第15話 お泊まり会2
私たちが帰ってくると桜まではシャワーを浴びていた。
「今早苗?」
「うん。あ、プリン出来てたよ!」
「何で知ってるのよ?」
「タイマー鳴ったから確認したからよ。」
「そう、それで冷やしてるの?」
「ううん?まだ何もしてないよ?」
桃華が普通に答えてきた。
「えっ?取り出してすらいないの?なんで?」
「だってねー?」
「取り出すならみんなで見たいじゃん。」
分かるけど……それで大丈夫なのか私には分からなかったから隣の文華をみた。
「大丈夫だと思うよ?少し焦げてるかもだけど……」
「とりあえず開けてみようか……」
私たちは炊飯器を開けてみた。中には大きなプリンが出来ていた。
「甘い匂いするね。」
「うん、まずは保温を切らないとね。周りが少し焦げてきてる……」
文華は保温を切った。そして蓋を閉じた。
「あれ?なんで閉めたの?」
「ひっくり返すの時はみんなで……って言ってたから。」
「あー、そっか……じゃあ早苗が上がってくるまで待とう。」
「うん。」
少し待っていると早苗が上がってきた。髪にタオルを巻いて出てきていた。
「先にお風呂頂きました。」
「はーい、待ってたよー!」
「あっ、おかえりなさい。ん?何を待っていたんですか?」
「これよこれ!」
私は炊飯器を指差した。それを見た早苗は察してくれた様ですぐに髪の毛を乾かしてくれた。そして炊飯器の中の釜を持ってみんなのいる部屋に持っていく。
「それじゃあ……いくよ!」
私と文華で釜を持ち上げると桜が茶々を入れてくる。
「初めての共同作業です。」
「……桜の分は少し少なめでよさそうね。」
「何でよ!いいわよ、きっと早苗か桃華、文華ちゃんが分けてくれるわよね?」
その瞬間全員顔を背けたのは言うまでもなかった。もちろん私も目を合わせない。なぜならスイーツだからだ。スイーツはみんな好きなのだ。大きく貰えるならそれは嬉しい。そこに友情などない。
「それじゃあ改めて……せーの!」
掛け声と同時に釜をひっくり返した。すると釜と同じ大きさのプリンがドーンッと現れたのだ。
「おおー!少し焦げてるけど綺麗にできてる!」
「やね!今度私も実践してみようかな?」
「早く食べたいですねー……」
「ダメよ、理子と文華ちゃんがシャワーを浴びてきてからよ。それに一回冷やさないと!」
早苗が早く食べたいという桃華を静止しつつ、私は一旦冷蔵庫に巨大プリンを直した。
「じゃあ文華先に入ってきなよ。私は後でで良いからさ。」
「えっ?2人で入らないの?」
「桜さーん?あの狭い風呂場でどうやって入るのかな?」
「うぎゃあああ!グリグリやめて!」
苦笑いを浮かべながらも文華はお風呂場に向かった。文華もこういう時は素直に言う事を聞いてくれるようになった。押し問答しても無駄だと知ってるし、時間の無駄だと分かってるから。
「はぁ……つかれた……」
「それはみんなが帰った後に言うセリフですよ、でも……お疲れ様でしたね。」
そう言って早苗が私の肩を揉んでくれた。そして桃華が質問して来た。
「理子は何で文華さんが嫌いなのですか?」
「それ思った!なんでなの?」
「普通に話しやすいですし、少し陰がありますけど可愛い女の子ですよね……」
3人の言う事はもっともだ。だけど私にも言い分はあるのだ。
「小学校低学年からあの子はよくいじめられててねー……それをずっと守ってきた。それを中3まで……自分の好きな事より友達のいないあの子を優先してた。でもさ、そんなのおかしくない?私には私の人生があってあの子に振り回されるのはうんざりだったのよ。」
「……それが嫌いになった理由?」
「そうね。しかも趣味も合わないし話も合わなかった。それで高校は別々になって久しぶりに会ったら引きこもりになってた。私しかもうあの子を外に連れ出せないから今はこうして2人で暮らしてる。」
私の話を黙って聞いてた桃華と桜と早苗だったが桜が口を開いた。
「でもさ、それって理子も悪くない?」
「そうですね。本当に嫌いならほっとけば良いものをわざわざ火中の栗を拾う様な事をしている様にしか見えませんよ。」
「仕方ないじゃない、私しかあの子を守れないんだから!」
3人は目を見合わせて笑い出した。そして……
「過保護だなー」
「過保護ですねー」
「過保護だね……」
「まぁ……でも……」
「「「愛だねー……」」」
「なんでそうなるのよ!愛なんてないから!」
「いやいや、もう気づいてるでしょー?じゃないと同棲なんてしないって!」
笑いながら桜は言う、そして2人もうんうんと頷いていた。
「うるさいわね!文華は私が見てないと無茶苦茶するから近くに置いてるの!そこに好きとかの感情はないの!分かった!?」
「はいはい。分かった分かった。」
空返事の3人に私は食いつこうとしたがその前に文華が上がってきたのでこの話はここまでとなった。
「いい、文華に余計なこと言わないでよ!特に桜!」
「余計な事ってなんなの?」
真顔で聞かれて私は一瞬怯んだが気を取り直して答えた。
「私の事をよ!」
「はぁー……はいはい。早く入ってきなさい。戻ったらトランプの続きするわよ。」
呆れた感じで言われた。流石に私もムキになり過ぎたのかもしれないが謝らない。たぶん私は悪くないはずだから……
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