第弐拾漆話 肆
「このくらいで良いかな」
『とても綺麗ですね。』
「新聞紙で包もう。このままだと、トゲが刺さちゃう」
『持ってきます』
新聞紙をとりに、二階に行ってくれた斑牙。最近、妖犬姿よりも、人間姿で過ごすことが、増えている。
家事も手伝ってくれているし、妖らしからぬ、人間と同じ食事まで。
「ただ、和服姿なのがねぇ」
斑牙は人間姿になると、洋服姿ではなく、緋色の着物姿。妖は気温を気にしないからか、年がら年中、緋色の着物なのだ。
何をするにも着物だから、汚れないか、いつも心配になる。
『お待たせしました。一昨日の新聞ですが、よろしいですか?』
「うん、良いよ。ありがとう」
『僚殿、急ぎましょう』
「えーと、まだ時間あるよ?」
『電車、混むのでしょう? 急がねば、乗れなくなりますので!』
「大丈夫だよ。ここから駅まで、十分もあれば行けるから」
電車に乗りたい気持ちは、相当らしい。ミサカの所に行く時に、呼び出したこと無かったから、その反動だろう。
「手洗って来るから、少し待ってて」
『お早くですよ!』
***
斑牙と暮らして、四年くらい。
もう、そんなに時間が経っているなんて、誰が思っただろうか。
「鍵は掛けたし、傘は、持って行こう」
『僚殿、お早く!』
「分かってるよ!」
一人暮らしだと、毎日が退屈だけど、斑牙と暮らしていると、退屈することがない。
『楽しみですねぇ』
「電車デビューだね、斑牙」
『今日は、良い日になりますよ!』
駅までの道のり、斑牙はルンルンで、初めて電車に乗る、小さな子どものよう。
「あ、僚氏」
「舜氏! 吾妻さんも!」
「おはよう、花里」
駅の表口で、舜氏と吾妻さんに、遭遇した。これから、デートだろうか。手繋いで、ラブラブですなぁ。
「二人は、デート?」
「まぁ、そんなとこ。花里は?」
「知り合いの妖に、会いに行くとこ」
「それで、花束? バラだよね?」
「うん。舜氏、どした?」
僕と遭遇してすぐに、フラフラし始めて、頭を押さえている。
「妖が、僚氏の、近くに……」
そうだった! 舜氏は、妖は見えないけど、気配とかは感じられるんだ!
しかも、頭痛とか体調を悪くしてしまう!
「ごめん! 僕の式神なんだ。人間姿になってても、妖だもんね!」
「式神……。凄いね、妖を従えられるんだ」
「すぐに、紙人形に戻すからっ」
斑牙には、一時的に紙人形に、戻ってもらわなければ。
舜氏から離れてから、また呼び出そう。
「花里は、どこまで行くの?」
「片浜まで」
「片浜って、秘境駅じゃん!」
「そうだよ。舜氏、大丈夫?」
「大丈夫。痛みは退いてきた。そろそろ電車が来るから、俺たちはこれで」
僕も切符を買って、斑牙を呼び出さなきゃ。
お待たせ。斑牙。
「斑牙、召来!」




