【高松宮記念2024】後編
※この物語はフィクションです。実際の人物、固有名詞、その他とは一切関係がありませんし馬券を18歳未満も購入することができるという世界観です。
「外れたな……」
「うん、外れちゃったね……」
高松宮記念2024、俺の本命ルガルは一着ではなかった。
っていうか途中からどこに行っちゃったんだろう。中盤くらいまでは先頭集団の中にいたように見えたけれど、気が付けば姿を消していた。
やはり中京の左回りが合わなかったのか、雨で足場が悪かったことが影響したのか、理由は何であれ3着以内にさえ入っていなかった。
それにしても一番人気になるとは思っていなかった。人気し過ぎだって。素直にメイケイエールちゃんの馬券を買ってくれよ。引退レースだぞ。……まあ、残念ながら9着だったけど。
「……外れたか……」
「気にしないで、博徒。私が年齢を誤魔化してソープで働けばそれで済む話だから。処女じゃなくなっちゃうかもだけど……」
「いや、諦めるのはまだ早いぜ」
「え?」
そのとき、見覚えのある黒ずくめの男たちが僕らに近づいて来た。
「よお兄ちゃん。500万、きっちり返してくれるんだろうな?」
「…………」
「まさか返せねえなんて言わないよな? どうなんだ? 返せねえようならお前の網膜でも片方貰おうじゃねえか。ああ?」
男が俺に詰め寄ってくる。
自由島は今にも泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「……返せるさ」
「なんだって?」
「返せるさ、500万! 耳を揃えてな!」
俺は男に向かってスマホを見せた。
「な――払戻金、『5222600円』だと!?」
「そうさ。ルガルの単勝と合わせて阪神12Rの「4歳以上2勝クラス」3連単(11―12―9)を2000円分買っておいた。払い戻しは5222600円! 500万円、きっちり返させてもらうぜ!」
「な、なんだってーっ!?」
「やったあ! ありがとう博徒!」
自由島が俺を抱きしめ、俺は自由島の胸に顔をうずめることになった。
や、柔らかっ! めっちゃ良い匂いするっ! それどころか窒息する! パイ圧で圧死する!?
黒ずくめの男たちは苦々しい顔をしながら舌打ちをして、どこかへ姿を消した。
とにかく俺たちの勝利だ。
自由島の処女は守られたのだった。
「良かったな、自由島」
「うん! 博徒のおかげだよ。……やっぱり私、博徒のことが好き!」
「よせよ。照れるだろ」
俺が言うと、自由島は恥ずかしそうに俯きながら小声で言った。
「ねえ博徒、今日うち誰も帰ってこないの。これから暇だったらさ……」
※
結局それは徹夜で神経衰弱のお誘いだったのだが、もちろんそのおかげで俺の精神も衰弱してしまったのだが、とにかく数日後、ビットコイン詐欺にハマった自由島が数百万の借金を作ってしまうことを俺はまだ知らない。
というか、今回の勝ち分から500万円返すと残額は20万円弱。120万と2000円の馬券購入額を考えれば100万円弱の負けか。トホホ。来週の大阪記念まで競馬は引退だな……。
馬券は20歳になってから、ほどよく楽しむ大人の遊びです。
20歳未満の方は競馬法第28条により、馬券の購入だけでなく、馬券を譲り受けることも禁止されています。
また、公営競技はその性質上、必ず利益を得られる催しではございません。
20歳以上の方でも、馬券投票など金銭の授受を伴う公営競技への参加は無理のない範囲でお楽しみください。