第弐拾捌話 結
「こんな部屋、このホテルにあった?」
「地下に、ダンススタジオを造ったんだよ。三年前にさ、新潟のダンスイベントに来た他県のチームが、練習する場所が無くてね」
「へぇ~。そんなことがあったんだ」
「今日は誰も使わないから、思う存分使えるよ」
小谷さんが用意してくれた、特設卓球場。
連絡して、ここに来るまでの間に、用意してくれた小谷さんには、頭が上がらない。
「それじゃあ。フロントに戻るから、何かあったら、そこの電話でフロントに掛けて」
「ありがとう。宏昌」
「ありがとうございます。小谷さん」
さて。この部屋には、父と竹中さんと僕。
だけど竹中さんは、何やら仕事があるらしく、主審がいない。
「点数は、僕が捲っていくので、主審無しでいいですよね?」
「僕は構わないよ」
それでは。僕たちの、絶対に負けられない戦いが、ここにある!
「じゃんけんからですね。はい、じゃーんけーん」
「ちょっと待って!」
「待ちません。ぽんっ」
僕はグーで、父がチョキ。
「僕からサーブで。始めますね。一セット十一点で」
「あーもう! 待って!」
「はい、ラブオール」
ラリーなんて続くことなく、お互いに点を取ったり取られたり。
こんなの、響希が見てたら何て言うだろう。
「はぁはぁ。今、何点?」
「九対八。僕がリードしてます」
「ちょっと休憩しない?」
「イギリスでもやってたんでしょう? こんなんで、息上がってるんですか?」
「今年いくつだと思ってるの? もうアラフィフよ?」
「じゃあ、一セット終わったら、休憩で」
そして、続かないラリーによって、デュースにもつれ込む、僕たち。
「よし! もう一点取れば、僕の勝ち!」
「はいはい。ほら、早くサーブしてください」
***
「ぷはーっ! 運動後のスポーツドリンク、最アンド高!」
「古いですよ。何が、『時代に合わせた、新しいファッションの提供』ですか」
「デザイナーとしては、流行のキャッチは速いに限る」
「そんな人が、最アンド高! なんて言いませんよ」
僕たちの会話を聞いていたのか、竹中さんがフフっと、笑っていた。
僕たちの会話に、面白いところなんて無いはずなのに。
「竹中。笑うところなんて、無かったでしょ?」
「いえいえ。微笑ましいですよ。やっと、親子らしい会話をしていらっしゃるので」
「これのどこが、親子らしい会話なんですか? もはや、死語になっていることを、伝えただけです。竹中さん」
「そうだよ、竹中。僕はただ、死語って何?」
「そろそろ、二セット目始めますか」
「えー? もう少し休もう。まだ時間はあるんだし」
こうして、二セット目を始めることなく、ただ時間だけが過ぎていったのだった。
「東京行きたくないよー!」
「ダメですよ、先生。ほら、行かないと間に合いません!」
「もう少し、僚といたいんだぁ!」




