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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾陸話 徒然
64/95

第弐拾陸話 参

 暑さのせいもあってか、一日があっという間に終わった。


「キョウカ様のことで、皆に話がある」


 キョウカ様行方不明の一件は、解決の糸口が見えないでいる。

 俺はこれから、霞ヶ森の妖たちに真相を語らなければならない。


「キョウカ様の行方が、分かったの? 響希」

「ああ。行方とまではいかない。キョウカ様がいなくなった理由は知っている」

『本当ですか! それで、キョウカ様は今は、どちらに?』


 木の間(きのま)に集まった、キョウカ様捜索隊の妖たちは、俺の言葉を待っている。小さき友人たちは、いても立ってもいられない様子だ。


「キョウカ様は、旅に出られた。行き先は知らない。ただ、独りになりたいらしい」

『響希殿は、キョウカ様に会われたのですね?』

「会ったよ。キョウカ様は自由になりたい。独りになりたいと、旅に出られたんだ」

『我々も、キョウカ様とともに。キョウカ様のお側に、いよう!』

「やめておけ。キョウカ様は独りになりたいんだ。(あるじ)の願いを聞いてやって欲しい」


 小さき友人たちは、困惑している。それはそうだろうな。いきなり、旅に出たなど、信じられないだろう。


「響希君は、キョウカ様から依頼を受けたの? 旅に出ることを、知ってたってことは」

「キョウカ様が家に来て、しばらく匿ってた。蛍を見た後すぐに、旅に出た」

『キョウカ様が居られぬ今、我々はどうしたら……』

「今まで通りに過ごして欲しい。キョウカ様も、そう言うだろう」


 ***


 キョウカ様の一件が、嵐が過ぎ去ったように、呆気なく終わった。誰にも言えなかった事を、全て吐き出せたお陰で、スッキリしたのと、脱力感が凄い。


「ハァー。終わった」

「響希君、何か飲む? ジュース買ってあるよ」

「台所の床下収納のお陰で、冷蔵庫要らずだよね。ここは。僕のオレンジジュース、まだあるよね?」

「刺激強めのヤツ。何か炭酸強めのヤツある?」

「コーラならあるけど。それでも良い?」

「じゃあ、それで」

「持ってくるね」


 華鈴が台所までとりに行ってくれている間、(つかさ)と二人きり。


「肘の故障だけじゃなかったでしょ」

「何が?」

「まっしーとれんれんに、伝えたこと。腰はもう大丈夫なの?」

「日常生活には影響はない。時々痛むけど」

「体育の後は、よく腰擦ってるよね」

「サポーターしてても、痛いものは痛い」


 (つかさ)にはバレていた。俺の場合、肘と腰を痛めている。体育をするにあたって、多少の障害となっていることを。


「でもまぁ。これであの二人から、卓球の勧誘が無くなるだけでも、ありがたい」

「そうだね。僕たちじゃ、あの二人の相手なんてできないし」

「そういう(つかさ)だって、色覚異常は続いてたのかよ」

「心因性だからね。時々起きるよ」

「俺たち、ヤバイな。色んな意味で」

「そうかもね。この事は、りんちゃんや吾妻さんには、内緒ね」

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