第弐拾玖話 肆
電車に乗って、揺られること二十分。
まだ青い田んぼが広がり、工業団地を通りすぎていく。そろそろ景色に見えてくる建物は、ビルやマンション等に換わっていく頃。
「そろそろ着く頃だね。桃麻、乗り継ぎだからね? 分かってる?」
「華鈴。俺を何だと思ってる?」
「だって桃麻は、電車の乗り継ぎ、苦手でしょ?」
「お、俺だってな、もう高校生な、ワケですよ。乗り継ぎ? そんなもん、簡単だね。ただ、別の電車に、乗れば良いだけだ!」
強がる桃麻を、私たちを除いた五人は、クスクスと笑っている。
「別の電車に乗るのは合ってるけど、何番線かちゃんと確認しなきゃ。また行き先と別の方に行っちゃう」
「大丈夫だって! これでも、高校の友達と電車に乗って、出掛けたこともあるからな!」
自信満々に言われてもなぁ。どうしたら良いんだろう。
「高森から聞いた話だけど、笹本、反対方向の電車に乗りたがるから、目を離さないようにしてるって」
須崎さんからの、突然のキラーシュート。
これには、桃麻も赤面待ったなし。
「きききき、級長!? 何を、こんな所でぇ!?」
「須崎さんも言ってくれてるんだから、良い? ついてきてね。桃麻」
「へーい。どこまでだって、ついていきまーす」
「ほら、お菓子片付けなよ。あ、ゴミ落とした」
そうこうしていたら、乗り換えの為に降りる駅に到着。
混雑したホームに降り立つと、私は桃麻に手を差し出した。
「はい、桃麻」
「ん? 何? この手」
「手繋ぐの」
「まさか華鈴、そんなに俺とイチャつきたいの? やだぁ、俺のダーリンてばっ!」
「何を言ってるの?」
「え?」
「手繋いでいれば、はぐれないし、乗り間違うこともないでしょ?」
ほんの数十秒ほどの間に、桃麻の表情がコロコロと変わっていく。まるで百面相だ。
いじけた様に口を尖らせた桃麻は、私の差し出した右手を握り、そっぽを向いて歩く。
「僚。このホームで良いんだよな?」
「うん。ここは磐西線のホームだから、合ってるよ」
「磐西線って、乗る機会ないよね。みずきはある?」
「夏休み入ってすぐに乗った。福島に行くのにね」
「福島ぁ!? 何しに行ったの? 誰と?」
「絵師さんたちの展示会が、福島県であったの。でも、新潟県には来ないやつだったから、二人で」
「二人? どこのどいつと?」
「雪村さんと。舜は興味無いでしょ? だから、雪村さんを誘って行ってきた」
「楽しかったね。絵師祭り」
「絵師祭り行ったの!? 専門学校でも行った人何人かいたなぁ。ねぇ、響希君。今度イベントデートしようよ」
「良いね。美穂さんの行きたいイベントある?」
乗り継ぎの電車は、既にホームに停車中。
もうすぐ発車だから、スムーズに予定通りに過ごせそう。




