真昼の音
これは現代社会で不器用さを捨てられなかった
一人の女性の姿
目が覚めると、白く無機質な小さな箱で幾分の狂いもなく
動きをとめない二本の針が丁度真上を向いていた。
何も予定が入っていないのだから一つとして問題はないのだが昼まで目を覚ますことなく眠っていた自身に僅かなやるせなさを感じてしまう。
音のない空間で生活するには長い2年という日刻*が経ったというのに未だ誰かの声がないと心の中で虚しさと孤独が一層膨らみ焦燥感に駆られる、そのためオンラインで購入した馴染みのあるアーティストの楽曲をスピーカーモードにしてかけた。
歌にはこちら側に対する期待もないし、マニュアルのように固定された息の詰まる感覚もない。
知らず知らずのうちに自らの胸の中で大きくなった破片を溶かしてくれるのだ、その度に人付き合いがあまり得意でないことを実感させられる。
遅い朝食に昨晩作り置きをしていたたまごサンドを頬張り、冷めてしまった珈琲を飲み干した瞬間に滅多とならない固定電話から部屋全体に響き渡るような軽快な音が流れる。
表示された名前を見て自然と頬が緩みそっと曲を止めた
「体は変わりないの?ちゃんとご飯は食べられているの?」
その言葉を待っていたかのように部屋の窓から一筋の日差しが冷たいフローリングの床を照らした。
END
*日刻:とき。月日のことを文中では指す。
本作が当サイトにおいて処女作のため拙い言い回しなどが目立つ箇所があるかもしれませんが目を瞑っていただけると幸いです。