第参拾話 壱
キュアライフに向かう道中、何かが起きるのではないかと、警戒していた私たちを他所に、夏の太陽が燦々と輝いている。
「何も起きないね。響希君」
「美穂さん。何か起きたら大変でしょ」
「妖怪と関わりたいよぉ」
「妖と関わると、ろくなこと無いからね」
「でもさ、楽しそうじゃん。ね、桃麻っちもそう思うよね? 華鈴ちゃん、楽しそうにしてるよね?」
急に話を振られた桃麻は、あたふたしてしまい、言葉にならない声を出している。
「えと、華鈴は楽しそうにしてますよ。俺も妖怪と仲良くしたいし、高坂さんと同じ気持ちです」
「そうだよねぇ。関わりたいよねぇ」
照りつける夏の太陽は、空高く。キュアライフに到着した。
「到着したね。何も起きずに済んだ」
「私たちの心配を返して欲しい」
「そうだな。でもまぁ、結界が張ってあるから、ある意味安心だけどな」
入場ゲートを通り、目の前には大きな花時計。
幾つもの種類の花が、色とりどり咲いている。
「僕は見たい所があるから、別行動ね」
「了解。俺たちも行こうぜ、華鈴!」
「俺たちも行こっか。みずき」
「美穂さんは、見たいとこある?」
何故、ここまで来て別行動になってしまうのか。皆で見て回れば良かったのに。
桃麻に手を引かれ、私たちが向かった先は、ローズガーデン。
「綺麗だね。不思議の国のアリスになった気分」
「ここだけ別世界みたいだよな」
「写真撮ろう!」
「オッケー。じゃあ、撮るぞ」
「うん」
カシャ。シャッター音が聞こえ、撮れた写真を確認する。
「お、良い感じじゃん。華鈴の方に送るな」
「ありがと。なんか久しぶりだね」
「久しぶりだったか?」
「桃麻は補習とかあったし、私は紅蓮荘に行ってたりで、中々会えなかったじゃん」
「あー、うん。そうだったな」
「でも、久しぶりだと会えた時が、楽しいよね」
「そうだな。俺も、今日はめっちゃ楽しみにしてた。もう少し見て回ろうぜ」
「うん!」
ローズガーデンを一通り見た後に、背の高いヒマワリの迷路を見つけた。
「挑戦しよう!」
「マジか!? これ、脱け出せなかったら大変だぞ」
「大丈夫! 左手を壁から離さなければ、すぐに終わる!」
「謎の自信、大丈夫かぁ?」
今度は私が手を引いて、ヒマワリの迷路へと突き進む。
小さな子も父親に肩車されながら挑戦していて、なんだか微笑ましい。
あーでもない、こうでもないと、私たちは迷路で迷子になってしまった。
「あれ? 行き止まり」
「それなら、こっちじゃないか? ん? でもここ、さっきも通った?」
「だったら、こっちだね。うん。行こう!」
太陽に向かって咲き誇るヒマワリは、私たちを簡単にはゴールへ導いてはくれない。
「ねぇ、桃麻」
「何?」
「この迷路、ゴール出来たらウサギとふれあおう」
「そういや、ウサギ好きだもんな」
「ロップイヤーとかいるらしいよ。あと大きいウサギ!」
「それなら、早くゴールしないとな!」
「うん。で、ここも、さっき来たよね」
果たして、私たちはこの迷路を脱け出せるのだろうか。




