【桜花賞2024】後編
「外れたな……」
「うん、外れちゃったね……」
桜花賞2024、俺の本命スウィープフィートは一着ではなかった。
仕掛けるタイミングが少し遅かったのか、最終コーナーを最後尾で回って、そこから追い込んだが4着という結果に終わった。
やはりチューリップ賞のようにはいかなかったか……。
「……外れたか……」
「気にしないで、博徒。私がパパ活で稼げばいいだけの話だから。処女じゃなくなるかもだけど……」
「いや、諦めるのはまだ早いぜ」
「え?」
そのとき、見覚えのある黒ずくめの男たちが僕らに近づいて来た。
「よお兄ちゃん。500万、きっちり返してくれるんだろうな?」
「…………」
「まさか返せねえなんて言わないよな? どうなんだ? 返せねえようならお前の腎臓でも片方貰おうじゃねえか。ああ?」
男が俺に詰め寄ってくる。
自由島は今にも泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「……返せるさ」
「なんだって?」
「返せるさ、500万! 耳を揃えてな!」
俺は男に向かってスマホを見せた。
「な――払戻金、『6509600円』だと!?」
「そうさ。スウィープフィートの単勝と合わせて中山9Rの「印西特別」3連単(1-11-3)を2000円分買っておいた。払い戻しは6509600円! 500万円、きっちり返させてもらうぜ!」
「な、なんだってーっ!?」
「やったあ! ありがとう博徒!」
自由島が俺を抱きしめ、俺は自由島の胸に顔をうずめることになった。
この感触はいつもより弾力が大きい!? ま――まさかノーブラ!?
俺が真実を確かめるべきか否か、確かめるとすれば直で触ってみるしかないか、なんてことを考えているうちに黒ずくめの男たちは苦々しい顔をしながら舌打ちをして、どこかへ姿を消した。
とにかく俺たちの勝利だ。
自由島の処女と俺の腎臓は守られたのだった。
「良かったな、自由島」
「うん! 博徒のおかげだよ。……やっぱり私、博徒のことが好き!」
「よせよ。照れるだろ」
俺が言うと、自由島は恥ずかしそうに俯きながら小声で言った。
「ねえ博徒、今日うち誰も帰ってこないの。これから暇だったらさ……」
※
結局それは徹夜で人生ゲームのお誘いだったが、早々に自由島が寝てしまったので、俺は一人で二台の車を操作しなければならなかった。何億という金を儲けていくゲーム内の自分を見てずいぶん空しくなった。人生ゲームはゲームであって、現実の人生ではないのだ……。
馬券は20歳になってから、ほどよく楽しむ大人の遊びです。
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