第26話 平穏
「いやー、食べた食べた!ごちそうさん!」
「どういたしましてこの野郎!1月分の食費の約半分を食べやがって……」
私は小春と文華と一緒に焼肉屋さんに来ていた。食べ放題にする予定が普通の焼肉屋さんに小春は入りやがった。高級店に行ってたら間違いなくそこでしばらくタダ働きだっただろう。
「あの、ありがとうございました……」
「ん?良いって良いって!アイツらの事知らないけどさ、弱い者いじめする様な奴らを私も仲間なんて言いたくないもの!」
「じゃあなんで引き入れたの?」
私の素朴な疑問に小春は普通に答えた。
「別に過去の事は変えられないけど未来は変えられるでしょ?なら私たちが更生すればいい。結局のところ暴力をする奴らは暴力でしか従わないわけじゃん?まぁそれで変われば良いけど変わらなければそれまでよ。海の藻屑になってもらうか、警察に行ってもらうかどちらかになるわ。」
「私からすると甘いと思うんだけど?」
「まぁね。文華さんみたいにいじめられていた人からすればたまったもんじゃないわね。ただ……」
その時小春の目が鋭くなった。
「私たちは正義の味方ではないのよ。自分の味方であって他所様を守る気は一切ないわ。いじめられるのが嫌なら強くなれば良い……じゃないと大切なものを壊されてしまう。理子は分かるんじゃないの?私の言ってる事がよく……ね?」
間違ってはいない……現に小春は虐待されていた。それを打破する為に強くなった。そして私は……
「ほら、今度は理子の家でなんか作ってよ!」
「まだ食べるのーー!?」
結局ホットケーキを3枚食べた後、この前買った業務用アイスを1人で食べてしまって帰った。胃袋は完全に化け物だ。
「小春さんとは友達なの?」
「あれは友達じゃない……貧乏神よ……」
私は家計簿に出費の合計書きながら伝えた。今はそのくらい言ってもバチは当たらないだろう。
「…………」
「……そんな顔しないの!友達よ、一応ね。」
何か言いたそうな顔をする文華のおでこを突いて私はちゃんと訂正を入れた。
「ただ最初から仲が良いわけではなかったのよ……」
「そうなの?」
「まぁね。朝は朝で遅れてくるし、人の弁当のおかずは盗るし、それで殴り合いにもなったかなー……」
その話を聞いた文華は顔を青くしていたがこんなの序の口だ。他には職員室で暴れたりもしたし、授業中だってお構いなしだった。
「なんでそんな事を?」
「子供だからよ。単純な理由よ。」
「子供?」
「力の強い者が全てを肯定される。そんな教え方をされてたのよ小春はね。」
「だから私に負けたままだとお金や人権も奪われるんじゃないかってビビってたらしい。」
「そんなの……おかしいよ……」
「おかしいわよ、あの子それでご飯もあまり与えられなかったらしいわ。だから最後は私に力負けしたわ。」
「それでどうなったの?」
「うちに晩飯誘った。」
「えっ?他には?」
「それだけよ?あの子は安全にご飯が食べられるそれだけで良かったのよ。その為に暴れてたみたいだから腹を満たしてあげたわ。」
「そのあとは……?」
「学校やめて親とも縁を切ったわよ。で、しばらくはうちにいたけどいつの間にかアパート借りて出て行ったわ。でも、今でもあの時の食費として数万円うちに送ってるわ。この前帰った時もあったし。」
「そうなんですね。怖い人だと思ってましたが……そんな事ないのですね。」
これだけ聞くと確かにまともそうだ。でも、小春は……
「怖いわよ、あの子は?」
「えっ?」
「レディースの総長だもの。喧嘩も強いし、仲間を守る為なら普通に殴り合いもするわよ。あの子にとってはあのグループが大切な家族なのだからね。」
「そうですよね……家族なんですよね……」
「血が繋がってなくてもそれよりも濃い何かで繋がってるのよ。きっとね。」
私もはっきりとわかるものではなかった。ただそれは確かにあのグループを繋げてるのだと思った。
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