第74話 見送り
私が帰ると文華は最後の追い込みをしていた。私が帰ってきたのも気づかずただただ机に向かっていた。
「文華、ただいま」
「…………」
無言だった。無視ではない。本当に聞こえてないんだ。明日の試験に全力を掛けてる。オーラが違った。間違いなく過去1の集中を見せてる。
「ふーみーかー!」
「……えっ?」
私は後ろから思いっきり抱きついた。すると体が予想してたより熱かった。
「……文華、アンタ熱出てない?」
「えっ?だ、大丈夫だよ!たぶん……」
「とりあえず熱測ってみ。」
私は体温計を取ってきて文華に渡した。そして熱を測ると37.0度の微熱だった。
「はぁ……おかゆ作ってあげるから食べたら今日は少し寝なさい。明日が本番なんだからね。」
私は文華をベッドへ寝かし付けて台所に行った。冷やご飯と卵が残っていたから卵がゆにして少し刻みネギを添えた。
「ほら、出来たよ。食べれる?」
「うん……」
「食べたら寝なさいよ。」
「うん……」
どこか話を聞いてない文華、普段ならビンタくらいするが明日は試験で微熱もある人にそんなことするわけにはいけないだろう。
「私お風呂入ってくるから食べてなさい。」
「うん……」
20分くらいして上がってくるとお粥を食べた後ベッドに座ってボーっとしてる文華がいた。
「ほんとに大丈夫!?文華!文華!」
「はっ……あ、うん大丈夫よ。」
「ほんとに?今から病院いく?夜間病院なら開いてるよ?」
「大丈夫だから……ごめんなさい。考え事してて……」
「試験のこと?」
「うん……ここまでやってきたけど……やり残した事はないかって不安になるの……」
去年の今頃、確かに私もそうだった。何かやり残した事があったんじゃないかって……考えるとどんどん負の連鎖が始まってしまう。
「そうよね。2回目とはいえやっぱり不安は残るよね。よし、今日は一緒に寝てあげよ。」
「いいの?」
「どうせ私が見てなかったらまた机に向かうでしょ?それなら私がいた方がいいでしょ?」
「……ありがとう。」
私は桜が使ってた布団を持ってきて文華の部屋に敷いた。
「久しぶりね、一緒に寝るの。」
「うん……落ち着く。」
「そう、じゃあ寝られるね。朝は何時に起きるの?」
「7時に起きるよ。大学は近いから……」
「うん、じゃあ朝ごはんは作るからゆっくり寝て良いわよ。」
「ありがとう……」
そこからは少しの沈黙の間が続いた。
「寝た?」
「まだ……」
時間は0時を回っていた。そろそろ寝ないと流石にまずい。
「!!」
「これで眠れる?」
私は文華の手を握ってあげた。
「昔からこうすれば眠れたでしょ?眠れるまで握っててあげるから安心しなさい。」
「覚えててくれたんだね……」
「ほんとね……文華は昔から手がかかるんだから……」
「優しいよね……昔から……」
「……それはたぶん……文華だからだよ。」
「私だから……?」
私はポツリ、ポツリと言葉をゆっくりと紡いでいく。
「たぶんね……目が離せないんだよ、昔から……目を離すと厄介事を持ってくる……嫌になる時もあったし面倒くさい時もあるけど……結局また目が文華に向いてた……」
「理子……それって……」
「はい、考えるのはおしまい……もう目を瞑って寝なさい。朝までは手を握っててあげるから……」
そのまま文華が寝るまで私は手を握っててあげた。私は翌朝6時に起きて朝食の準備をした。そして文華を7時に起こして朝食を食べさせてから送り出した。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
文華の姿が見えなくなったのをみて私は……部屋に帰って二度寝した。結局3時まで自分が寝付けなかったのだ。なので文華が帰ってくるまで私は爆睡したのだった。
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