復讐2
逢を一瞬のうちに制圧し部屋の中に侵入。
マネージャーが何か対応をとる前に、逢の首元に鋭利極まるナイフを押し当て行動と抵抗の意思を削いだ。
そうしてから逢に結束バンドを渡してマネージャーを拘束させ、次に逢を同様に拘束した。
「君たちは随分と親しいんだね?」
スマホのロックを解除して内部を見るに、やはりただのモデルとマネージャーの関係ではない。2人は幼馴染で、同志的結束の元芸能界を登りつめようと奮励努力しているらしい。
それ自体は大変結構なものだ。手段を選ぶならば。
幸の意図を汲んで逢は殺さない。けれど警告と恐怖が必要だ。二度と今回のような事件を起こさないための。
殺しはしないし、外見上波風を避けるために身体を傷つけることもしない。けれど水責めなら充分に過ぎる苦痛を外見の傷無しに与えることができる。
目に見える傷を与えずに肉体的な苦痛を与える方法というのがあるらしいんだけど、残念ながら具体的な方法を知らないから実施できない。
とは言え一般人相手には水責めでも充分なはずだ。というか拷問だし一般人にじゃなくても多大な威力を発揮するのは疑いようがない。
逢と、それから逃亡を防ぐためにマネージャーを風呂場に引っ張っていく。
ここからは幸の家で男にやったのと変わらない。大きめのタオルを被せ、その上から水を注いでいく。この時頭を下に傾かせて水を鼻や口から注ぎ込むと気管の咽頭反射で肺から空気が放出されるから即座に溺水状態に追い込める。こうすることで手っ取り早く溺死する感覚を与えられる。
そう言えばなぜ幸の家を襲た男にはこうせず、ただ寝かせただけにしてしまったかのか。あの時冷静でいたつもりで、案外取り乱していたのかもしれない。
たっぷり二時間は責めた。逢は息も絶え絶えで抵抗する一切の気力を喪失していた。これでもう変な真似はしないだろう。
次はマネージャーだ。こいつが男に具体的な手引きをした。
「君には死んでもらう」
逢の外見を傷つけることだけ避ければ良いわけで、またマネージャーが死んだところで一般社会には影響が無い。つまり幸の芸能活動にも支障は無い。
「いいかい?君は自殺するんだよ」
マネージャーに向き直り窓の外を指差す。地上15階。落ちれば確実に死ぬ。
マネージャーの顔は蒼冷め、逢は何やらタオルの猿轡越しに声を張り上げ必死に首を横に振る。
硬直して動かないマネージャーに続ける。
「お前が飛び降りないっていうんならもっと直接的な手段を採る必要がある」
言いながら逢の髪の毛を掴んでマネージャーの方に顔を突き出す。
「まず爪と肉の間に針を突き刺してみよう。相当痛いぞ。それが終わったら今度は爪を剥ぐ。鼻と耳を削ぎ落として歯も抜いてやる。それが終わったら指を一本一本折ってやる。脅しだと思うか?」
どうだね?そうした方が良いか?と首を傾げて尋ねて見れば、マネージャーはゆっくりと窓の方へ向かう。
逢は顔を蒼ざめさせながら、どんな裁きでも受けるからそれだけは止めてくれと必死に懇願し、喚き、マネージャーを制止しようとする。濡れた髪を振り回す様は、さながら悪鬼の類い。
「よく見ておけ。お前の軽挙妄動が生み出した結果だ」
アゴを掴みしっかりとマネージャーの方を向かせた。
マネージャーがフラフラと危なげな足取りでベランダに出る。ふちを掴み、最後に振り返り逢に弱々しく微笑みかけた。
「愛してる」
柵を乗り越え姿を消した。数秒後、大質量の水を地面へ叩きつけたような音が聞こえた。人体の70パーセントは水分ということがよくわかる。
「いやー、私もさすがにこの音は初めて聞いたよ」
この上なく絶望している逢には届いていなさそうだった。パチンと頬を叩いて意識をこちらに向けると最後に警告する。
「このことへの復讐なんて考えるな。次はない。もしまた何かやったらお前の祖父母、両親、兄家族と妹家族、子供含めて根絶やしにする。全員をお前の前で殺す。そんで最後にお前を殺す」
多分私が恋した殺人鬼がより適した題名ではなかろうかと最近思ってるんですよね。というわけで完結したら題名を変えようと思います。