第弐拾漆話 結
ミサカと斑牙がまだ、シーグラスを探しているだろう、場所に戻りながら、キンキンに冷えたラムネを飲む。
『僚様~! 見てください! 綺麗なビンです!』
「良いの見つけたね。じゃあ、戻ろうか」
『はい!』
『僚殿、それだけではありませんよ。欠片も、沢山見つかりました』
「えー!? シーグラスなんて、滅多に見つかる物じゃないよ!?」
『それとですね、まさか見つかるとは、思わなかったのですが、こちらも』
斑牙の手には、数々のシーグラス。その中には、薄い緑色の小さな石が三個。
「これは?」
『僚殿は、ご存知ありませんか?』
「知らない。斑牙もミサカも知ってるの?」
『もちろんです! 妖で、知らぬ者はいませんよ』
「何だろう。戻りながら、考えさせて」
薄い緑色の石なんて、そんなのあったかな?
御影石? 花崗岩? 玄武岩とか、石英?
「ますます、分からない」
『フフフ。僚殿には、難しいですかね』
「ヒントもらえない?」
『そうですねぇ。古来より、人間と共にあった石。ですよ』
「古来より? 人間と共にあった石?」
『魔除けにも、使われたそうですよ。そうですよね? 斑牙様』
『ええ。そろそろ、分かりましたか?』
線路を渡って、再び山へ。木々が日差しを遮り、少し涼しい。
「暑さのせいにして、降参するよ」
『僚殿は、翡翠をご存知ありませんか?』
「ああ! 翡翠かぁ!」
『見つけた時は、斑牙様と驚いたのです。まさか、翡翠が見つかるなんて、思いもしませんでした』
翡翠が採れる海岸だったとは。片浜の地は、恐ろしい。
そもそも、翡翠を見たことないから、見たところで、分かるわけもなく。
「響希だったら、分かったかもね」
『響希様は、翡翠をご存知なのですか?』
「分かると思うよ。こういうの、好きみたいだしね」
『そうでしたか。次は、響希様もご一緒に、翡翠を探しましょう!』
「えっと、それは、僕も含まれてる?」
『もちろんです! 華鈴様もご一緒に!』
「誘ってみるよ」
次に来る時は、覚悟を決めて来よう。翡翠探しなんて、シーグラスを見つけるより、難易度が高い。
「そろそろ、帰ろうか。山に来た人の足音が、気になってきた」
『帰られるのですか?』
「うん。ミサカも祠に居るんだよ? 見つからないようにね」
『寂しいです』
「また来るから。それまで、待ってて」
『はい』
スマホで時間を確認。次の電車まで、あと十分。
電車が二時間に一本だから、これを逃すワケにはいかない。
駅に向かう道中、何人ものキャンパーに遭遇。
急に、変に悪寒がしてきた。吐き気があるわけでもないし、普通に歩ける。
『どうかなさいました?』
「悪寒がするんだ。体調は悪くないはずなんだけど、何だろうね」
『何か、不吉なことの前触れでしょうか』
「何事も無ければ、良いけど」




