第弐拾捌話 漆
お母さんの実家を後にして、檀家になっているお寺に向かう。
「お母さん、綺麗な人でしたね」
「そうでしょ。夏穂ほどの美人に、会ったことないよ」
「貴方が言うと、胡散臭いです」
「えー? そうかな?」
「そうですよ」
お寺へは、車で五分。すぐに着いた。門構えから伺える、立派なお寺。
「大きいですね」
「竜昇寺ねぇ。竜が昇るお寺だって」
「小学生とか中学生の一部が、好きそうな名前ですね」
「僚は、こういうの、好き?」
「そんな年じゃありません。ほら、行きますよ。時間ないんでしょう?」
ご住職には、竹中さんが事前に連絡をしてくれていて、僕たちが玄関で声を掛けると、ご住職の奥さんが出てきてくれた。
「連絡していました。花里です。佐久川夏穂さんの、佐久川家の、お墓にお参りさせてください」
「お待ちしていました。佐久川さんのお墓は、こちらです」
ご住職の奥さんに案内され、僕たちは佐久川家のお墓の前へ。
「こちらが、佐久川さん家のお墓になります。どうぞごゆっくり」
「ありがとうございます」
ご住職の奥さんは、僕たちだけにしてくれて、お母さんの遺骨が眠るお墓と対峙する。
「ここに、お母さんがいるのが、信じられません」
「僕もだよ。こんなにも早く、いなくなるなんて、信じられない」
「会いたかったなぁ」
お花を供えて、ろうそくと線香をあげて、墓石にお水をかけて。
手を合わせる。
「お盆になったら、僕だけでも、来て良いですか?」
「そうだね。でも、ここまで来るのに、車がない」
「この辺くらいなら、電車とバスで、なんとかなります。ご心配なく」
「立派になったね」
「それは、どうも」
「そろそろ行こうか」
お寺を後にして、次に向かうのは、コタニホテルかな。竹中さんが、連絡してくれていれば、コタニホテルで卓球をする予定。
車に戻ると、中で竹中さんが仕事をしていた。
「竹中。コタニホテルには、連絡してくれた?」
「はい。許可は取れました。小谷さん、嬉しそうでしたよ」
「何で、宏昌が嬉しそうなのよ?」
「僕たちが、卓球をしたいからでしょう」
***
コタニホテルに到着すると、女将さんや仲居さんたちよりも先に、小谷さんが満面の笑みを浮かべ、僕たちを歓迎。してくれているんだけど、何故だろう。
ある意味、少し怖い。
「幸治! 僚君と卓球したいんだってぇ!?」
「そうだよ。その満面の笑みをやめてくれないか?」
「いやー、嬉しいよ。幸治と僚君が、親子で卓球なんてさ!」
「急に無理言ってしまって、すみません。小谷さん」
「いいよ~! 二人の為だもん。誰にも邪魔されないように、特別室を用意しておいたから!」
小谷さんのご厚意により、ダンススタジオの様な大きい部屋へと、案内されたのだった。




