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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾捌話 父と子
83/95

第弐拾捌話 漆

 お母さんの実家を後にして、檀家になっているお寺に向かう。


「お母さん、綺麗な人でしたね」

「そうでしょ。夏穂ほどの美人に、会ったことないよ」

「貴方が言うと、胡散臭いです」

「えー? そうかな?」

「そうですよ」


 お寺へは、車で五分。すぐに着いた。門構えから伺える、立派なお寺。


「大きいですね」

竜昇寺(りゅうしょうじ)ねぇ。竜が昇るお寺だって」

「小学生とか中学生の一部が、好きそうな名前ですね」

(つかさ)は、こういうの、好き?」

「そんな年じゃありません。ほら、行きますよ。時間ないんでしょう?」


 ご住職には、竹中さんが事前に連絡をしてくれていて、僕たちが玄関で声を掛けると、ご住職の奥さんが出てきてくれた。


「連絡していました。花里です。佐久川(さくかわ)夏穂さんの、佐久川家の、お墓にお参りさせてください」

「お待ちしていました。佐久川さんのお墓は、こちらです」


 ご住職の奥さんに案内され、僕たちは佐久川家のお墓の前へ。


「こちらが、佐久川さん家のお墓になります。どうぞごゆっくり」

「ありがとうございます」


 ご住職の奥さんは、僕たちだけにしてくれて、お母さんの遺骨が眠るお墓と対峙する。


「ここに、お母さんがいるのが、信じられません」

「僕もだよ。こんなにも早く、いなくなるなんて、信じられない」

「会いたかったなぁ」


 お花を供えて、ろうそくと線香をあげて、墓石にお水をかけて。

 手を合わせる。


「お盆になったら、僕だけでも、来て良いですか?」

「そうだね。でも、ここまで来るのに、車がない」

「この辺くらいなら、電車とバスで、なんとかなります。ご心配なく」

「立派になったね」

「それは、どうも」

「そろそろ行こうか」


 お寺を後にして、次に向かうのは、コタニホテルかな。竹中さんが、連絡してくれていれば、コタニホテルで卓球をする予定。

 車に戻ると、中で竹中さんが仕事をしていた。


「竹中。コタニホテルには、連絡してくれた?」

「はい。許可は取れました。小谷さん、嬉しそうでしたよ」

「何で、宏昌が嬉しそうなのよ?」

「僕たちが、卓球をしたいからでしょう」


 ***


 コタニホテルに到着すると、女将さんや仲居さんたちよりも先に、小谷さんが満面の笑みを浮かべ、僕たちを歓迎。してくれているんだけど、何故だろう。

 ある意味、少し怖い。


「幸治! (つかさ)君と卓球したいんだってぇ!?」

「そうだよ。その満面の笑みをやめてくれないか?」

「いやー、嬉しいよ。幸治と(つかさ)君が、親子で卓球なんてさ!」

「急に無理言ってしまって、すみません。小谷さん」

「いいよ~! 二人の為だもん。誰にも邪魔されないように、特別室を用意しておいたから!」


 小谷さんのご厚意により、ダンススタジオの様な大きい部屋へと、案内されたのだった。

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