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破れた夢

 帰ってきてから、私はソファーに沈み込んだ。清華の言葉に悪意も、その他特段の意味もないこともわかってる。


 清華にとっては何気ない一言だったけど、私の心に深く抉り込み、鉛のようにどんよりと心の中にわだかまっていた。


 『見た目以外に誇るものがあるのか』


 要約すればそんなようなことを清華は言った。


 無い。より正確に言えば、あったが無くした。


 私には夢があった。幼少期から私は父の経営する美術館に入り浸っていて、美というものに並々ならぬ関心があった。それで将来は私も何か、美に関わるような仕事をするんだって夢見てた。


 転機は父に連れられて行ったバレエの公演だった。白鳥の湖の演目の時、優雅に舞うバレリーナを見てこれだと確信した。私の直感は強烈にこれだ!と叫んだ。これだ。私はバレリーナとして美を追求する!



 そのために小学校一年生に相当する年齢からロシアに所在する名門の学校に所属した。毎学年上がるための試験があり、不合格なら即退学になる。


 厳しくても好きだから、夢だから愚直に頑張り続けた。たまに親が見学に来てあまりの痛々しさに驚いていたけど私は気にしなかった。


 それでも13歳あたりから努力だけじゃどうにもならない部分が出てきた。元より名門とだけあって要求される水準は高かった。


 同期に集うのは秀才ばかり。私だって厳格で公正な入試を突破したのだから一般からすれば素養を備えていた。けれどそれは最低限でしかなかった。


 段々とレッスンに着いていくのが難しくなった。体力はなんとか持った。けど体の動かし方、その技術は同級生に明確に劣っていた。


 涙しても捻挫しても足をテープでグルグル巻きにしても私は頑張った。憧れだったから頑張れた。けど最早努力だけでは立ち並ぶ才能に敵わず、要求される水準にも達しなくなっていった。


 14歳、中学二年生に相当する年。進級試験はなんとか合格したものの、成績は最下位。最低点だった。努力が教師に認められて温情で通過させてもらったようなものだった。


 だから15歳、中学三年に相当する年にとうとう不合格を突き付けられたのも不思議ではなかった。


 良いタイミングだったとも思う。ちょうど中学から高校への変わり目。私は知人のいない日本へ逃げるようにやってきた。


 昔日の華やかなりし日々ばかりを偲ぶのは現在からの逃避に他ならず、中々に健全ではないと自覚はしてる。


 とは言え、他に代わるべきものがない。夢は所詮夢でしかなかった。


 モデルというのは即席で虚栄心を満たしてくれて、かつ美の追求という私の情熱にもある程度応えてくれる便利なものだった。


 正直に言おうか?以前ショップで私のファンだって中学生の女子にあった。お小遣いだっていう一万円を握りしめてあなたのように綺麗になりたいですって言ってた。


 笑っちゃったよ。自らを綺麗にしようという意識は立派だけど、ならまずは髪とか整えようよって。あなた新しい服買う前にその服の皺を除去した方が良いよ。


 その子は何やらおしゃれそうな服を着ていて、小物もまあファッション雑誌で特集されるような派手なやつ。まったく似合ってなかった。不協和音てやつ。


 結局着飾りたいという意識しかなくて、ただ雑誌で見たような服と小物なんかを揃えるだけ。


 まあ端的に言えばファッション業界のカモ。中学生で一万円ていう大金を用意できるから中途半端に勘違いしちゃってたんだろう。自分は美容に気を遣ってるって。


 実際は誰かが作り出した流行に流されてるだけなのに。


 もっとも、流されてるというのは自分もそう。ここ数年、対処療法的に外聞を飾り付けてきただけの私に芯となるような事柄などない。私は時流に無思慮に身を委ねてる。


 ああ、だから清華は私、というかファッション業界を鼻で嘲ったんだろう。見た目ばかり華やかでまるで実がないから。さぞかし空虚に見えただろう。


 いや、これも私の被害妄想に過ぎないだろう。表面ばかり見てきたから深層を見る目を失った。


 今私がかつての夢みたいに執心するのは清華だけ。それで、果たして清華はこの空洞の私を好きになってくれる?


 大きく大きくため息を吐くとより深くソファに沈み込んだ。


前回の後書きでジャイアントソーセージシュニッセルの話したじゃないですか。あれ書いてるときに店員さんにAre you still fighting?(まだ戦ってる?)って聞かれて。うーんやっぱりファイトと称するくらいにはデカいのかなって。なんとか無事食べきりました。


なんか最近文章うまく書けないんですよね。具体的には心情とか情景とか。何が言いたいかと言うとこの話もまた後日修正するかもしれないってことです。つまり現状この話は無修正。モザイクないよ。やったね!

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