第9話 帰宅
2日入院していた文華だがようやく帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいた……」
「何落ち込んでるのよ?」
「いや……またここに帰って来れるとは思わなかったから……」
「次やったら追い出すからね。」
「分かった……」
流石に落ち込んでいた。そして明日からバイトだ。
「じゃあ明日からバイト行くけど明日は土曜日だし普通に行くけど授業の日はその前に帰ってくるから夕食用意しといてね!」
「分かった。勉強もほどほどにしとく。」
私は怒ってたけど、まぁ安心もしてた。何とか回復してくれた事に……そしてまたここに帰ってきてくれた事に……私は文華が帰るのかと思ったからだ。私に迷惑をかけたからと帰る可能性があったのだ。だけどここに帰ってきてくれた。それがとても嬉しかったのだ。
「えっ?な、なに?」
「なんとなくよ。」
私は知らず知らずのうちに文華の頭を撫でていた。
「今日は講義午後からだし、お昼食べたらまた出かけるけど、しっかりクーラーつけて勉強する事、いい?」
「うん、分かった……今日は何か食べたい?」
「魚系で!ここ最近お肉多かったし、たまにはさっぱりしたものがいいわ。」
「分かった……じゃあ夕方買ってくる。」
「無理な時は連絡して、帰り道で買ってくるからさ。」
「うん、無理はしない、無理だったら連絡するよ。」
「……ずいぶん素直になったわね。」
「これ以上は迷惑かけられないから……」
「別に半分は私の監督不足だったわけだし、ただ文華も体調悪いなら言ってくれると助かる。それなら一緒にいてあげられるし、大事にならないもの。」
「……理子は……私の事嫌いなんじゃないの?」
「嫌いよ、でも、本当に嫌いなら一緒に住むはずないでしょ?」
「じゃあ……好きなの?」
調子に乗ってたので髪をボサボサにしてやった。買い物行く時に苦労するといいわ。
午後の授業を受け、帰っていると早苗から声をかけられた。
「一緒に帰らない?」
「いいけど?早苗は自転車だよね?」
「うん、だから駅までね。」
私は了承して2人で駅へと向かった。
「最近理子変わったよね?」
「何が?私は特に変わらないよ?」
「うーん……私も何が変わったのか分からないけど……でも、変わったと思う……少し柔らかくなった気がするな。」
「私そんなツンツンしてた?」
「雰囲気はツンツンしてたかな?ここからは絶対入ってくるな!ってオーラがあったよ。」
「そんなオーラ出してないし!」
私は早苗の言葉を真っ向否定したが、早苗は引かなかった。
「出してたよ。でも、悪い人じゃなさそうだから友達になったんだけど、正直怖かったよ、2人きりではとても居られないくらいには……」
「……そういえば、2人きりで帰るのは初めてだよね?」
「今更!でも、今の理子となら普通に帰れると思ったから話せて良かったよ。」
「うん……もしかしてあの2人も?」
「ううん、あの2人はそんなこと思ってなかったみたいよ。桜は気の合う仲間が居て良かったって言ってたよ。」
「あー、桜は私と同族だからね。」
「桃華はおっとりしてるけど良い傾向だよねって言ってたからたぶんよく見てるんだと思うよ?」
「あの、いつそんな話してるの?」
そんな深い話をいつしてるのか、私がいない時だろうけど気になった。
「えっ?だってここ2日は授業終わったらさっさと帰っちゃってたじゃん。桃華はやっぱり男が出来たんだ。って言ってたよ?」
文華の件で早く帰っていた事で話が膨らんでしまったらしい。とりあえず後で文華の頭をまたボサボサに撫で回す……
「そういえば、バイトはどう?」
「うん、ぼちぼちかな?」
まだ行ってないが、行った風に装うしかなかった。
「そっか……」
「……嘘よ、まだ行ってない……用事がいろいろあってね。」
今の感覚は嘘がバレバレなのを見抜かれてある感覚だ。何かに裏切られた様に思われた感覚……ならば素直に白状するのが良いに決まってる。
「やっぱりね。彼氏出来たの?」
「出来てたらお金稼がないといけないから行くでしょ?まぁ遅かれ早かれ知ることになると思うから言うけど、ルームシェアみたいな事してるの。」
「彼氏と?」
とりあえずベッドロックをかけてそっちから意識を外させた。
「幼馴染よ。中学までは一緒だったけど高校から離れて、つい先日会いに行ったら引きこもりになってたから引きずり出してルームシェアしてるのよ。」
「そうだったんだね。それで何でバイト行ってないの?」
「その子が熱中症になって入院して今日退院したのよ。だから明日からバイト開始なのよ。」
「そうなんだ……隠す必要ないと思うんだけど?」
「私が知られたくないのよ。いろいろと面倒だから!」
「でも、知ってた方が理子の家に遊び行った時に困らないと思うよ?」
「遊びくるの?」
「家出する時はお願いしたいなー。」
早苗からは絶対出てこないと思ってた言葉が出てきて驚いた。
「はぁ?なんでそんな事なるのよ?」
「ならないとは限らないよ?それに桜も桃華も遊び行きたいって言ってたし、そのうち行くと思うよ?」
「こういう時、一人暮らしは損だよなー……おっと、そろそろ駅だね。」
「そうだね。じゃあまたね。」
そこで私たちは別々に帰った。でも、話せて少しスッキリしていた。
なお、その帰り道に買い物してた文華と偶然会いそのまま帰ってきた。そしてまた文華の頭をボサボサにした。文華は……
「なんで!?」
と騒いでいたが私は無視して撫でまわしたのだった。
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