生死の境目
「キャハハっ」
「ちょっと待ってよ〜!!」
「お前走るの遅過ぎ〜」
「ちょっと兄ちゃん待って・・・」
かなり破天荒な3歳上の兄貴「けいた」。
臆病で引っ込み思案な私「すず」。
今日も小学生で歩いて20分くらいの距離にある、とても大きな公園で遊んでいた。
昔は山だったところを所々開発して、できた公園だ。
至る所に遊具があったり、座って休めるスペースなど、商業施設はないものの近所の子供や家族が遊ぶようなところ。
そしても今日も、2人が遊んでいた。
「あっなにここ!」
「すず!すず!」
「はぁはぁはぁ・・・兄ちゃん待ってよ。。。」
「ほらすず!こんなところに道があるぞ!」
「はぁはぁ..えっあっ!」
けいたが指す場所には草木で生い茂っているところに小さな通り道があった。
通り道というか小さな通り穴。
大人は気がつかないような感じで、左右の草木で覆いかぶされている。
「ここ行ってみようぜ!」
「えぇ、、、でも・・・怖いよ」
「何言ってんだ!冒険だよ冒険!」
ダッ!
ガサガサガサガサ…..
そう言い放ち通り穴を潜り進むけいた。
「あっにいちゃん。。。待ってよ〜」
ガサガサ…..
こんなけいたにいつも振り回されていた。
ガサガサ…..ガサガサ…..
「にいちゃん。。どこ〜」
「すずこっち〜!」
「どこ〜,,,」
「あっにいちゃん!」
けいたがいる場所は草木がなくなっている少し広いスペース。
周りは2人の身長より大きな草木で囲まれているが、その場所の地面は土になっているようなところだ。
そして・・・
「すずこれ」
「あっ・・・」
そのスペースにひっそりとたたずむのは1体のお地蔵さん。
「・・・」
「・・・にいちゃん、、、怖いよ、、、」
「…すず…びびり過ぎ〜!」
お地蔵さんは木製の小さな社のようなものの中で佇んでいる。
その社はかなり古い感じで屋根などには苔が所々にある。
けど、お地蔵さんはとても綺麗。
たぶん定期的にお参りや掃除などがされているようだった。
だけど、小さな子供からしたら怖い場所。
「にいちゃん、、帰ろうよ・・・」
泣き出しそうなすず。
「泣くなよ〜俺は怖くなんかないから!ほら!」
「ちょっとぉやめなよ・・・」
「こんなこともできるんだぜ〜!」
びたん..びたん
そうゆうけいたが社に登ろうとしたり、お地蔵さんを触ったりしていた。
「ほらほら〜!怖くなんかないもんね〜!」
「あっだめ!!」
ビキ….
バタン。。。
「・・・あ」
けいたがふざけてお地蔵さんを押し倒してしまった。
「・・・」
「・・・」
ぴ~んぽ~んぱ~んぽ~ん
夕方のチャイムが鳴った。
「あっ帰らなきゃ!おかあさ〜んお腹空いた〜」
ダッタッタ
「あっにいちゃん、、、」
1人取り残されてしまったすず。
「でも、、でも」
「….おいしょ」
ダンッ
泣きそうになるのを堪えて、けいたが倒してしまったお地蔵さんをもとに戻した。
「….本当にごめんなさい、、すいません。。」
どうしようもないけど、それだけを言い残しけいたを追った。
ダッタッタ
…
ガサガサガサガサ…..
「すず遅い!」
通り穴を抜けた先でけいたが待っていた。
「にいちゃん酷いよ、、、」
「だってチャイムなったら帰らなきゃだろ〜!お母さんとの約束だし」
「でも、、でも、、1人残すなんて。。」
「ここで待ってただろう〜!」
「そうだけど・・・」
「あ〜お腹空いた〜!」
「・・・じゃあお家まで競争な!」
「あっ・・・」
「よ〜い、ドン!」
ダッタッタ
「もう..待ってよ。。。」
ダッタッタ
これもいつものこと。
2人駆け足でお家に向かった。
~~~
~~
~
スッ
目を開けると、知らない場所に立っている。
「あれ、、、私。。。」
あの後ダッシュでお家に帰った。
そして今日あったことをお母さんに話たり、夕ご飯を食べて、お風呂に入って寝た。
寝たはずだったけど・・・。
「ここはどこ。。。?」
見覚えのない場所に立っている。
戸惑いながらもゆっくり周りを渡すと、少し離れた所に兄ちゃんが立っていた。
あっ
「兄ちゃん!」
パクパク・・・
・・・あれ、声が出せない。
何度も叫んでも音にならない。
「えっ、、、なんで」
うぐ、、、、
訳が分からない状況に泣きそうになった。
すると、遠くにいたけいたが前に歩き出している。
でも意識はなく夢遊病のような感じで。
「あっ、、、兄ちゃん」
それを見たすずも慌てて兄ちゃんに近づこうとするけど、
思うように体が動かない。
動かせはするけど、ゆっくりとしか・・・
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
だんだんと離れていくけいた。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
でも声は出ない。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
ガッ
「・・・え??」
何かに手を掴まれた。
確かに誰かが私の手を握っている・・・
「・・・」
怖くなりながらもゆっくり振り返った。
スゥ・・・・
そこには、手を握る知らないお爺さんがいた。
「えっ・・・・」
手を握るだけで何も話してこない。
だ、、、誰・・・
ぐっぐっ
手を振りほどこうとしても離してくれない。
バッ
振り返るとけいたがさらに奥に進んでいる。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
相変わらず声が出ない。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
振りほどこうと強く腕を振って叫んだ。
ぐっ!
強く握り返された。
「・・・」
またゆっくりお爺さんのほうを向くとゆっくりと口を開いた。
「…」
「あんさんの帰り道はそっちじゃないよ」
「…あんさんはこっちの道」
「・・・・え?」
意味が分からない。
でも、そう言ったお爺さんはけいたが進む道とは逆の道へ。
私の手を握ったまま連れて行こうとしてる。
「いや、いや!」
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
どれだけ振りほどこうとしてもダメだった。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
けいたと離れていく。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
もう、けいたは見えないくらい先にいる。
「兄ちゃん、兄ちゃん!」
スッ・・・・
けいたが見えなくなった。
「あっ・・・兄ちゃん・・・」
「あんさんはこっちの道だよ」
「帰り道はこっちだから間違っちゃだめだよ」
「あっアナタはなんなんですか!」
声が出た。
「・・・」
「ありがとうね」
お爺さんがそう言い放つと辺りが真っ白になり意識を失った。
~
~~
~~~
スッ
ゆっくり目を開けると白い天井。
私の部屋ではないどこか。
「ん。。。。」
「すず!!!すず!!!!」
お母さんが大きな声をあげて体を触ってきた。
「お母さん・・?」
「すず。。。よかった」
「うぅ、、、、」
泣きながら私に抱きつくお母さん。
「お母さん・・・どうしたの?」
「本当に本当によかった。。。」
「あなただけでも目を覚まして・・・」
…
昨日のあの後。
ダッシュで公園を出てお家に向かった2人は交通事故にあった。
2人で信号待ちをしていたところにわき見運転で突っ込んできた車に轢かれたのだ。
事故のとき咄嗟にすずのことを庇おうとしたけいたが強く撥ねられてしまい頭を強く打った。
それで・・・けいたはそのまま目を覚さなかった。
あの時見た光景。
・・・もしかしたら生死の境目だったのかもしれない。
けいたはあのまま進んで消えていった。
そして、あの時手に握り話したお爺さん。
「あんさんの帰り道はそっちじゃないよ」
そして
「ありがとうね」
もしかしたら、あの公園にひっそり佇んでいたお地蔵さんが助けてくれたのかもしれない。
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