第28話 発破
大学から帰ると文華が神妙な面持ちで話しかけてきた。
「理子……あのね……」
「ん?どうしたん?」
「私……実家に帰るね……」
「ふぅーん……いつ帰るの?」
「明日……」
「急ね……で、いつ帰ってくるの?」
「帰らない……」
「はい?」
私は一瞬時が止まった感覚に陥った。
「はい?なんで?」
「迷惑かけるから帰って来なさいって言われたから……」
「……あっ、私のアパートに戻らないという事だったのね……いや!どっちにしろ驚くよ!はぁ?文華のお母さんどうしたのよいきなり?」
私は色々と勘違いしていた事で文華は少しだけ笑ってくれた。
「と、とにかく……私から連絡してみるからちょっと待ってて!」
私は急いで文華のお母さんに電話をした。
「あっ、もしもし!理子です。」
「あら、理子ちゃん?どうしたの?」
「あの、文華の事で……」
「あー……気にしないでいいのよ。やっぱり1人暮らししてるのに文華がいたら迷惑でしょ?だから帰って来るように言ったから!」
「いやいや、迷惑なんかじゃないですよ?むしろ毎日楽しんでますから!」
「あら、そうなの?でも、あの子には帰って来て貰いますよ。」
「なんでですか⁉︎困るんですけど!」
「何が困るのですか?」
「帰って来て文華がいないのは困るんです。今までは寂しくなかったけど、今は寂しいんです。一緒に食事するのも楽しいです。まだ文華の良い所を見つけてる最中です。なのでまだ待って下さい!」
自分でもスラスラと言えた事に驚いた。そして文華の母さんはというと……
「なんだ……結構仲良くやってるのね……文華に代わってくれるかしら?」
「は、はい……」
私は一度文華に電話を代わった。そして少し話していた後、また代わった。
「ごめんなさいね。あまりに心配だったからもしかしたらご迷惑をおかけしてると勝手に思い込んでしまっていたわ。」
「あはは……」
電話直後の対応とは全然違って普通に笑っていた事に驚いた。私もから笑いするしかなかった。
「でも、文華にたまには連絡くらいしなさいと伝えて下さい。そちらに行って2ヶ月全く連絡ないのだもの……また1人で悩んでるのかと心配になってしまうわ。」
「あぁ〜それは納得ですね……」
後ろで「何納得してるの?」という声が聞こえたが無視する事にした。
「わかりました。とりあえず来月の期末テストが終わりましたら帰りますのでその時に交えてまたお話ししましょう。」
「いいわね。じゃあ楽しみにしてるわ。」
それで電話は切れた。そして一息吐いた。
「どうだった……?」
「文華、少しは連絡しなさいよ。心配してたわよ。」
「たって……楽しかったから……」
そう言って貰えるのは嬉しいが……だが、それはそれとして……
「それでもたまには連絡しなさい。」
でも、少し気になる事がある……
「どうしたの?怖い顔になってるよ?」
「そんな事ないけど?さ、夕飯にしましょう!」
気のせいよね?
その頃文華の実家にて……
「どうでした?理子の考えは?」
「ええ、いろいろ聞けて良かったです。」
そこには私の母と文華の母がいたのだ。どうやら私に発破をかけたらしい……
「あの子素直じゃないけど何か大事が起こると素直になるのよ。」
「それが今回の作戦ですか?」
「そうよ、こうやって発破をかけてたまに自分の本心を言わせる様にすれば理解していくわよ。あの子が文華ちゃんの事をどれほど好きなのかね。」
母さんはいつもこうやって私を窮地に追い込む……そして私に素直な選択をさせて来た。そのおかげで人生であまり後悔はない。
「これは今年中にくっつくかもね。」
「そうですかね?」
「そうなれる様にサポートするのよ。私たちでね!」
親も親で考えてくれてる様だった。なお私たちはこの事を全く知らないのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新もお楽しみに!
面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。




