第弐拾漆話 弐
「斑牙、出来たよ」
『これはこれは。美味しそうなピザですね』
「そうでしょ! 僕って料理の天才だと思うんだよね」
『そうですね』
リビングに運んで、焼き上がったピザを食べながら、斑牙と今日の予定の話し合い。
「今日は、ミサカの所に行こうと思うんだ」
『それでしたら。白いバラの花が、とても綺麗に咲いたのです。少し持っていきましょうか』
「良いね、それ。ミサカも喜ぶんじゃないかな」
白いバラの花言葉。何かで聞いたことあるけど、忘れてしまった。
『僚殿! 大変です!』
「どうしたの?」
『君崎篤人が、結婚だそうです!』
点けていたテレビから聞こえる、有名俳優の結婚報道。斑牙は、医療ドラマで有名になった俳優を、推している。
『お相手は、一般人ですか!?』
「前々から、交際報道されてたし、結婚は秒読みだったね」
『祝福したい気持ちはあります。ですが、君崎篤人にはもう少し、独身であって欲しかった』
「君崎篤人の写真集、買おうか。斑牙?」
『どの世にも、叶わぬ恋は在るのですね。すみません、僚殿。何もやる気になれません』
落ち込む斑牙を、初めて見たかもしれない。人間姿から妖犬姿になり、丸まってしまった。
「ベーコン、残ってるよ?」
『それだけは、食べます』
顔を上げ、ベーコンを咥えると、再び丸くなってしまった斑牙。口をパクパクさせて、ベーコンを食べている。
どうしたものか。ミサカの所に連れて行っても、きっと斑牙は、落ち込んだままだろうし。
だからといって、紅蓮荘に置いていくなんてこと、僕には出来ない。
「斑牙もミサカの所に行く?」
『行きたいです。そして、海に向かって叫ぶのです! 叫ばなければ、このモヤモヤした気持ちは、消えません』
「じゃあ、洗い物を終えたら。お土産のバラの花、一緒に選ぼう」
『はい。分かりました』
少しは元気になったかな。さてと、ごちそうさまでした。
「食器運んでね」
『はい』
「君崎篤人が結婚したって、芸能界からいなくなる訳じゃないんだよ?」
『それは、分かっています』
これはかなり、重症な様子。そっとしておこう。
『僚殿。もうすぐ雨が降るようです』
「どうしよう。 洗濯物、一階に持っていこうか」
『それでしたら、私が洗い物をしますよ』
「じゃあ、お願い」
僕は洗い物を斑牙にお願いして、ベランダで干していた洗濯物を、一階の店舗部分に持っていく。
内階段を使うことは、こういう時にしか、使わないようにしている。
元々、この一階の店舗部分は、母が小さなお弁当屋として、使っていた場所。
未だにショーケースはそのままだし、厨房もそのまま。
湿気が籠らないように、時々、戸を開けている。
今ではハンガーラックを置いて、洗濯物を干す為に使っているこの頃。
「これでよし。雨が降る前に、バラを摘もうか」




