第弐拾漆話 漆
空きビンを探すため、僕たちは、海水浴場へ。
妖がいることを悟られないように、僕が一人言ばかりを言っている、変な奴だと思われないように、海水浴客から距離をとる。
『賑やかですね。僚様、斑牙様、見てください。綺麗な欠片です』
『そうですね。こちらにも、ありますよ』
「シーグラスだ! 中々手に入る物じゃないよ」
ミサカと斑牙は、緑色のシーグラスを見つけて、おおはしゃぎ。
『綺麗ですねぇ。ミサカ殿、こちらは赤です』
『たくさん集めましょう! 斑牙様、あちらにも、あるかもしれません!』
「シーグラスを集めに来たワケじゃないよ? 空きビンを探すんでしょ?」
『そうですが、僚殿。海など、滅多に来れる場所ではございません。本日は、楽しみたいのです!』
レディー二人は、シーグラスの虜になってしまったらしく、空きビンは僕だけで、探すことになってしまった。
「もう! 僕の目の届く範囲だけにしてよ~!」
『分かりました。ミサカ殿、参りましょう!』
『はい!』
空きビンなんて、すぐに見つかるはず。なんて考えていたけれど、そう簡単には見つからない。
「シーグラスは見つかるのに、空きビンが見つからないとか、あり得ないでしょ」
照り返す日差しは、暑くて暑くて。飲み物は無いし、海の家に行って、買って来よう。
「斑牙! ミサカ! 僕、ちょっとここから離れるよ!」
波の返る音と、海水浴客の賑やかな声だけで、返事がない。
よほど夢中になっているんだろう。
「まったく。仕方ないか」
二人のことは、少し目を離してても、多分問題ない。
そんなことより、僕の方が問題だ。
「熱中症で倒れたら、夏休みが台無しになっちゃうよ」
***
海の家に近づいてみると、かき氷もあるし、ラムネもある!
海水浴客ばかりで、混雑しているけれど、飲み物だけなら、すぐに済む。
「ペットボトルのウーロン茶と、ラムネを下さい」
「はーい。二つで二六〇円です」
「じゃあ、これで……。え? 高坂先輩?」
「花里君だぁ! 何でこんな所に?」
海の家で、高坂先輩に会うことになるなんて。響希はこの事を、知っているのだろうか。
「知り合いの妖に、会いに来たんです。先輩こそ、バイトですか?」
「うん。専門学校の友達とね。短期バイト」
「最近、響希と会ってます?」
「明後日、バイト休みだから、二人で映画を観に行く予定だよ」
「ラブラブですね」
「そうかな? 響希君には、寂しい思いをさせてるからね」
「僕から見れば、微笑ましいですよ」
他愛のない会話をしていると、高坂先輩を呼ぶ声。
バイト中の、高坂先輩の邪魔は出来ない。
「だと良いなぁ。ごめんね、呼ばれてるから、行くね」
「こっちこそ、すみません。長々と。バイト頑張って下さい」
暑すぎるのは、真夏の太陽のせいにして、僕はラムネのビー玉を押し込んだ。




