第1話 嫌いなあの子
私は王鷹理子、今年から女子大生だ。どちらかと言うとボーイッシュな感じで陽キャというやつだ。
そして私には同棲してる子がいる。どちらかというと嫌いだ。だけどほっとけないから同棲している。名前は姫鷲文華
「おかえりなさい理子、夕飯作ってるから食べてね。」
「文華……あんたまた食べない気ね!またぶっ倒れるから一緒に食べるわよ!」
「……今の私はそんなの食べてる余裕ないの……」
私は文華の腕を掴んでこっちへ向かせる。そして頬に平手打ちを打ち込んだ。
「この家では私の命令は絶対のはずよ……分かったら一緒に食べるわよ。」
「はい……ごめんなさい。」
とは、言え1人分しか用意してないから半分にして食べる。全く困った子だ。
なぜこんな関係なのか……それは二月前に遡る。
「大学合格おめでとう!」
「ありがとう!みんなも志望校受かったんだよね?」
「うん!めちゃくちゃ勉強したもん!」
高校の友人達は志望校を無事合格していた。その後打ち上げをし、卒業……晴れて春からは大学生だ。サークルに恋愛に勉強……やりたい事は山積みだった。そして春からは一人暮らしを始めた。実家は近いけどこれも社会勉強の為とバイトして家賃を賄う予定だ。
一人暮らしを始めて1ヶ月……ゴールデンウィークに私は実家に顔を出した。
「あら、理子おかえり。」
「ただいま母さん。」
「なぁに?もう一人暮らしが寂しくて帰ってきたの?」
母の言う事はズバリ的を得ていた。今回1人でアパートにいるのが寂しくて帰省したのだ。だが素直に言うほど私は素直ではない。
「そんなわけないでしょ?たまには顔を出さないと心配するから私なりの親孝行よ。」
「あっそ。そう思うなら良い成績取って早く就職してちょうだい。」
「耳が痛いな……」
私は自室に荷物を置いてくる。そして一階に降りて麦茶を飲んでいた。すると母さんが私の前に座った。こういう時は大体大事な話になる。
「理子、姫鷲さん覚えてる?」
「うん……覚えてるよ?なんで?」
私はその名前に少し眉をひそめた。理由は簡単、嫌いだからだ。
「あの子、今引きこもりらしいの……」
「まぁあの性格ならね。」
「素っ気ないわね。昔はあんなに仲良くしてたのに。」
「だって、全然ソリが合わないんだもん。しょうがないでしょ?」
そう、私たちは全くソリが合わない。私の得意科目数学、理科、体育に対してあの子は国語、社会、家庭科だ。性格も私と違って根暗だし、気も小さい。だからすぐにいじめられる。そしてそれが目に入る私はいつもあの子をいじめてた奴らを殴り倒してた。だからいつの間にかあの子の隣には私が居た。中学までは……
「高校から疎遠になったんだよね?」
「そうよ。まぁもともと理系文系で合わなかったし、お互いにとってのベストな進学よ。」
正直心配ではあった。私がいないと周りに流されるしすぐに変なのに絡まれる。でも高校生にもなってそんな事言ってられない。私には私の人生があるから……
私がテーブルにあったお菓子を食べていると母さんから不意をつくような事を言われた。
「理子、文華ちゃんに会ってきたら?」
「……はい?」
私は母さんの言葉を理解できず固まって一拍置いて疑問系の返事をした。
「どうせ暇でしょ?今からなら夕飯まで時間あるし。」
「冗談よしてよ!もうあの子も大人よ⁉︎何で大学生にもなって同級生のお守りなんかしなくちゃいけないのよ!」
「あらあら……やっぱりそんなふうに思ってたのね……」
「ぐっ……ええ……正直小学生の頃からソリも合わないし、話してる事も面白くないし、一緒に遊ぶのも文華に合わせてた……ただ……顔は可愛かったから……遊んでただけよ。」
「ふぅーん……それだけの為に文華ちゃんの側に居てあげられてたのかな?」
何か言いたげだが、私にとってはそれだけが唯一の報酬だった。文華の笑顔も普通の顔も少しブスッとした顔も愛おしかった。ただ泣き顔だけは絶対見たくなかったのだ……
(あれ?何で泣き顔の記憶がないのだろう?)
「ほらほら、それならその可愛いお顔を見て来てあげなさい。」
母さんに促されて私は家から追い出された。
(仕方ない、行くか……)
私は重い足取りで文華の家に向かった。
インターホンを鳴らすと文華の母さんが出た。
「はい、どちら様ですか?」
「あ、あの、王鷹です。お久しぶりです。」
「えっ?理子ちゃん?久しぶりね!待ってて開けるから。」
「は、はい……」
私が外で待っているとすぐに扉が開いた。
「まぁー、いつ以来かしら?3年ぶり?」
「そうですね……」
あまりにも久しぶりだったので私も覚えていなかった。恐らく中学卒業後一度も来ていない気がする。
「文華に会いにきてくれたの?」
「はい。元気してるかな?って……」
「そう……でもごめんなさいね。あの子……部屋から出て来ないの。もう1ヶ月近くも……」
「1ヶ月……何かあったんですか?」
「受験……失敗しちゃったのよ。」
「そうなんですか……」
「ええ、滑り止めも受けて受かっていたのだけど、行かなかったのよ。その理由を聞いても答えてくれなくて……次第に部屋から出て来なくなってしまったわ……」
それを聞いた私は少しムカついた。なので文華の母さんに提案してみた。
「では、私が引きずり出してきます。」
「えっ?無理よ。鍵かけてるから……」
「……窓ガラス代は弁償します。だから良いですか?」
私の言葉に何をするのか察してくれた様で文華の母さんは首を縦に振ってくれた。
そうして家に上がると文華に最終通告をした。
「文華!いるんでしょ!出てきなさい!」
私の言葉に文華からの反応はあった。
「理子……?」
「そうよ、久しぶりね!」
「何しに来たの……?」
「何って……心配で……」
「嘘!どうせ頼まれてきたんでしょ⁉︎無理に優しくしないで!」
初めて文華が叫ぶのを聞いた。そしてこれは敵意剥き出しだ。
「はぁ……半分正解よ!だけど久しぶりに会いたくなったのは本当よ。」
「じゃあ何で3年間も会いに来てくれなかったの⁉︎私の事迷惑だったんでしょ⁉︎嫌いだったんでしょ⁉︎もう……ほっといてよ……」
「はぁ……このドア……開けてくれない?一目見たら帰るから……」
「やだ!帰って!2度と来ないで!」
私は一度階段を降りた。そして文華の母さんに先に謝った。そして……
ドンッ!!
私は文華の部屋のドアを蹴破った。ガラスを割るのも良かったけど……すぐに引っ叩きたかったから最速の方法をとることにした。
「えっ……?」
驚いてる文華に近づいてまずした事は
パチンッ!
ビンタだった……
「初めてね。文華を引っ叩いたのは……」
「うん……なんで……」
頬を抑えながら文華は聞いてきた。
「ムカついたから!そのウジウジしてる所が!昔から嫌いだった!私の得意科目以外全て優秀なのも気に食わなかった!」
「それなら……それならなんで来たの⁉︎そんなに嫌いなら来なければいいじゃん!」
「そうよ!来たくなかった!でも、文華が引きこもりになってるなんて聞いたら来るしかないじゃん!私以外に文華を引きずり出せる人いるの⁉︎」
「い……いないです……」
文華の返答に勝ったと誇っていると次は容姿を改めて見た。それに私は再び怒りが再燃する。髪はボサボサで前髪は目元まで伸びていたし、肌もあちこち毛穴が開いていた。
「それに……何よこの髪に肌は!何も手入れしてないじゃんか!」
「えっ?それは……私の勝手じゃ……」
パチンッ!
とりあえずビンタして黙らせる。そして次に私が取った行動は……
「今すぐ美容院いくわよ!着替えて!早く!30秒以内!」
「は、はい!」
私は部屋を出て文華の母さんに2人で出かける事を伝えると文華の母さんは泣いて喜んだ。伝えた後私は行きつけの美容院に予約を入れた。時間は19時からの予約になったからそれまでは私の家で待機する事になった。私は文華が逃げない様に手を繋いで家に向かった。
「母さん、ただいま!」
「おかえり、あれ?もしかして文華ちゃん?」
「お、お邪魔します……」
「あらあら……随分大人っぽくなったわね……」
「母さん、今日夜ご飯文華と食べてくるからいいや。」
「あら?2人でお出かけ?」
「うん、これから文華を美容院連れて行くからね。予約も19時からになったからさ。遅くなるよ。」
「そう……」
「ご、ごめんなさい……迷惑かけて……」
「いいのよ。2人で楽しんで……」
「ほんとよ!女の子なんだからせめて顔くらいは手入れしなさいよ!」
「こら!理子!なんて事言うの!」
「母さんは黙ってて!これは私と文華の話なんだから!ほら、文華部屋行くよ!」
「う、うん……」
私は文華の手を引いて自分の部屋に入った。
「はぁ……ほら、座って!ある程度見れる様にしないと……」
「う、うん……」
私は自分の化粧道具を取り出した。
「ほら、目を瞑って、化粧するから!」
「えっ?私……化粧なんて……」
「だから私がやるんでしょ?ほら、目を瞑ってて。」
「う、うん……」
私は改めて文華の顔を見た。そして思った。手入れはしてなくてもやっぱり私好みの好きな顔だと……そしてテキパキとお化粧していく。そして……
「うわー……これはこれは……」
「えっ?なに?何したの?」
私は戸惑う文華に鏡を渡した。鏡を見た文華は驚いて声が出てなかった。
「……これが……私?」
「ちょ、化粧落とそう。じゃないと周りに変な虫が付いてしまう!」
「えっ?虫?なんで?」
「美人すぎるから男が群がるんだよ!こういう普段の時には普段のメイクがあるんだよ!」
私はとりあえず開いてる毛穴を隠す程度の化粧にしといた。
「文華はもともと美人なんだからお手入れちゃんとしなさい!」
「めんどう……」
「あぁん?」
「ごめんなさい……」
私たちが話していると部屋のドアがノックされた。入って来たのは母さんでその手には飲み物があった。
「文華ちゃん、ジュース持って来たよ。」
「えっ?私のは?」
「アンタは麦茶よ!」
「なんで?」
「さっきの文華ちゃんへの態度への罰よ。じゃあ文華ちゃん、ゆっくりして行ってね。」
「はい……」
私はこの怨みをどう返してやろうかと考えながら麦茶を飲んだ。文華はジュースを見つめていた。
「あの……理子……半分こしない?」
「……はい?」
文華が何を言ってるのか理解できなかった……が、思考がようやく追いついて理解した。
「私のはもう飲み干したんだけど?」
「いいよ。昔みたいに半分こしたいから。」
「まぁ……そういうことなら……」
「うん……」
ストローで飲んだジュースが麦茶の味をかき消すかと思ったけど実際には甘いのと麦茶の風味が混ざって微妙だった。そして文華はというと、そのままストローで普通に飲んだ。まぁ文華は普通に美味しいのだろう。
「じゃあそろそろ行こうか。」
「えっ?早くない?」
時刻は17時だったから文華が言いたい事もわかる。
「軽く何か食べておかないとお腹空くわよ。」
「……うん……そうだね。」
再び文華の手を握って家を出た。家を出る時には一応行って来ますを言って……
「行って来ます!」
「お邪魔しました!」
文華と街中を歩いているのは新鮮だった。
「あの……手……離して……恥ずかしい……」
「ダメよ。離したらたぶん変なのに絡まれるからね。」
「そんな……もう18だよ……流石にもう……」
「そう……」
私は手を離した。そして前を歩いていると……
「ねぇ、君遊ばない?」
案の定男に絡まれてた。私は間に入る。
「はーい、この子私の連れなのよ。ごめんね。」
「へぇ……じゃあ3人で遊ばない?いいお店知ってるんだ!」
「すいませんが今からみんなで遊ぶんで……あとこの子彼氏いるからね。アメフト選手の彼氏がね!」
「うっ……そ、そう……じゃあまたね。」
男は引き攣った顔で去って行った。嘘も方便。それに自分より強い男の女に手を出したらどうなるかなんて男ならばよく分かってるはずだ。
「もう!だから言わんこっちゃない!ほら行くよ!」
「うん……ありがとう……」
再び私は文華の手を握って歩き出した。また変な男に声をかけられても困るから早めに美容院にいく事にした。
「いらっしゃいませ!あら、理子ちゃん!久しぶりね!で、その子ね……今回のお客様は?」
「そうでーす!この子の髪を整えてくれる?ロングで黒でいいから傷んでる毛先をなんとかしてあと前髪も整えてくれるかしら?」
「ふむふむ……確かに小顔だし、肌も白いから黒髪ロングはいいけど……でもあんまり手入れはされてないわね。」
「そうなんですよ!だから肌は私がなんとかするので髪の方をお願いします!」
私は仲のいい店員さんに文華を預けて待合室で待っていた。そして約1時間後に終わった。髪は綺麗に整えられていて、まつ毛や眉毛も綺麗になっていた。こうして見るとやはり美人だった。
「この子顔が整ってるから眉毛とかも整えたよ。」
「ありがとうございます!私がやるより断然良いです!流石プロですね!」
「もっと褒めてくれてもいいよ!」
などと話していたら文華がおどおどしだしたので店を後にした。
ここまで読んで頂きありがとうございます!久しぶりの連載になります。またお世話になります!よろしくお願いします!
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