第53話 母
「お疲れ様でした!」
私がバイトを終える頃にはもう辺りは暗くなっていた。地面は濡れていて蒸し暑い。
(傘……いらなかったか……)
私は昼に買っていたビニール傘を片手に帰宅した。
「ただいま」
「あっ、おかえり早かったね。」
私は桜の頭を思いっきり叩いた。
「何でいるの!帰ったんじゃないの?」
「いてて、いきなり引っ叩かないでよ。だって荷物取りに来ないといけないじゃん。私まだここに荷物置いてたし。」
「なんで持って帰ってないのよ!」
「いや、決裂したらまた厄介になるし……またちょこちょこ泊まりに来ようかなと。」
コイツはまったく……
「仕方ないわね。それで何か作ったの?」
「お寿司持ってきたよ!」
テーブルにはまさに彩りの魚介類のネタがあった。絶対高いやつだ。
「ちょっ!これいくらしたの!?」
「気にしなくていいよ。私の両親からだから!」
「いや、気にするわ!こんな豪華なお寿司見た事ないもの!」
「理子……早く食べたいから早く手を洗ってきて!」
文華はもう食べたくて座って待ってた。ここまで食に貪欲な文華も珍しい……私は手を洗ってうがいをして戻った。
「いただきます!」
「いただきます!」
「はい!召し上がれ。」
「うにうま!」
「エビ美味しい!」
「文華は昔から甘エビ好きだったよね。」
「そういう理子はうに好きだよね。」
「2人とも互いの好物知ってるのね……」
「そりゃーそれなりにはね。この子昔わさびが辛いの知らなくて回ってるお寿司食べてびっくりして泣いたのよ。」
「そうだったね……理子は食べすぎてプリンアラモード食べられなくて泣いてたよね。」
いきなり報復がきた。油断してた。私が文華の過去を知ってると言う事は逆もまたしかり……文華が私の過去も知ってて当然なんだ。
「2人とも昔から仲良かったんだねー」
「……まぁ親同士仲良かったからね。」
私たちの両親は何故か仲がよかった。もともと知り合いでもなかったのに年も違ってるのにだ。
「文華は聞いてる?ウチの親と文華の親がなんで仲良いのか?」
「知らない……だけど会った時からよく理子のお母さんの話してたかな?」
「へぇー……」
「逆に理子のお母さんは何も言ってなかったの?」
「言ってなかったわねー。私の前で言ってなかっただけかもだけど。」
私が小学生の頃、文華とはまだ仲が良かった頃でも文華のお母さんの話は聞いた事なかった。もしかしたら私の知らない所で話していた可能性があったのだろうか?
「まぁ私は知らないわね。知ってどうするって話だしさ。」
「……理子の家って仲悪いの?」
桜の疑問に文華も頷いた。話し方からしたらそうなるよね。
「仲は悪くないよ。ただあんまり干渉しないだけ。」
「へぇ、ウチとは真逆なんだ……」
「確かに桜の親とは真逆かもね。ウチは放任主義だからね。」
「ウチの親も少しは見習ってほしいよ。」
「……どうだろうね……?」
私はポツリと呟いた。その声は2人にも聞こえない声量……私もなぜそんなことを呟いたのかわからない。
「どうしたの?理子?」
「ん?あぁ、大丈夫!食べよ食べよ!」
私は気を取り直してお寿司に手を伸ばしたのだった。
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