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壁ドン

 「何で?」


 夕飯から戻って私の家。私は清華に詰問していた。清華を壁際に追い詰め、左右を私の手で塞いで逃げ場を無くした。


 もっともこれが清華相手にどれほど効果があるのかは非常に怪しい。何せ清華は1対10で10人を一瞬で倒した過去がある。


 間違い無く武力じゃ勝てない。なんなら私が清華に勝てるのは金と社会的ステータスと身長と胸くらい。……え、何それ悲しい。


 ともかく、私が憤然としているのは清華がお風呂に入らないと言い出したからだ。


 私はグイと清華の腕を取ると浴室に連れて行った。


 「ほら、もう沸いてるんだよ!」


 私は出掛ける前に湯沸かしをオンにしてた。大体この時間に帰ってくるかなーって考えてて、正にその通りの時間通りに帰ってきた。自分でも自身のエスコート能力の高さにビビる。


 あと見てこの浴室!綺麗でしょ!壁は黒の大理石でシックな感じを醸し出してある。浴槽は日本の一般家庭より大きい、ってアパートの販売業者が言ってた。あと入浴剤とバラの花びらも用意した。バラの花びらなんて初めて買った。


 どう?めちゃくちゃオシャレでしょ?入りたくない?私はそれらを指し示して無言のうちに清華に示す。


 けど清華うーん……、て感じ。オシャレなのは認めるけど、でも、みたいなイマイチ煮え切らない態度。


 どうやら風呂に入らない、という結論ありきの状態に思える。


 それでふと思い返したみたんだけど、清華ってプールの授業に参加してなかった。ひょっとして身体にコンプレックスか何かある?


 「プールの授業、欠席してたのも同じ理由?」


 清華は静かに首肯した。


 一緒にお風呂入るのは諦めたけど、何か釈然としなくてプクーッと頬を膨らませた。これ中々便利な感情表現で、怒ってることは伝えられるけど、表現が幼稚だからそれによって相手に不快感を与えることはない。


 清華は弱ったように笑った。けど微笑んでいるのに、目だけは確固たる不動の意志を宿していた。


 元をただせば、ただ自分が勝手に清華と一緒に風呂に入るのだと張り切ってただけにすぎない。


 けどなんか納得いかない。だから八つ当たり気味であるのを承知の上で清華に抱き付いた。せめてこれくらいは受け入れろと。


 すごい良い匂いがした。香水とかの作られた匂いじゃない。人間が生まれ持った匂い。すごい落ち着く。


 清華はどうしたものか困っていたけれど、私の為されるがままにされていた。


 「送るよ」


 一通り匂いを嗅いだ私は家まで送ることを申し出た。これで清華の家を知っちゃおうってワケ。

 

 ところが丁重に固辞されてしまった。


 「私の方が強いから」


 そう言われてしまっては何も言えない。それで私はマンションの入り口まで見送った。

 

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