第弐拾玖話 弐
「お待たせ、桃麻」
「おう、行こうぜ」
トリプルデート当日。家に迎えに来てくれた桃麻と一緒に、商店街を通って、最寄り駅に向かう。
「まだ朝なのに、暑いね」
「夏真っ盛りだもんな。飲み物、買ってく?」
「自販機、この辺無いよ。コンビニまで、まだ距離あるし」
「あれ? 華鈴、知らねぇの?」
「何を?」
「大山スポーツ店の裏にあるんだ」
「ウソっ!? いつから!?」
「前からあるぞ?」
大山スポーツ店の裏なんて、通ることないから、私は知らなかった。
大山スポーツ店の脇から裏道へと出て、初めて知る。
「桃麻はこの辺、よく通るの?」
「友達と遊ぶ時は、この辺通ってる」
「そうなんだ。私なんて、この辺通らなくて」
「まぁ、この辺は、住宅地だもんな。華鈴は何飲む?」
自販機にお金を入れながら、桃麻が聞いてきた。
飲み物なら、自分で買うのに。
「え、桃麻のお金じゃん。桃麻が選びなよ」
「こういう時は、彼氏に甘えなさい」
「えっと、はい……? じゃあ、お言葉に甘えて。この麦茶で」
「これな~。ん」
「ありがとう。桃麻は?」
「俺は、もう決まってんのよ。この、強炭酸レモネード!」
二人でキャップを開けて、「チアーズ!」なんて言いながら。
これはもう、夏の暑さのせいにしよう。
再び駅に向かって歩き出す、私たち。
少しでも涼しくいようと、商店街のアーケードの下を歩いていく。
「華鈴は、宿題終わった?」
「大体終わったよ。桃麻は?」
「俺は終わらせた。先に終わらせて、残りを遊び倒す!」
「アハハ。良い子のお約束だっけ?」
「あ、覚えてた? 小学生の時に、言ってたやつ」
「懐かしいね。確か一年生の時に、ゲーム禁止にされたのが、理由だったんでしょ?」
「そうそう。二年になっても、三年になっても、それが続いてさ。まともにゲームしたの、五年生になってからだったか?」
「長かったねぇ」
「長過ぎだっての! 友達と遊べねぇし、遊んだってさ、皆がやってるの、知らねぇし。最悪だったよ。ったく、どうかしてるんだよ、うちの親は」
なんて愚痴が止まらない桃麻に、相づちを打ちながら、笑ったり。
そうこうしてれば、駅なんてあっという間。
「笹本! 雪村さん! おはよう!」
駅構内に入ると、須崎さんがスマホを片手に待っていた。
「級長、おっはー! あれ? 吾妻さんは?」
「みずきなら、トイレに行ってる」
「おはよう、須崎さん。響希君と高坂先輩、僚君は、まだ来てないんですね」
「そうみたいです。でも、電車の時間までまだあるし」
電車の時間まで、あと十五分。
まだ時間はあるけど、少し心配。もしかしたら、妖関連の依頼でもあるのだろうか。
トイレから戻ってきた吾妻さんも、私たちを見るなり、響希君たちがいないことを理解している。
「おはよう、お二人さん。あれ? 美穂さんも、月島も花里も、まだ?」
「おはよう、吾妻さん。三人は、まだ来てないみたいだよ」
「連絡は来てる?」
「来てないよ。遅れるなら、何か連絡くれるはずなのに」




