代に女学生のような、紅白の紋付の、袖の下が長くなっている和装。

下の袴は濃い暗めの紫色をしている。

髪は墨のように黒く、そして宝石のように艶やかで腰より伸びた長髪。

それとは対比のように肌は私とは比べ物にならないくらい、雪のように白い肌。

長くくるりとした睫毛、紅玉をはめ込んだかのような赤く輝く瞳。

そのお人形のような顔は、何処か眠たげなのか少し伏し目がちになっていて。

その細く長い腕と脚、手指で口元を隠しながら小さく欠伸する様子はまるで歴史の風景の一枚を切り取ったかのように映えていて。

(あの人……凄く、綺麗……。)

心の中で、思わずそう呟いてしまう程に、そのある意味人外めいた美しさに姫華は見惚れていてしまっていた。


【ポォオオオオオオオーッ!】


「あっ、やばっ。」

機関車の発車の合図に思わず私は我に返る。

姫華は慌てて車内に入る。


様々な人々を、様々な運命の、そして一日の始まりを乗せた路面電車は、出発進行の合図と共に走り出した。

某サイトにてこの作品の序盤のプロット部分をメモ代わりに書いているのですが、この時点で結構元々の原案からはだいぶ変わっている部分があります。

あくまでも書いているのは序盤の方のプロットなので、これからこの物語の結末がどうなっていくのかが自分としても楽しみです。

まあ、ある程度は何となく流れの構想はあるのですがね。

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