第6話 連休最終日
朝起きると横に文華がいた。初めての体験だ。寝顔が少し幼く見えたのはおそらくいつもは力が入っているからだろう。力を抜けば年よりも若く見えてしまう。
「ほんと、顔は可愛いのになー……」
「……にゅ……」
「ぷっ……」
不意打ちの寝言に吹き出してしまった。やばい可愛い!狙ってないだろうけど今のは可愛かった。
「私ももう少し寝ようかな……」
時計は7時を指していた。明日からまた学校なのだから別にいいだろう。そう思い私は再び寝ることにした。しかし次に起きたのは……
「12時……」
「あっ起きた、おはよう」
「おはようじゃないよ!なんで起こしてくれないのよ!」
「起こしたよ。でも起きなかったんだよ。あと少しって……」
私は額に手を当てて反省した。
「……分かった、明日からは叩き起こしていいから起こしてね。」
「いいの?」
「じゃないと遅刻するでしょ?」
「でも、肝心な時はちゃんと起きて行くでしょ?」
「何よ、その信頼は……とにかく起こして!」
「うん……分かった……」
私は本当に分かったのかと思った、でも、少し気になる事がある。
「ちなみに文華はいつ起きたの?」
「えっ?6時だよ?」
「うそ!寝てたじゃん7時に起きた時寝てたよ。」
「うん、私の顔は可愛いとか言ってたね。でも、不意打ちの『にゅ』で笑ってたの分かったよ。」
私は照れた。そしてそのあと文華の頭を撫で回した……力一杯!
「髪ボサボサなんですけど……?」
「誰が悪いの?」
「理子……」
「なんてー?もういっぺん言ってみてーー?聞こえなかったーー!」
私は文華のほっぺたを摘みながら聞いてみた。
「いらい!いらいです!私がわりゅかったでしゅ!」
「分かればいいのよ。それより、遊び行こう!当分は遊びに行けないんだから!」
「今から……?」
「そうよ、あと半日あるんだから!」
「半日は家にいたい……」
「根暗め、いいから行くわよ!学校で体育がある理由は体を動かす事で脳をリフレッシュさせるためなのよ。散歩くらいでも効果あるんだから行くわよ!」
私の力説で渋々動いた文華だった。そして私たちが来た場所は……
パコン!
「よっしゃー!ストライク!」
「すごーい!」
ボーリング場だった。徒歩10分の距離にあるここは先月からよく来ていた。
「ほら!次は文華の番よ!」
「えっ?私……やった事ないんだけど……」
「いいから、転がしてみなよ。ピンが倒れると楽しいから!」
「倒れなければ楽しくないんじゃ……?」
「いいからやる!やらないと分からないでしょ!」
「……うん!」
まぁ1番軽いボールだからストライクは難しいだろうけど、でも、倒す喜びを得られればいいと思った。
「5本倒したよ!」
「良かったわね。」
「次は全部倒したい……」
「じゃあ残りを倒して来て、2回投げられるから。」
「そうなの?ても、さっき理子は一回しか……」
「私は一投で全部倒したから終わったの、残ったら2回投げられるのよ。」
「そうなんだ……よし……」
気合い入れてるがなかなかに難しい配置だった。真ん中に4ピンと右端に1ピンスペアは難しいだろう。そして案の定……
「あっ……えっ?」
「あー、ガーターだね。真っ直ぐ投げないとすぐに曲がるからね。仕方ないよ。私もやるし。」
「うぅ……倒したかった。」
「あはは、意外と負けず嫌いだね!あと9フレームあるんだから楽しみなさい!」
「うん!」
その後は適度に楽しんで笑って悔しがってをした。スコアは私が84点文華は35点だった。
「……」
「初めてでしょ?そんなもんよ。」
「また来る……」
「負けず嫌いだなー……ほら、夜ご飯食べたら帰るわよ。」
「うん……」
ボーリング場を出て手を繋いで歩いていた。
「何食べたい?」
「なんでもいい……」
「帰って作る?」
「腕が上がらない……」
「あはは!そっかそっか!じゃあ家では食べられないものにしよう!」
「家では食べられないもの?」
「あー……手間がかかったり片付けが面倒なのを外で食べようって事よ。」
「じゃあ……グラタン食べたい。」
「確かに冷凍はあるけど普通に作るにはオーブンないと作れないものね。よし、行こうか、ファミレス!」
「えっ?ファミレスなの?」
「だって、この辺でグラタンの美味しい店とか知らないもん!」
「……もしかして何を選んでもファミレスの可能性……あった?」
「……そんなことないよ!」
「目……そらさないで!」
私たちはファミレスで夕食を食べて帰った。帰り道は2人でコンビニに寄ってみた。ファッション誌やおやつを買って帰る。まだ未成年なのでお酒は買わない。
「理子はファッションも勉強してるの?」
「うん、でも、今回は文華用かな……」
私は普段ボーイッシュ系の服やアクセサリーを見ている。だけど今回は髪型や綺麗系に用のファッション誌だ。それはもちろん文華の為だ。
「私の?」
「もっと似合う服たくさんあると思うんだよね。でも、私その辺りは守備範囲外だからさ。一度勉強して文華にやってみようと思うのよ。」
「……ありがとう……なら、私も勉強する。一緒に!」
私は一瞬驚いた。ファッションに興味のない文華が学びたいと言ったのだから。恐らく私と勉強がしたいのだろう。私と一緒がいい。ただそれだけの為に……
「分かった、じゃあ2人で勉強しようか。」
「……うん!」
その日の夜は2人でファッション誌を見ながらよく笑って夜更かしをした。数時間寝たらまた日常が帰ってくるのだ。だから今は2人だけで楽しむのでした。
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