第14話 お泊まり会
少し時間ができたので文華のメイクを見にきたらやはり想像以上の美しさになっていた。
「やっぱりこうなるよね……外でさせなくて良かったわ。」
「私ではこの程度しか引き出せませんでした……」
桃香はかなり落ち込んでいるがそれでもかなり美人になっていた。少し目が大きく見えるし、それでいて口紅の光沢も綺麗だ。
「いやいや、美人じゃん!これ女の人からも惚れられるんじゃない!?」
「そうだよね。理子にはもったいないくらい美人です。」
「早苗、なんで私が出てくるの?」
とは言え、美人であることには変わらない……化粧で女は変わるというが本当だったと改めて思った。
料理も出来たところでテーブルの上を片付けてから料理を運んだ。そして……
「乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
私たちはジュースを飲んだ。お酒は二十歳になってから……二十歳になっても飲めたらだけどね。
「唐揚げ美味しいね。」
「普通に揚げただけだけど?」
「たぶんだけど、理子の家の味付けが良いんだと思うよ。」
「なんで文華が知ってるのよ?」
「だって教えて貰ったから……理子のお母さんに、子供の時だけど理子もその通りに作ってるんじゃない?」
私の知らないところでなんで教えてるのかな?あの母親は……だけどじゃあ何が違うのだろう。
「理子の家はお肉に味を染み込ませてから揚げるって言ってたからたぶん普段より濃い味になってるから美味しく思えるのかも。」
「あー、確かにお店のだと少し薄いと思うことあるかな……でも、そこまで変わるかな?」
「そこはわからない……調味料にもよるのかも。」
「でも、美味しいならいいじゃん!じゃんじゃん食べよ!」
「桜はもうちょい野菜たべましょうね。」
「そういう桃華もポテトパイと唐揚げばかり食べてないで他のも食べなよ。」
「ジャガイモは野菜ですよ?」
桃華も屁理屈を言うのだなぁーと私は思った。普段はあまり冗談など言わないのにお泊まり会という状況から少しテンションが上がったのかもしれない。
「いいから食べなさい。生野菜も食べないとダメだぞ!」
「桜は私のお母さんですか?」
「いいからちゃんと食べなさい!」
桜は桃華の皿に生野菜を盛り付けると嫌な顔をした。どうやら野菜嫌いらしい。
「嫌いな物を無理に食べさせるのはよくないと思います!」
「好き嫌いしないで食べるのが大人だと思うけど?」
2人で喧嘩してる中早苗が口を挟んだ。
「じゃあドレッシングかけたら?」
「ドレッシング?」
「少し食べやすくなるし、試してみたら?」
「確かにいいね。ごまドレなら食べやすいし、いいかも!」
桃華は少し嫌そうな顔をしていたけど早苗には桃華も逆らえない様で素直に言う事を聞いていた。
「あっ、少し食べやすいかも……!」
「おっ、良かったじゃん!ほれ、ドンドン食べなー。」
わんこそばみたいに食べさせてたけどまぁ本人が良いならそのままにしとこう。
「食べ終わったわね。何か甘いもの食べる?」
「作れるの?」
期待して聞いてきたのは桜だった。だがそんな期待を思いっきり裏切る。
「買いに行くのよ。近くのコンビニに。私が作れるわけないでしょ?」
「それもそうだよね。期待した私がバカだったわ。」
はっきり言われると腹が立つ……が反論もできないためにスルーしたら文華が立ち上がった。
「牛乳と卵……砂糖もある……ならプリン作れますよ?」
「文華、流石に材料があってもうちには蒸し器がないよ?」
「炊飯器で作れるよ?作るから先にシャワーを浴びてて下さい。」
私はみんなを見渡した。すると3人とも頷いて了承してくれた。
「じゃあ私たち最後でいいから3人は順番に入ってきてよ。」
「おっけー!じゃあじゃんけんで決めよ!」
しかしこのじゃんけんに待ったをかけたのは早苗だった。
「桜さん、ここはせっかくですし時間をかけましょうよ。」
「おっ、という事は何かあるのかな?早苗……」
「はい!折角なのでトランプ持ってきました。なのでババ抜きで決めましょう!」
「いいねいいね!お泊まり会だね!じゃあシャッフルお願い!」
「早苗って意外と遊び心あるわね。私も勝ちにいくわよ!」
「あの、私友達とトランプするの初めてで新品のを持ってきたんです!」
「マジで!?じゃあ私らが初めてじゃん!ならさならさ!理子と文華ちゃんも一緒やろーよ!」
この人はなんでトランプしようとしてる理由を忘れてるらしい、そして私たちが何してるのかも……
「アホか!そしたらプリン誰が作るのよ!」
「じゃあ蒸すところまで待ってるから一緒にやろうよ!」
これはもう断れないのでサクサクと進める。どうやら炊飯器の保温機能を使うらしい。詳しい手順は省くが炊飯器はいろんな料理が作れるみたいだ。
「これで後は炊飯器を保温にして待てば出来るはず……」
「はずって……やったことなかったの?」
「うん、初めて……前に動画みて今度作ろうと思ってた。」
「そう、後これだと1人分にならない?」
「分けて食べれば良いと思うよ?1人でこの量は無理だから。」
「ごもっともで……」
保温を押して3人が待つリビングに行くともうカードは配られていた。
「んで、何やるの?」
「7並べになったから上がった人からシャワー浴びるということで!」
「ほうほう……じゃあ最下位の人罰ゲームってどう?」
「おっ、いいね!じゃあドベの人はコンビニまでアイス買ってきてもらおうか!」
「今からプリン食べるのに?」
「甘いものは別腹でしょ!」
「それもそうね!じゃあはじめようか!」
「私……やった事ない……」
私たち4人は一斉に文華を見た。
「えっ?嘘だよね?」
「大貧民ならわかるけど……」
「7並べは割とメジャーな方だよ?」
「文華……トランプした事は?」
「お母さんとババ抜きくらい……」
そう言えば昔から人と関わらなかったからこういう大勢でのゲームもした事なかったのだろう……
「じゃあ最初は私と組もう。みんないい?」
「「「う、うん!」」」
3人から了承を得て私と文華での2人チームになった。文華のカードは4人で仲良く分配してスタートした。私の持ち札はよくも悪くも普通だった。
「これってどんなゲームなの?」
「おっと文華に教えないといけなかった。最初に全ての7のカードを出すの、そこから7の隣になる6と8を出す、そこからは5,4,3,2,1と出していくの。8以降も9,10,J,Q,Kって出して最後までカードを持ってた人の負けになるの。もしくはパスを3回使い切った人も負けになるから気をつけてね。」
「今回はパス5回までね。パス負けとかつまらないからさ。」
桜からのルールにみんな頷いた。そこからは心理戦が始まった。無口にカードを吟味し出していく。先に上がったのは……
「初めて1番で上がれました!」
桃華だった。という事で1番最初にお風呂に入って行った。次に上がったのは桜だった。
「2番目かー……せっかくなら1番が良かったなー……」
そして私と早苗の一騎打ちとなった。とは言え勝負はもう着いていた。
「早苗……いつまでハートの4を止めてるの?」
「私の勝ちが確定するまでです!」
「そう、じゃあ私もスペードのJは出せないわね。」
「出さないなら良いですよ?その後ろのKも出せませんからね。」
結局今負けして私たちは負けた。そして雨が上がった夜道を2人で歩いているのだ。
「ごめんなさい……私のせいだよね?」
「何言ってるの?こんなの時の運よ。」
「でも……」
「でもはなし!せっかくだしこれも良い思い出じゃない!そして次こそ勝つわよ!」
「う、うん!」
そしてお泊まり会はまだまだ続きます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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