第36話 久しぶりの夜
「じゃあ一旦お邪魔しました……」
「はい、またいつでも来て下さい。」
「じゃあ明日ね!」
扉が閉まると一瞬静かになる。そしてドアに鍵をかけ一旦リビングへ行き座る。テストも終わり私は今日の昼過ぎからバイトだ。文華は明日の昼間に模試があるので勉強している。
「お茶でも淹れようか?」
「うん、お願い。」
前より少し柔らかい性格になったと思う。文華もゆっくり成長しているのだろう。前は自信なさ気で私の後ろに隠れる事も多かったが今はバイトもする様になって良い傾向になった。
「明日が模試だよね?」
「うん、あと少し頑張る……」
「そうね……じゃあ頑張ってね。私はバイト行ってくるから。」
「うん、ありがとう……行ってらっしゃい!」
私は準備してバイトに向かった。そしてこういう日に限って遅くなってしまった。
「ただいま!ごめん、遅くなったわ。文華夕ご飯先に食べてた?」
私の声に返事をする人はいなかった。いや部屋にはいる。その証拠にエアコンは付いてる。しかし声がない。つまりはそういう事だ。
「文華ー……あっ……やっぱり……」
文華は机に突っ伏して寝てしまっていた。起こすか起こさないか迷ったが流石に起こすことにした。この様子だと夕ご飯も食べてないのだろう。だけど起こすのは後にした。私は文華の肩にタオルケットを掛けてやって夕ご飯の用意をする。時刻は18時10分。19時には食べられるはず……いつも作ってくれてるし明日は文華が模試だ。今日くらいは作ってあげる事にした。
「よし、作るか!」
私はお米を研いでその後炊飯器にいれた。その間にお味噌汁を作りつつ、サバをグリルで焼いていく。そしてこの間大量に買って来られたお漬物を切っておく。あとはご飯が炊ければ出来上がりだ。はや炊きにしてるからすぐに炊ける。その間は動画でも見て待つ。そしてたまに時計を見て文華を起こすタイミングを見る。
「そろそろ起こすか……」
私が文華を起こしに行くとまだ寝ていた。軽く肩をさすってあげると起きた。文華は目を擦りながら不思議な表情をしていた。
「???……おかえりなさい?」
「なんで疑問系なの?ただいま。夢の中でも何か解いてたの?」
「……わからない……」
「そう、じゃあ顔を洗ってきなさい。もうすぐ夕ご飯できるからね。」
「……私……もしかして寝てた?」
「……そこから!?いいからとりあえず顔を洗っておいでよ。」
私は起こした後にテーブルの片付けをし始めた。昨日まであらゆる所に教科書、参考書が散らばっていたけど文華が片付けてくれたのだろう。
「ありがとう……私の仕事なのに……」
「いいわよ。ここ最近寝ずに勉強してたんでしょ?なら、私はテスト終わったし、バイトも17時半までだったんだから私が帰ってやっても文華に罰は当たらないよ。」
「理子……」
「ほら、夕ご飯食べたらまた勉強するんでしょ?今日は後少し頑張って寝なさい。」
私は文華の頭をわしゃわしゃと撫でまわした。何処となく照れてる顔はなんか面白かったが黙っておく事にした。
「ほれ、ご飯炊けたらすぐ夕ご飯食べるよ。」
「うん……」
撫でるのをやめたら少し残念そうな顔をしていた。意外と表情豊かな子なのだと知った。
「あっ……」
「ん?どうしたん?」
「……明日頑張る!」
「うん、頑張れ!」
再び柔らかい笑顔になった。それを見て私は何か笑ってしまった。
「あはは!文華は可愛いねー」
「えっ……?」
その後文華の顔が少し赤くなった……照れてるみたいだ。その時ようやく炊飯器の炊き上がりの音が流れた。
「炊けたね。さぁて10分蒸らして混ぜないと。文華はお皿出しておいて私は鯖の塩焼き出来てるから少し温めて持っていくわ。」
「は、はい!」
そこからはテキパキと動いて準備を進める。そして準備が終わって2人で夕ご飯を食べ始める。
「いただきます!」
「いただきます!」
食事の時は勉強の話はしない私たち2人の時の約束、その日あった事や見た動画の話をする。
「久しぶりに2人きりだね。」
「そう……だね。」
「なんか緊張してる?」
「してないよ?なんで?」
「顔が赤いから」
「ン〜〜〜!」
恥ずかしそうにしてる文華を見てまた笑ってしまう。結局ゆっくり食べてゆっくり片付けた。2人で……そして23時には2人で寝た。
「試験前日に23時に寝るの……初めてかも……」
「そうなの?」
「うん……でも不思議……落ち着いてる……今までは何をやっても足りない気がしてたのに……なんでだろう?」
「知らないよ……やる事やったからじゃない?」
「……ねぇ、手握っていい?」
「やだ!寝返り打てないじゃん。」
「お願い、私が寝るまででいいから……」
「私が先に寝たらどうするのよ?」
「その時は……朝まで?」
ペシッ!
とりあえず1発おでこに軽く平手打ちした。いい音がしたからもう一回やりたい。
「痛い……」
「いいから寝ろ!」
私は反対を向いて寝た。すると今度は服を摘んでくる。
「…………」
無言の圧力は時に怖い……
「あー!もう分かった!ほら手貸して。」
「ありがとう!」
私は向き直って頭を撫でまわした後に手を握ってあげた。
「ほら、これで満足?」
「うん、寝るまで……お願い……」
「まったく……甘えん坊め……」
とは、いえ私の方が今日はクタクタなので先に寝てしまった。だから結論として翌朝まで手は握られたままだった。
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