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交渉
交渉とはお互いの要求を理解することから始まる。私の要求は速やかに私の部屋から撤退してもうらことであるが、彼の要求はなんだろうか。
「俺には、未練がある」
そりゃ幽霊として存在する以上、未練があるだろう。問題はそれが解決できるか否かである。彼の未練は解決可能な内容であろうか。いや、ちょっと待て、彼の声に聞き覚えがあった。まさか、まさかである。私は問うた。もしやお亡くなりになった、元歌い手 黒岩ライドさんでないかと。
彼は首肯した。やはりそうか。彼は私の推しだった。彼の死に涙したものだった。しかし、大人気の歌い手であった彼の未練とは一体?事態はカオスを増していた。単純に彼を追い出して解決という問題ではなくなった。できる限り、彼の未練を解消したい。なぜなら、彼は私の推しだから。詳細に、彼の未練を聞き出すことにした。
「俺は、追放されたんだ!!」
彼はそう言った。